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ブライトリング/クロノマット GMT(1/1) 2012年01月号(No.38)

BREITLING CHRONOMAT GMT

特大サイズのクロノマット GMTに、ブライトリングは自社開発キャリバーの2号機を初めて搭載する。回転ベゼル、クロノグラフ、第2タイムゾーンを備えたクロノマット GMTは、パイロットウォッチに課せられたあらゆる要求に応えるモデルである。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・考え抜かれた自社開発キャリバー
・パイロットウォッチにあるべき機能をすべて搭載
・素晴らしいバックル

point
・巨大なサイズ
・トランスパレントバックではない

離陸準備完了

ロノマット GMTは一見、ポルシェのカイエンのような巨大なホイールリムを備えたSUVを想起させる。全体的にポリッシュ仕上げが施された、直径47mmのクロノマット GMTのケースは、感嘆の念と同時に、アンバランスなものに対してドイツ人が持つある種の不快感をも呼び起こす。腕時計としては、ここまで巨大である必要がないのは明らかである。だが、クロノマット GMTを気に入るユーザーがいたとて、不思議ではない。しかも、この時計はSUVとは異なり、人類が全員で分かち合わなければならない有限資源をまったく必要としないのだから。
クロノマットは、自分がプレミアムセグメントに属することをただちに意識させてくれる時計である。入念にポリッシュされ、12個のネジが取り付けられた回転ベゼル、クリーンな加工のディテール豊かな文字盤、そして、隙間寸法を最小限に抑え、立体感のあるブライトリングのロゴを配したフォールディングバックルは、卓越したクォリティと加工精度の高さを物語っている。ポリッシュ仕上げによって生まれるケースやベゼル、バックル、インデックス、針の気品は、数多くのスポーティーな表示要素やねじ込み式プッシュボタン、オーシャンレーサーと呼ばれる穴付きのラバーストラップ、また、サイズとの調和が抜群である。手首のためのSUV、つまり、大都会というジャングルでの厳しい日常を生き抜くための畏敬の念さえ抱かせる巨人は、かくして生まれたのである。

スポーティーなエンジン

クロノマット GMTのエンジンは、カリスマとしてのポテンシャルを十分に備えている。ブライトリングが初の自社開発ムーブメント、クロノグラフキャリバー01を発表したのは、2年前のことだ。スイス・グレンヘンの開発チームは労を厭うことなく、既存のキャリバー13に取って代わる新型のクロノグラフムーブメントを完成させた。クロノグラフムーブメントは、すべての部品が正確に噛み合わなければ機能しないことから、開発が困難なことで知られている。
クロノマットでデビューしたブライトリングのキャリバー01はこれまでの間に、いくつかの限定モデルのほか、古典的名作であるナビタイマーにも搭載され、トランスパレントバックを備えたトランスオーシャンの標準モデルでも登場している。GMTという複雑な機能を組み込み、自社開発キャリバー2号機として登場したキャリバー04が最初に時を刻むのは、やはりクロノマットである。

クロノマット GMTは、時代に合わせたデザインと機能を結びつけるという、ブライトリングの美徳をしっかりと体現している。目を引くのはやはり、ディテールにこだわり抜いたデザインだろう。文字盤中央に浮かび上がる正方形は、それぞれの辺が3つのサブダイアルの中心線と重なるように形成されている。アプライドインデックスも、正方形の辺に合わせてデザインされている。インデックスは、単に正方形の辺の部分で切れているのではなく、まるで中央の正方形を縁取っているかのように強調されている。サブダイアルの針も軸の部分が正方形をかたどっており、ベゼルのタブも正方形だ。サブダイアルとベゼルに配された数字のタイポグラフィーも、ゼロを四角形にデザインすることで統一感を持たせてある。タキメータースケール、サブダイアル、ベゼルのタイポグラフィーを踏襲した24時間目盛りには、それぞれ異なる字体が使用され、ひとつの時計に3種類の字体が盛り込まれている。ベゼルの数字には慣れが必要だが、控えめさとは対極にあるクロノグラフにはぴったりのデザインと言えるだろう。

残念ながら、テストウォッチの文字盤は、視認性にやや欠ける感があった。シルバーの針とシエラシルバーの文字盤とのコントラストが弱すぎるのである。スリムなクロノグラフ秒針も、読み取るのがかなり難しい。先端に大きな赤いポイントを備えたGMT針と日付は、他の表示要素よりも明確に読み取ることができた。文字盤には6種類のバリエーションが用意されており、シエラシルバー以外のダークカラーの文字盤の方が、全体的な視認性に優れている。
だが、その一方で、テストウォッチのシエラシルバー文字盤は、明るい場所よりも暗所において格段に良好な視認性を発揮した。時針と分針も、アワーマーカー(12時はふたつの正方形)や回転ベゼルのゼロポイントと同様に明るく発光する。また、クロノグラフ秒針にもわずかながら夜光塗料が塗布されている。

