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オメガ/シーマスター アクアテラ(1/1) 2011年03月号(No.33)

OMEGA SEAMASTER AQUA TERRA

市場に登場してから今年で丸4年になるオメガのベースキャリバー8500は、すでに数多くのモデルの内部で時を刻んでいる。このムーブメントに魅力的な衣装が与えられ、なおかつ手の届く価格で供給された例こそが、2008年に登場したシーマスター アクアテラなのだ。

アレクサンダー・クルプ:文 Text by Alexander Krupp
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・美しく、設計の秀逸なムーブメント
・正確な精度
・すべての構成部品において良質な加工

point
・日付ディスクに影が掛かっている
・バックルの設計にやや難がある

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キャリバー8500は、最適化されたコーアクシャル脱進機、
軸方向への遊びを調整できるバランスブリッジ、
そして、摩擦を抑えた輪列を備えている。

シーマスター アクアテラが搭載するCal.8500のコーアクシャル脱進機は、ガンギ車の脱進と動力伝達の役割を分担するために、ドライビングピニオンが追加され、3層構造に改良されている。その結果、精度とトルクの伝達効率が高められた。

魅力的な駆動

2007年初頭、新作のデ・ビル アワービジョンでデビューして以来、オメガの自社製ベースキャリバー8500は、数多くのオメガ・ウォッチでその“職務"を果たしている。それを示す良い例が、この新しい自動巻きキャリバーを搭載し、デザインもシンプルになって08年にリニューアルされたシーマスター アクアテラである。先代モデルでは模様のなかった文字盤には縦のストライプ模様が刻まれ、日付窓のフレームは大きく隆起している。ファセットが施された日付窓のデザインは、極めて立体的なアワーインデックスと良く似合う。旧アクアテラでは、文字盤の外周に発光するポイントが配されていたが、新型ではこの場所に分を示す数字が5分ごとにプリントされ、夜光塗料はアワーインデックスに塗布されている。針も、センターにシンプルな折り目を入れただけの旧作とは異なり、ふたつのファセットを持ち、インデックスとの相性が完璧である。

文字盤と同様に高級感あふれる仕上がりを見せているのが、先代モデルのフォルムを受け継いだ直径41・50mmのケースだ。有機的なカーブを持つラグと、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げを明確に使い分けたケースサイドは、特に好ましいデザインである。唯一、ケースサイドからラグへの移行部で、加工時に求められる緻密さにやや難が感じられた。角度が狭く、この部分にはポリッシュに使うバフが届かなかったのだろう。この点を除けば、加工においても、設計の上でも、ケースは十分な説得力を備えている。設計上の特徴を挙げれば、両面無反射コーティングを施した風防、ねじ込み式トランスパレントバック、ねじ込み式リュウズがあり、これらの組み合わせによって150mの防水性が確保されている。
文字盤やケースに比べるとディテールの豊かさにやや欠ける感があるとは言え、高い加工品質はブレスレットにも観察することができる。重量感がありながら、それほど厚すぎないスティールブレスレットは、ビスで留められた堅牢なコマで構成されている。上面には隅々までサテン仕上げが施され、側面にはポリッシュ仕上げが掛けられている。

一長一短があるのは、ダブルフォールディングバックルである。ふたつのセーフティーボタンに至るまで、すべての部品がスティール無垢材から削り出し加工されており、フリップロックを廃したことから、バックルは手首の上で極めてエレガントに映る。しかし、ブレスレットの長さの微調整をバネ棒で合わせるタイプではないため、マイナスドライバーを使用してコマを取り外さないとサイズの微調整ができない。装着感は基本的に良好なのだが、マイナスドライバーがないと手首のサイズの微妙な変化に対応できないので、場合によっては不便さを感じるかもしれない。その上、ダブルフォールディングバックルは、セーフティーボタンで片側しか開かないので、ユーザーはもう一方を引っ張って自分で開かなければならない。

