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ブライトリング / トランスオーシャン(1/1) 2012年07月号(No.41)

BREITLING TRANSOCEAN

名高いブランドである。だが今回、巨大なトランスオーシャンによって1950年代のエレガントな3針時計を復活させ、このブランドにも別の能力があることを証明してみせた。

イェンス・コッホ:文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・良好な視認性
・素晴らしいデザイン
・高い精度

point
・高額
・搭載ムーブメントが自社製ではない

不朽の名作

ライトリングが初代トランスオーシャンを発表した1958年は、ボーイング707が就航を開始した年でもある。ボーイング707は、世界初の長距離用ジェット旅客機として航空産業に革命をもたらし、大陸間の飛行時間の短縮を実現した。ボーイング707の誕生により、航空産業の新時代が再び幕を開けたのである。ブライトリングは、当時すでに、パイロットクロノグラフやナビタイマーで成功を収めており、3針時計のトランスオーシャンについては、“プロのパイロットも信頼する一般向け時計"として売り出していた。

2011年の復刻モデルは、針のフォルムを除き、初代トランスオーシャンに驚くほどよく似ている。さらに、ブライトリングの伝統的なロゴや、当時よく見られたスティールメッシュのミラネーゼブレスレットまで再現されている。ただし、ケースサイズは時流に合わせて直径43mmに拡大された。ドレスウォッチとしては群を抜く大きさで、IWCのポルトギーゼ オートマティックをしのぐサイズだが、フラットな構造によって、品の良さがより一層、引き立てられている。
1950年代の様式を踏襲したことがひと目で分かる意匠だが、クリアでシンプルなデザインは流行に左右されない力を持っている。文字盤で唯一の装飾的要素は、文字盤を4分割する細い十字線である。このデザインは、当時のレーダー画面に由来したもので、機能的な実用計器を想起させることから、時計の性格にもよくマッチしている。残念なのは、日付表示窓が文字盤の縁近くではなく、中央寄りに配されていることである。時計を知り尽くした愛好家には言うまでもないことだが、これは大型時計用に設計されていないムーブメントに起因している。

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ブライトリングが自社で手を加えたETA2892A2はねじ込み式裏蓋の内側に隠れている。信頼性の高い基幹キャリバーは、自動車で言えばフォルクスワーゲンのゴルフに相当する。

最高クラスのクロノメーターである

この時計をさらに観察すると、ディテールのひとつひとつに対するこだわりが伝わってくる。アワーマーカーの外周には蓄光塗料を塗布したドットが付いており (十字線の先端は例外)、発光ドットはさらに、シルバーカラーのプリントで縁取られている。蓄光塗料が塗布された針もきわめて精巧な作りである。ファセッ トが施された針の外側はポリッシュがかけられており、ヘアライン仕上げの中央部には全体の半分程度まで蓄光塗料が塗布されている。針と同じファセットは、 アワーマーカーにも観察することができるが、ここでは全体的にポリッシュがかけられている。両面に無反射コーティングを施したサファイアクリスタルは、そ のフォルムから、かつてのプレキシガラスを想起させる。風防の側面が上方へ盛り上がっており、文字盤の上になる部分にはわずかにふくらみを持たせてある。

スティール製の針とインデックスは、黒文字盤とのコントラストが明確で、日中は抜群の視認性を発揮する。暗所では時針と分針、そして、文字盤の縁にある蓄光塗料を塗布したドットがわずかながらも発光する。
オリジナルモデルでもそうだったが、ミラネーゼブレスレットはこの時計との相性が良い。スティールワイヤーをメッシュ状に編み込んだミラネーゼブレスレットはとてもしなやかなのだが、長さを短くしたい時にやっかいなのが難点である。ブライトリングの場合は、通常のブレスレットのコマのようにネジを外せる短いエレメントによって、長さを簡単に調節できるように配慮されている。ただ、その結果、バックル付近に小さな隙間が生まれ、ミラネーゼブレスレットの美しい編み込みが途切れてしまうのが残念だが、よく見なければ気が付かない程度のわずかなものだ。それよりも気になるのは、薄いプレートで出来たセーフティーロック付きのバックルがスムーズな動きに欠けることである。ヒンジ部分が無垢材から削り出し加工されているのに対し、バックル部分は部分的にエッジの鋭いプレートで出来ており、フラットなフォルムに貢献しているものの、この価格帯のモデルには本来ふさわしいものではないだろう。とは言え、このバックルは、ブライトリング特有のモダンなデザインによって説得力があり、全体的にポリッシュが施されていることから、同じく全面ポリッシュ仕上げのケースとよく調和している。

