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ロレックス/サブマリーナー デイト(1/1) 2011年11月号(No.37)

ROLEX SUBMARINER DATE

良いものとは、時代を超えて残ってゆくものである。ロレックスのサブマリーナーは、1953年の発表以来、常にディテールの改善が行われてきた。だが、ブランドのアイコンに成長した現在も、サブマリーナーは、同コレクションのデザインを忠実に堅持している。

イェンス・コッホ:文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・素晴らしいデザイン
・卓越した加工品質
・秀逸な自社製ムーブメント

point
・サイクロップレンズに難がある
・精度の微調整が最適ではない

成熟したダイバーズウォッチの模範

レックスが1953年に発表したサブマリーナーは、回転ベゼルと100mの防水性を備えた世界初のダイバーズウォッチであった。デザインの上でも大成功を収めたこのモデルは、リュウズガードが付いて拡大されたケース(1959年)やデイト付きモデルの導入(1965年)を除けば、これまで、アプライドインデックスや、ケースとブレスレットの側面に施されたポリッシュ仕上げ、そして、ラグ穴の廃止など、わずかにマイナーチェンジされたに過ぎない。サブマリーナー デイトのステンレススティールモデルにおいて、2010年からセラクロムベゼルが採用されるようになったのが、最後に行われたマイナーチェンジである。

50年以上も前に考案されたデザインであるにもかかわらず、サブマリーナーは、見事な外観であるばかりか、時流に合った印象を与えている。ブライトリングのナビタイマーやオメガのスピードマスター プロフェッショナルなどの古典的名作とは異なり、サブマリーナーは年月の経過をまったく感じさせない。これは特に、光を反射する滑らかなセラミックス製のセラクロムベゼルや、光沢のある黒文字盤、無反射コーティングが施されていないフラットなサファイアクリスタル風防の恩恵によるものである。これらの要素は、スーツと同じようにスイムウェアにも合わせられるような気品をサブマリーナーに与えている。

無反射コーティングが施されていないフラットな風防は、特徴のひとつではあるものの、残念ながら、視認性にはややマイナスに働いてしまっている。それでもなお、視認性は非常に良好な部類に入るが、サイクロップレンズがあるために日付は正面以外からは読み取りにくい。時計を少しでも傾けると日付は見えにくくなり、文字盤の別の部分が拡大されてしまう。一方で、サイクロップレンズは拡大率が極めて高いことから、視力の弱いユーザーにとっては大きなメリットである。

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洗練されたムーブメント。堅牢なロレックス自社製キャリバー3135は、自社製ヒゲゼンマイ「パラクロム・ヘアスプリング」を搭載することでさらに強化されている。

職業ダイバーのための時計という役割

だが、サブマリーナー自体も、プロフェッショナル仕様の時計であり続けることを必ずしも望んでいるわけではない。職業ダイバーのための時計という役割は、1967年以降、サブマリーナーから派生したシードゥエラー、そして、現在はロレックス ディープシーが引き継いでいる。ヘリウムエスケープバルブとより高い防水性を備えたシードゥエラーとその後継機であるロレックス ディープシーでは、ロレックスのトレードマークであるサイクロップレンズが装備されていない。

その代わり、ケースの厚さ12.5mmのサブマリーナーは、3900mの防水性を備えたロレックス ディープシーより5mm以上も薄い。その恩恵により、サブマリーナーはフラットで、エレガントな印象に仕上がっている。それでもなお、サブマリーナーは300mの防水性を備えているので、ダイビングにも十分、使用することができる。ロレックス独自のトリプロックリュウズも、ダイバーにとっては実用的な機能である。合計5個のパッキンが装備されたトリプロックリュウズは、湿気を確実にシャットアウトできる。海水に強い904Lスティールがケースとブレスレットに使用されているのも、ダイバーとしては心強い。また、逆回転防止ベゼルはダイビングに適しているだけではない。時間を分単位で把握することができるので、ベゼルのスケールにある三角マーカーを分針に合わせておくだけで、パスタをすでに何分ゆでたか、あるいは、どのくらい駐車しているかを簡単に読み取ることができる。30秒ごとに噛み合うベゼルは回すのが快適である。噛み合うと、まるで金庫のダイアル錠を合わせているかのような心地よい音を立てるので、理由がなくても回したくなるほどである。