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キャリバー04は、ブライトリングの初代自社開発キャリバー01に第2タイムゾーンが加わったマニュファクチュールムーブメントである。
Background Photograph: Fotolia/Sergiy Serdyuk

ダイバーズウォッチの要素を
併せ持ったGMTウォッチ

クロノグラフを作動させるにはまず、プッシュボタンを緩めなければならない。これは、やや面倒な作業である。だが、この方式を採用することで、ブライトリングは、500mという極めて高い防水性を保証することができた。キャリバー04はコラムホイールを搭載し、構造上はクロノグラフの始動時にあまり力を必要としないはずなのだが、ETA7750でよく知られるカム式のクロノグラフに比べ、スタートボタンの押し心地は極端に軽いというほどではない。だが、ストップとリセットの操作はスタートボタンよりもスムーズである。
リュウズも、操作の前に緩めなければならないが、刻み目の付いた扱いやすいリュウズがこの動作を楽にしてくれる。ムーブメントの巻き上げは、緩めただけの、通常のポジションで行う。リュウズを1段、引き出すと、時針を1時間刻みで合わせることができる。このポジションでは、日付も時針に連動して前後に修正することが可能だ。日付早送り機能のように即座にというわけにはいかないが、それでも十分、手際よく日付を修正することができる。しかも、旅先で新しいタイムゾーンに切り換えるのは極めて簡単である。リュウズの2段目のポジションでは、GMT針を合わせることができる。第2タイムゾーンは、パイロットにとって非常に有益な機能である。しかも、ストップセコンド機能の恩恵により正確な同期が可能なので、まずは航空指示に関するすべての表示が行われるUTC(協定世界時)にGMT針を合わせておき、その後で1段目のポジションに戻して時針を現地時刻に合わせればよい。

回転ベゼルもコックピット内での作業を軽減してくれる。離陸時にベゼルのゼロポイントを分針に合わせておけば、後で正確な離陸時刻を記録することができるからだ。さらに、有視界飛行方式によるフライト時は、すでに何分、飛行しているか、また、事前におおよその通過時刻を算出しておいた特定のランドマークに到達するまでにかかる時間を簡単に知ることができる。ダイバーズウォッチと同じように、クロノマット GMTのベゼルも一方向にしか回せないように設計されている。逆回転防止ベゼルは、パイロットウォッチとしては特にメリットではないが、高い防水性を備えていることから、クロノマット GMTはダイビングにも利用することができる。ベゼルには240もの細かい噛み合いがあり、回転時にはやや耳障りな音がするが、回し心地は軽く、遊びなく確実に設定することができる。
ベゼルと並んで好印象なのは、バックルに内蔵された細かく調節できるエクステンションである。これも、ダイバーズウォッチ以外ではほとんどお目にかかることができないディテールだ。エクステンションは、それほど長く延ばせるわけではないが、ストラップを手首のサイズにぴったりと合わせることができる。短く調整する場合は、時計を外す必要はない。ストラップの端部をバックルに押し込むと、ストラップとバックルが少しずつ噛み合うのが感じられる。延長するにはバックルを開き、内
側にあるストラップの固定部を下方に押せば、ストラップを再び引き出すことができる。

2個のセーフティーボタンを備えたフォールディングバックルは極めて美麗である。また、操作も簡単で、卓越した加工品質を備えている。穴付きのラバーストラップは
この時計との相性が良く、パイロットウォッチとしてよりも、どちらかと言えばスポーツウォッチのような印象を与えている。しなやかなストラップと、細かく調節できるエクステンションにより、威厳たっぷりのサイズと200gというかなりの重量にもかかわらず、クロノマット GMTの装着性は驚くほど良好である。だが、47mmという、今日の傾向から見てもかなり巨大なケースは、ぐらついたり滑ったりしないように、手首のサイズにきちんと合わせて着用する必要がある。

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堂々たる外観。入念にポリッシュ仕上げを施したボリュームたっぷりのケースと、ディテールにこだわり抜いた回転ベゼル。
Background Photograph: Fotolia/imageteam