簡単な操作

操作は非常に快適である。リュウズは構造上の理由から、かなり固くねじ込まれているものの、扱いやすい大きさで、各引き出しポジションにもクリーンに噛み合う。ねじ込みを解除すれば、あとの操作は快適だ。この時計は、手で巻き上げる時の抵抗感が少なく、巻き上げ音もほとんどしない。ただし、約60時間という長いパワーリザーブを備えた自動巻きキャリバーが搭載されていることから、手で巻き上げなければならない状況はあまり生じないだろう。新たに時刻を合わせ、巻き上げる必要があるのは、週末にまったく動かさずに長時間放置した場合ぐらいである。

リュウズを一段引いたポジションでは、時計の動きを止めずに時針を1時間刻みで進めたり、戻したりすることができる。時針を動かすと、日付も同時にジャンプして前後に切り替わる。そのため、この時計は旅行する機会の多いユーザーにとても便利で、どのタイムゾーンに移動しても正確な時刻を常に把握することができる。さらに、こうして日付を合わせれば、時刻を合わせる際に正午と午前零時を間違え、その結果、日付が24時ではなく、12時に切り替わってしまうのを防ぐこともできる。この長所を考慮すれば、日付早送り調整機能が搭載されていなくても、それほど不便さは感じないだろう。しかも、日付早送り調整機能では普通、日付を進めることしかできないことを考えれば、なおさらである。唯一、通常使用時に日付がかなりゆっくりと切り替わるのが残念な点である。テストウォッチでは、日付が切り替わるのに22時45分から23時57分までかかった。

ストップセコンド機能を使用した通常の時刻合わせは、リュウズをさらにもう一段引いたポジションで行うことができる。
操作のように快適とは言い難いのが、視認性である。時針と分針は完璧に区別することができるものの、分針は短く、先端の軌道がミニッツインデックスからやや離れている。その上、日付窓のフレームが高いため、日付に影が掛かってしまっている。とは言え、日付ディスクにプリントされた数字が太いので、影に隠れていたとしても数字は比較的認識しやすい。青い夜光塗料は夜間の発光力があまり強くなく、時計に十分光を当てておかないと、蓄光塗料を塗布した分針の先端を暗所で見付けるのは難しい。

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ケースとブレスレットは作り込みが秀逸。
ケースサイドからラグへの移行部のみ、
ポリッシュ仕上げが完璧さに欠ける。

2枚のサファイアガラスとねじ込み式リュウズを備えたケースはファセット豊かな設計で、150m防水が確保されている。ポリッシュ仕上げにやや粗さの残るラグへの移行部を除けば、作り込みは極めて秀逸。

さらに美しい内部

外部の構成部品が良好な仕上がりであるだけでなく、内部機構に関しても、現在の時計産業が供給し得る最高の水準と言っても過言ではない。キャリバー8500は、ムーブメントに望むことのできるほとんどすべてを搭載したベースムーブメントなのだ。秀逸な設計によって機能性が高い上に、美しく装飾され、さらなるモジュールを追加できる構造にもなっている。

オメガはこのムーブメントで、数多くの新機軸を打ち出している。直列に接続されたふたつの香箱は、硬度の高いダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングの恩恵により、摩耗に強い特性を持つ。また、両方向巻き上げ式ローターは、新たに設計された切り替え車とジルコニウム製のスライドベアリングによって、巻き上げ効率が高く、ノイズを立てずに作動する。さらに、新しくデザインされた歯先の形状と特殊な潤滑剤によって、輪列全体の摩擦も抑えられている。オメガが自社開発した、並外れて精度の高いコーアクシャル脱進機搭載ムーブメントは、キャリバー8500では3層構造の新型ガンギ車、温度変化に強い特殊合金で出来たブラックカラーのテンワ、そして、フリースプラング(自由振動ヒゲ)で構成されている。本来、緩急針を備えたテンプ受けが配される場所には堅固な両持ちのバランスブリッジが採用され、テンプを両側からしっかりと支持している。その上、テンプの軸方向への遊びも、バランスブリッジの下に備えられた調整用のネジによって正確に微調整することができる。

