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ゼニス/キャプテン グランデイト ムーンフェイズ(1/1) 2011年07月号(No.35)

ZENITH CAPTAIN GRANDE DATE MOONPHASE

1905年に初めて懐中時計用にムーンフェイズ搭載ムーブメントを製作したゼニス。その歴史を遺産として、「キャプテン」から古典的な意匠を持つムーンフェイズをリリースした。キャプテン グランデイト ムーンフェイズなどのモデルによって、ゼニスの星が再びドレスウォッチの高みに輝く。

アレクサンダー・クルプ:文 Text by Alexander Krupp
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・文字盤からストラップまで、すべてがエレガント
・快適な装着感
・使い勝手の良い日付修正機能

point
・完璧さに欠ける視認性
・バックルが簡素

「天頂」の輝きをふたたび

ニュファクチュールキャリバーを搭載したドレスウォッチで、しかも1年分の収入を使い果たさなくても手に入る時計を探している時計愛好家は、ゼニスにとって大切な顧客である。最新作のキャプテン グランデイト ムーンフェイズなら、ステンレススティールモデルが55万6500円で手に入る。ローズゴールドモデルが欲しければ、ステンレススティールモデルにプラスすること68万2500円で入手できる。

では、時計愛好家は支払った金額に対して何を得られるのか、検証してみよう。まず、調和の取れたデザインの、どこから見てもエレガントなタイムピースを手に入れることができる。パーティーシーンからデイリーユースまで、どのような場面にもふさわしい時計である。デイリーユースと言っても、もちろんオフィスでの使用が前提だ。工事現場や工場といった場所では、アリゲーターストラップを備えたムーンフェイズウォッチはまったく場違いだからである。

このニューカマーは、素晴らしいデザインであると同時に、モデルネームであるキャプテン グランデイト ムーンフェイズに謳われているように、ふたつの付加機能を備えている。ビッグデイト表示は誰にとっても有用な表示機能である。キャプテン グランデイト ムーンフェイズでは、1の位と10の位用の数字ディスクを別にすることで、1枚のデイトディスクで表示する場合よりも31までの数字を拡大することができた。ゼニスが採用したビッグデイト表示では、日付ディスクが扇状に重なり合うのではなく、1の位用ディスクの内側に10の位用ディスクを同軸で重ねることで、両ディスクが同じ高さになるように設計されている。今回の薄型ドレスウォッチでは、ゼニスが自社開発した同軸3枚ディスクのビッグデイト表示機構は採用されていない。同軸3枚ディスクのほうが数字をより大きく表示できるが、スペースにさらに厚みが必要になる。同軸3枚ディスクの場合は、1の位を表示するだけでも上下に重ねられた2枚のディスクが使用されているため(上部のディスクは切り込み入り)、ゆとりをもって数字を表示できるのだ。

日付早送り調整機能は非常に使いやすく設計されており、リュウズを1段目のポジションに引き出して回すと、どちらの方向に回してもビッグデイト表示が1日先にジャンプする。日付を数日前に戻したい場合は、逆戻しはできないが、リュウズに指をかけたまま前後に回して効率よく進めることができる。日付ディスクが完全に切り替わるまでには、通常使用時で約20分かかる。テストウォッチでは23時57分から0時17分までかかった。瞬時には切り替わらないが、約1時間半もかかる一般的なETA製ムーブメントに比べれば、切り替わり時間は格段に短い。

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エリート691は自動巻き機構とふたつの付加機能を搭載した高性能ムーブメント。
丁寧な装飾が施された自社製キャリバーは、両方向巻き上げ式ローター、同じ高さに配置された2枚のディスクによるビッグデイト表示、そして、ムーンフェイズを装備している。

月の魅力

キャプテン グランデイト ムーンフェイズの第2の付加機能であるムーンフェイズ表示は、誰にとってもビッグデイト表示と同等の明確な利用価値があるわけではない。ムーンフェイズ表示はどちらかと言えば、地球の衛星、月の持つ天文学的あるいは占星学的な魅力によって、ユーザーのインスピレーションをかき立てる機構である。月そのものや、太陽と地球との位置関係によって満ち欠けする姿は、人類が天体観測を始めて以来、私たちを魅了してやまない。だからこそ、現在の月の満ち欠けをひと目で知りたいと思う時計愛好家がいても不思議ではない。とは言うものの、大多数のユーザーは、ムーンフェイズ表示をどちらかと言えば造形的な要素として見ているのではないだろうか。ヴィンテージ、現行品を問わず、これまでに生み出されてきた無数のムーンフェイズウォッチと同様に、テストウォッチでも、青いムーンフェイズ表示ディスクを備えたインダイアルがクラシカルな意匠を文字盤にもたらしていることは確かである。