ベゼルの黒いスケールリングには2010年以降、セラクロムと呼ばれるセラミックスが採用されるようになった。この素材は、表面の硬度が極めて高いことから、傷が付く心配がほとんどない。すぐに見劣りしてしまっていた先代のアルミニウム製ベゼルに比べると、大きな進歩である。セラクロムベゼルの数字とインデックスは、硬化する前のセラミックスに原子化したプラチナを蒸着させ、研ぎ上げたもので、ふくらみを持たせた高級感あふれるゴールド針やゴールド製アプライドインデックスとよく似合う。興味深いことに、サファイアクリスタルはそれほど隆起しておらず、旧モデルよりも風防の縁を衝撃などから防護しやすい。

ロレックス ディープシー同様、新型サブマリーナーにも夜光塗料「クロマライト」が採用されている。クロマライトは青く発光し、発光力がスーパールミノヴァよりも格段に強い。青は上品で高級感があり、サブマリーナーが暗所でも良好な視認性を発揮するのに貢献している。12時位置のトライアングルインデックスと6時位置と9時位置のバーインデックスは、時計の向きを確認するのに役立つ。ベゼルのゼロ位置に配されたドットは明るく発光し、暗所での動作確認のため、秒針にも夜光塗料を塗布したドットが付けられている。

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ダイビングスーツの上からも着用できるように、オイスターブレスレットのバックルに内蔵されたグライドロッククラスプは、2mmごとに長さを調節でき、最大20mmまで延長することができる。

加工品質の高さに感心させられる

装着性も秀逸である。これには、フラットなケースと150gに満たない程よい重量に加え、接触面が滑らかなケースバックとフォールディングバックル、そして、しなやかなステンレススティール製ブレスレットが寄与している。新型のグライドロッククラスプは、従来のバックルよりも堅牢で、ブレスレットを小刻みに長さ調節できるのが特徴である。スポーツの後や気温の高い日には、少し余裕を持たせるために素早く延長することができるので、以前よく見られたように、ステンレススティール製ブレスレットを緩ませた状態で着用する必要がなくなった。バックルは、セーフティーロックと、その下にある指の爪で簡単に持ち上げられるレバーによって、不用意に開かないように設計されている。それでも、操作の簡単なリュウズやベゼルと同じように、バックルも扱いやすい。また、時計全体に共通することだが、加工品質の高さにも感心させられる。ブレスレットとバックルの側面にはポリッシュ仕上げが、上面にはサテン仕上げが施されている。

欲を言えば、トランスパレントバックであれば、なお望ましかっただろう。1989年以来、サブマリーナー デイトの内部で時を刻んできた自社製キャリバー3135は、どちらかと言えば実用機として設計されたものの、一部スケルトナイズされたローターとローターブリッジ上面のサンブラッシュ模様、ブリッジのペルラージュ模様、ヘアライン仕上げのスティールパーツ、面取りされ、研磨されたエッジ、そして、ポリッシュ仕上げのネジ頭など、見どころが満載だからである。赤いアルマイト処理を施した、摩擦を抑える効果のあるアルミニウム製のリバーサー(切り替え車)と、2008年からサブマリーナー デイトにも搭載されるようになったブルーのパラクロム・ヘアスプリングにより、色合いも豊かになった。