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1958年発表のトランスオーシャンからインスピレーションを得て、昨年、発表されたマーキュリー・シルバー文字盤の復刻モデル。文字盤を4分割する十字線やミラネーゼブレスレットなど、オリジナルモデルの特徴を受け継ぎつつも、スペックはC.O.S.C.認定クロノメーター仕様に高められている。

時計界の“バウエルンフリューシュトゥック"

フラットなバックルと、手首によくなじむミラネーゼブレスレットは、快適な装着性にも寄与しており、大きなサイズにもかかわらずトランスオーシャンの着用 感はきわめて良好である。この点においては、下方へ長く伸びたラグの貢献度も大きい。時計を横から観察すると、ブレスレットが裏蓋よりも低い位置で固定さ れているのが分かる。
操作性についても、同じように長所ばかりを挙げることができる。大きなリュウズはねじ込み式ではなく、簡単に引き出して回すことができる。ストップセコン ド機能が搭載されており、ムーブメントと秒針が止まるので、時報と同期させるのも容易である。また、一段引き出したポジションでは、日付を早送りすること ができる。

内部で時を刻むのは、よく知られた機構だ。ブライトリング10と呼ばれるキャリバーは、ETA2892A2と同じものだが、仕様は最高クラスのクロノメー ターである。このムーブメントはサイズが小さいことから、幅の広いホルダーリングに周りを囲まれている。ホルダーリングは、ムーブメントの部品やケース バックの内側と同様に、ペルラージュ模様で装飾されている。ポリッシュ仕上げのネジや香箱のサンバースト模様、また、ローターに施されたコート・ド・ジュ ネーブやゴールドカラーのエングレービングは、見応え十分である。これまでに何百万と製造されてきたこのムーブメントは、信頼性が高く、時計界の“バウエ ルンフリューシュトゥック"と言えるのではないだろうか(訳注:“農夫の朝食"という意味で、ドイツの家庭料理。オムレツ風ジャガイモ料理を指す)。

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しなやかなミラネーゼブレスレットは簡単に短くできる。フォールディングバックルは美しいが、薄いプレートで出来ている。

高い精度と品質を備えた美しい時計

ブライトリング10は、精度が良好なのも魅力的である。歩度測定機によるテストでは、最大姿勢差が6秒/日と小さく、好感の持てる結果を見せてくれた。それ以上に、計算上の平均日差もわずかプラス3・2秒/日と素晴らしく、振り角も力強かった。
内部機構に文字通り“簡単で栄養のある家庭料理"のような身近で安心感のあるムーブメントを採用している時計にしては、52万5000円というのはかなり驚きの価格設定である。この金額を支払えば、ロレックスやオメガでは自社製のクロノメーター仕様ムーブメントを搭載し、スティール製ブレスレットを備えた3針時計が手に入る。今回のテストウォッチは加工品質も良好で、ドーム型サファイアクリスタル風防のようなディテールにもかなりのコストがかけられているのは想像に難くないものの、コストパフォーマンスにおいては他のブランドのほうが一枚上手である。

トランスオーシャンは、特にそのミラネーゼブレスレットによって個性的な時計に仕上がっており、身に着ける側にも相応の個性が求められる時計だ。強気の価格設定がこの時計の購入をためらう要因にならなければ、高い精度と品質を備えた美しい時計を手にすることができるだろう。

技術仕様
ブライトリング/トランスオーシャン

製造者: ブライトリング
Ref.: A036B91OCA(ブラックダイアル)
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付表示
ムーブメント: ブライトリング10(=ETA2892A2)、自動巻き、2万8800振動/時、21石、耐震軸受け(インカブロック使用)、グリュシデュール製テンワ、緩急針と調整用偏心ネジによる緩急調整、パワーリザーブ約42時間、直径25.6mm、厚さ3.6mm
ケース: SS製、ドーム型サファイアクリスタル風防(両面無反射コーティング)、SS製ねじ込み式裏蓋、100m防水
ストラップとバックル: SS製ミラネーゼブレスレットおよびSS製セーフティーフォールディングバックル
サイズ: 直径43.00mm、厚さ11.35mm、総重量約160g
バリエーション:
価格: 52万5000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時    
文字盤上 +6
文字盤下 +5
3時上 +2
3時下 +3
3時左 0
3時右 +3
最大姿勢差: 6
平均日差: +3.2
平均振り角:
水平姿勢 302°
垂直姿勢 280°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 7pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 13pt.
視認性(5pt.) 5pt.
装着性(10pt.) 5pt.
ムーブメント(20pt.) 13pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 9pt.
合計 77pt.

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