新作キャプテンのムーンフェイズ表示には、ムーンフェイズ特有のアーチを持つカバープレートが装備されている。カバープレートに施された放射状のギョーシェ模様は、スモールセコンドにも見いだすことができる。カバープレートの後ろでは、伝統に則って、ふたつの月といくつかの星が描かれた青いムーンフェイズ表示ディスクが回転している。カバープレートのアーチの後ろからは、まず満ちていく月が現れ、満月を過ぎると次第に欠けていく。ひとつの朔望周期が終わると地球の衛星は見えなくなり、新月となる。

ゼニスは伝統的なムーンフェイズ表示を採用している。122・5年後になって初めて1日の誤差が生じる高精度のムーンフェイズとは異なり、このモデルに搭載されているムーンフェイズは約2・7年後に1日分、進ませる必要がある。だが、たとえ熱心なムーンフェイズファンであっても、この精度で十分満足できるだろう。特に、ムーンフェイズの精度は、時計を休みなく動かし続けた場合を前提とした理論値なのだから、なおさらである。時計を外して数日間、動かさずにおいた場合は、いずれにしてもムーンフェイズを修正しなければならないのだ。ムーンフェイズ表示は、専用の工具、あるいは先の尖った硬くないもので左側のケースサイドにある修正ボタンを押すと、修正することができる。

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ムーンフェイズは伝統を踏襲したデザイン。
同じ高さになるように重ねられた2枚の
ディスクによるビッグデイト表示は、日付合わせが快適だ。
(右)
SSモデル。ややドーム型のサファイアガラス(両面無反射コーティング)、4カ所ネジ留めされたサファイアガラス製トランスパレントバック、50m防水。(左)18Kローズゴールドのケースを備えたキャプテン グランデイト ムーンフェイズの貴金属モデル。

品質の高い構成部品

これまで述べてきたように、キャプテン グランデイト ムーンフェイズの購入者は、ふたつの付加機能を備えたドレスウォッチを手にすることができる。ところで、そのクォリティはどうだろうか? シルバー文字盤にはギョーシェや模様彫りが施されており、インデックスと針もよく調和している。このクラシカルな文字盤は、直径40mmのスリーピース構造のステンレススティールケースとよく似合う。厚さ11mmのエレガントなケースは、ケースバックの中央に向かって傾斜を持たせることにより、着用すると実際よりも薄く見えるように工夫されている。ややドーム型の風防は、ベゼルから隆起している様子が側面からも観察できる。ラグは、ケースサイドへの取り付け部がベゼルの外周に融け込み、上面にサテン仕上げが施されていることで好感度が高い。ラグの上面以外は、ケースは隅々までポリッシュ仕上げが施されている。だが、そのために指紋が目立ちやすいのは残念だ。

サファイアガラスのトランスパレントバックからは、名高いエリート・シリーズに属するマニュファクチュールキャリバー691を鑑賞することができる。機能的な自動巻きキャリバーは、ボールベアリングで保持された両方向巻き上げ式ローターと調整ネジによる緩急調整機構を備え、50時間以上のパワーリザーブを生み出す。テンプの振動数は、今日では一般的な4Hz、言い換えると2万8800振動/時である。構造についてあえてあら探しをするならば、テンプが自由振動ではなく、ヒゲゼンマイの有効長によって歩度を調整するシステムが採用されている点だろう。また、ローターの生み出すエネルギーを香箱に伝える伝達車は下側だけで支持されており、上側が固定されていない。あくまでも理論の上での話だが、この解決方法は完璧ではない。とは言え、これは伝説的なゼニスの自社製クロノグラフキャリバー、エル・プリメロにも採用されている構造で、現在のエル・プリメロが十分な耐久性を備えていることは言うまでもない。このほか、ストップセコンド機能を搭載し、正確に時刻を合わせられる点においては、エリートのほうがエル・プリメロに勝ると言えるだろう。