見応えのあるムーブメント

ブライトリングのロゴが配された、エングレービングの美しいケースバックも、高級感あふれる意匠に貢献している。だが、自社開発クロノグラフムーブメントを観賞できるトランスパレントバックであったならば、メカ好きの愛好家により大きな喜びを与えていたことだろう。装飾は過度に手が込んでいるわけではないが、それでも、ローターブリッジのコート・ド・ジュネーブや、ポリッシュ仕上げのレバーやネジ、また、ローターに施されたサンブラッシュ仕上げなどを見ることができただろう。
ボールベアリング式のローターは両方向巻き上げ式で、3日間に迫る快適なパワーリザーブを生み出す。スタート/ストップ/リセット機能を制御するのは、エレガントなコラムホイールである。最新式の垂直クラッチは、針飛びのないクロノグラフ秒針のスムーズな始動を約束する。ブライトリングは、特許技術であるリセットハンマーの自動位置決め装置を採用することで、リセット機構の組み立て時の調整を不要にし、かつ、その動作を改善した。日付は、瞬時に切り換わるように設計されている。また、回転数の高いガンギ車は、保油装置を備えた仕様になっている。ブライトリングはさらに、ヒゲゼンマイを社内でテンワに固定しているが、これを行うには、ヒゲゼンマイとテンワの適切なペアを算出することが必須の前提となる。より高い精度は、こうして実現される。クロノメーター規格を満たすことをすべての個体に課しているブライトリングにとって、より高い精度を求める姿勢は極めて重要なのである。

今回のテストウォッチは、精度への期待にもしっかりと応えてくれた。ウィッチ製歩度測定機、クロノスコープX1で測定した最大姿勢差は5秒で、全姿勢の平均値である平均日差もプラス3・2秒/日と、クロノメーター規格の範囲内であった。クロノグラフ作動時は平均値がやや劣り、テンプにも大幅な振り落ちが観察されたが、それでも精度は全体的に優秀である。
テストウォッチと同仕様のクロノマット GMTの価格は81万2700円である。GMT機能を備えないクロノマット 44は、同じタイプのストラップモデルで73万9200円だ。つま
り、GMT機能と3mm大きいケースの分、7万3500円の差額が生じていることになる。それでもなお、コストパフォーマンスは良好と言えるだろう。クロノマット GMTと同等のスペックで、自社開発ムーブメントを搭載したクロノグラフであれば、多くのメーカーがもっと高額に設定している。そのうえ、ブライトリングが強いブランドイメージを備えていることから、クロノマット GMTが時代の好みにかなっている限り、安定した価値が約束されているのである。

クロノマット GMTの最大のデメリットは、やはり巨大なサイズだろう。購入を検討しているユーザーにとっては、このサイズが威嚇的に映るかもしれない。だが一方で、まさにこのサイズに引かれるがゆえに、この時計の購入を決断するユーザーも少なくないのではないだろうか。いずれにせよ、高い加工品質に有益な機能、ねじ込み式プッシュボタンや高い防水性を備えた堅牢な設計に加え、安定した精度、さらに、エクステンションを備えた美しいバックル、そして、デザインが、この時計の実力を物語る何よりの証拠と言える。つまり、離陸の準備はいつでもできているのだ。

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美しさ、堅牢性、実用性を兼ね備えるポリッシュ仕上げが施されたセーフティーフォールディングバックルは、細かい調節が可能なエクステンションを内蔵する。
Background Photograph: Fotolia/cphoto

技術仕様
ブライトリング/クロノマットGMT

製造者: ブライトリング
モデル: Ref.AB0410
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付、60秒・30分・12時間積算計を備えたクロノグラフ、第2タイムゾーン、逆回転防止ベゼル
ムーブメント: キャリバー04、自動巻き、2万8800振動/時、47石、耐震軸受け(キフ使用)、グリュシデュール製テンワ、緩急針と調整用偏心錘による緩急調整、パワーリザーブ約70時間、直径30mm、厚さ8.3mm
ケース: SS製、両面無反射コーティングのサファイアクリスタル風防、SS製ねじ込み式裏蓋、ねじ込み式プッシュボタン、ねじ込み式リュウズ、500m防水
ストラップとバックル: ラバーストラップ、2個のプッシュボタンを備えたSS製セーフティーフォールディングバックル
サイズ: 直径47mm、厚さ18.7mm、総重量200g
バリエーション: SS製ブレスレット(90万3000円)、カーフレザーストラップ(折りたたみ式バックル、80万8500円)、カーフレザーストラップ(穴留め式バックル、78万7500円)
価格: 81万2700円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時   / クロノグラフ作動時
文字盤上 +3 +5
文字盤下 +5 +6
3時上 +3 +7
3時下 +3 0
3時左 +5 -2
3時右 0 +11
最大姿勢差: 5 13
平均日差: +3.2 +4.5
平均振り角:
水平姿勢 272° 243°
垂直姿勢 248° 217°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 13pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 86pt.

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