ニオブとジルコニウムの合金に酸化被膜処理を施した新素材のヒゲゼンマイは、磁場の影響をまったく受けないばかりか、耐衝撃性も従来のヒゲゼンマイに比べて格段に高くなっている。いずれにしても、パラクロム・ヘアスプリングが搭載される前から、キャリバー3135は最も優秀な自動巻きムーブメントのひとつに数えられてきた。こうした高い評価の理由は、耐久性を重視して設計された堅固な構造によるもので、その恩恵により微調整も非常に高い精度で行うことができる。テンプは、片側で支えるこれまでのバランスブリッジに代わり、頑丈な両持ちのバランスブリッジで両側からしっかりと固定されており、軸方向への遊びは2本のネジによって調整することが可能だ。さらに、ブレゲ式エンドカーブや、テンワの内側にマイクロステラナットを取り付けたフリースプラング方式の緩急調整により、テンプの規則正しい振動が約束されている。

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グライドロッククラスプを内蔵したバックルは確実に留まり、操作しやすい。また、ブレスレットの長さを小刻みに調節することができる。

高いブランドイメージと伝統を重んじるモデル戦略

これらの要素は、ロレックスの時計でよく知られた高い精度にも寄与している。だが、着用テストですでにマイナス3秒/日が観察されたことで、歩度測定機によるテスト結果に対しては一抹の不安がよぎっていた。果たして、ウィッチ製電子歩度測定機、クロノスコープX1では、最高とは言い難い6秒という最大姿勢差が観察された。平均日差はマイナス1・8秒/日で、水平姿勢(文字盤上および文字盤下)と垂直姿勢の間の振り落ちもかなり顕著であった。とは言え、全体として見れば、精度はまだ良好な部類に入る。

時が経つにつれ、サブマリーナー デイトは高価格帯に属するモデルになった。だが、これまで数多くの改良が加えられ、最近では、傷に強いセラクロムベゼルと自社製ヒゲゼンマイも採用された。特に、針、ベゼルの噛み合い、また、入念なポリッシュ仕上げが施されたネジに至るまで、すべてのディテールにおける極めて高い品質を考慮すれば、正当な価格と言えるだろう。また、ロレックスの持つ高いブランドイメージと伝統を重んじるモデル戦略により、将来も揺るぎない価値が見込まれる。納期が長いことが懸念されるが、サブマリーナー デイトの場合はそれほど深刻ではないようである。
サブマリーナー デイトを選べば、上質で美しいデイリーウォッチを入手できることは確かである。あらゆるシーンで着用でき、大きな弱点も特に見当たらない。しかし、サイクロップレンズについては賛否が分かれるだろう。また、精度の点でも、もう少し改善が望まれる。だが、抜群の装着性や良好な視認性と同様に、加工品質の高さには感服させられる。すなわち、サブマリーナー デイトには、ダイバーズウォッチとしての模範的な役割を担う資格が十分にあると言えるのだ。

技術仕様
ロレックス/オイスター パーペチュアル サブマリーナー デイト

製造者: ロレックス
モデル: Ref.116610LN
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付
ムーブメント: 自社製キャリバー3135、自動巻き、2万8800振動/時、31石、耐震軸受け(キフ使用)、ブルーのパラクロム・ヘアスプリング、マイクロステラナット付きグリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約48時間、直径28.5mm、厚さ5.37mm
ケース: S(904Lスティール)製、ねじ込み式裏蓋、サファイアクリスタル風防、リュウズガード、ねじ込み式トリプロックリュウズ、300m防水
ストラップとバックル: SS製グライドロッククラスプ(小刻みに調節可能なエクステンション)付きオイスターブレスレット
サイズ: 直径40mm、厚さ12.5mm、総重量148g
バリエーション:
価格: 73万5000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

文字盤上 0
文字盤下 +1
3時上 -5
3時下 -1
3時左 -4
3時右 -2
最大姿勢差: +6
平均日差: -1.8
平均振り角:
水平姿勢 295°
垂直姿勢 257°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 15pt.
視認性(5pt.) 5pt.
装着性(10pt.) 10pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 7pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 14pt.
合計 92pt.
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