エリートは精度も良好である。少なくとも、今回のテストウォッチに関しては、かなり優秀な精度を観察することができた。電子歩度測定機でテストした結果、計算上の平均日差はプラス3秒/日と、わずかなプラス傾向で、5秒という最大姿勢差も大きすぎるほどではない。さらに、着用テストでは、日差がまったく確認されなかった。
ムーブメントには丁寧な模様彫りが施されており、トランスパレントバックから見える部分は言うに及ばず、見えない場所にある数多くの部品もきちんと装飾されている。だが、ブリッジのいくつかに見られる面取りは、手作業で施された面取りとポリッシュ仕上げのクォリティには及ばない。そのムーブメント装飾の中でも重要な役割を演じているのがローターである。ローターは大きく切り抜かれ、中央部には黒でペイントされたゼニスの星が配されている。

ゼニスの星は文字盤にも見つけることができ、最近ではバックルにも配されるようになった。バックルの星には“Z"の文字が刻印されているが、厳しい見方をすれば、これはロゴの“変造"とも言えるだろう。それはそうと、バックルはこの時計の完成度の高さにそぐわない唯一の構成部品である。無垢材から削り出し加工されてはいるものの、デザインは個性に欠け、スティール製のツク棒は曲げ加工されている。一方、汗に強いラバーで裏打ちされたアリゲーターストラップは仕上がりが素晴らしい。手縫いのアリゲーターストラップは裁断面のコバ塗りも完璧で、革は全体的に接着されている。

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しなやかなストラップと、手首に着けると
薄く見える軽いケースの恩恵により、
キャプテン グランデイト ムーンフェイズの装着感は良好だ。

今ひとつ調和に欠けるストラップとバックル。高級感のあるアリゲーターストラップを留めるのは、作りのかなり簡素なバックルである。

見る、感じる、身に着ける

加工品質と同じように、操作性についてもマイナス要素は見当たらない。すでに述べたが、どちらの方向にリュウズを回しても反応する日付早送り調整機能の恩恵により、操作するたびに大きな喜びを見いだすことができる。また、総重量が73グラムと、非常に軽いため、装着感も快適である。ただ、先端のやや尖ったラグが、着用する際、手首に少し引っかかる場合があるかもしれない。

快適性を妨げる要素であり、そもそもこの時計の機能面における唯一の欠点は、視認性に難がある点である。針と文字盤にはあまりコントラストがなく、正時には時針と分針が区別しにくかった。時針と分針がそれぞれインデックスと重なる正時になると、同じ長さのバーが2本あるように見えてしまうのだ。
しかし、やや劣る視認性といえども、輝きを再び取り戻したゼニスの星に影を落とすことはできない。名機、エル・プリメロを搭載したさまざまなクロノグラフとともに、キャプテン グランデイト ムーンフェイズに代表されるドレスウォッチも、ゼニスが時計業界の頂点にもう一度挑戦することをきっと助けてくれるだろう。

技術仕様
ゼニス/キャプテン グランデイト ムーンフェイズ

製造者: ゼニス
モデル: Ref.03.2140.691/02.C498
機能: 時、分、スモールセコンド(ストップセコンド仕様)、ビッグデイト表示、ムーンフェイズ表示
ムーブメント: 自社製キャリバー・エリート691、自動巻き、2万8800振動/時、27石、調整ネジと緩急針による緩急調整機構、耐震軸受け(キフ使用)、パワーリザーブ約50時間、直径25.6mm、厚さ5.7mm
ケース: SS製、ややドーム型のサファイアガラス(両面無反射コーティング)、4カ所ネジ留めされたサファイアガラス製トランスパレントバック、50m防水
ストラップとバックル: 手縫いのラバープロテクト付きアリゲーターストラップおよびSS製ピングバックル
サイズ: 直径40mm、厚さ11mm、総重量73g
バリエーション: 18Kローズゴールド(123万9000円)
価格: 55万6500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)

文字盤上 +2
文字盤下 +6
3時上 +1
3時下 +3
3時左 +4
3時右 +2
最大姿勢差: 5
平均日差: +3
平均振り角:
水平姿勢 296°
垂直姿勢 261°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 3pt.
装着性(10pt.) 9pt.
ムーブメント(20pt.) 16pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 12pt.
合計 82pt.

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