オメガはムーブメントの仕上げにも独自の手法を考案した。ローターやブリッジは、ロジウムプレート仕上げが施されているだけでなく、“アラベスク風コート・ド・ジュネーブ"と呼ばれる新しい模様彫りで飾られている。ブリッジは、エッジにもきちんと面取りとポリッシュ仕上げが施されている。ブリッジを留めるネジのブラックカラーは、ムーブメントの縁から顔をのぞかせているふたつの香箱やテンワのブラックカラーとよく似合う。このほか、ブリッジやローター、さらに、テンワのアームにまでエングレービングが施され、地板にはペルラージュ模様が入れられている。

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高い加工品質のブレスレットは好印象。
上面には隅々までサテン仕上げが、
側面にはポリッシュ仕上げが施されている。

他の構成部品に比べ、ブレスレットはそれほど複雑な作りではないが、加工品質は同様に高い。セーフティーフォールディングバックルにはもう少し使いやすさを求めたい。

良好な精度

キャリバー8500に与えられた数多くの新技術により、内部構成部品の摩耗耐性が著しく向上し、結果として寿命が格段に延びた一方で、熟考を重ねたキャリバー設計によって高い精度が実現している。クロノスドイツ版編集部にあるウィッチ製の最新歩度測定機、クロノスコープX1では、他の測定機とは異なり、2万5200振動/時のコーアクシャル脱進機の歩度を正確に解析できるが、平均日差はプラス2・3秒/日とかなり小さく、最大姿勢差も5秒とそれほど大きくなかった。また、すべての姿勢において、常にプラス寄りの数値を見せてくれたのは喜ばしい結果である。精度が最も優秀だったのは手首に着けた時で、着用テストでは一貫してプラス1秒/日未満という、著しく小さなプラス傾向が観察されるにとどまった。

クロノスドイツ版編集部での歩度測定機による簡易的な精度試験の結果、実際の着用時にはあまり発生しないことから、スイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)の精度試験では考慮されない“3時右"という姿勢を含めても、測定値はC.O.S.C.の規定値をクリアしていた。平均日差は6姿勢でプラス2・3秒/日、C.O.S.C.と同じ5姿勢でもプラス2・8秒/日と、マイナス4・0秒からプラス6・0秒の範囲に収まっている。

ここで、シーマスター アクアテラの購入者は何を得られるのかを考えてみよう。遠くからよりも近くから鑑賞したほうが個性的に映るのは否めないが、美しいアクセサリーを手に入れることができるのが第一のメリットである。さらに、名だたるスイスブランドが作った、高品質で使いやすいデイリーウォッチを手にすることができる点。そして、何よりも重要なのが、独自のテクノロジーを搭載した見事なマニュファクチュールキャリバーを所有できることだ。これだけの特性を備えた時計であれば、49万3500円は決して高すぎる価格ではないだろう。

技術仕様
オメガ/シーマスター アクアテラ

製造者: オメガ
モデル: Ref.231.10.42.21.02.001
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付(1時間刻みで合わせられる時針で調整可能)
ムーブメント: オメガ自社製キャリバー8500、自動巻き、クロノメーター、2万5200振動/時、39石、コーアクシャル脱進機、フリースプラングテンプ(WG製マイクロスクリューによる微調整)、直列接続式ツインバレル、ニヴァショック耐震軸受け、パワーリザーブ約60時間、直径29.00mm、厚さ5.50mm
ケース: SS製、ドーム型サファイアガラス(両面無反射コーティング)、ねじ込み式トランスパレントバック、150m防水
ストラップとバックル: SS製ブレスレットおよびセーフティーフォールディングバックル(フリップロック非装備)
サイズ: 直径41.50mm、厚さ12.95mm、総重量150g
バリエーション:
価格: 49万3500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)

文字盤上 +3
文字盤下 +5
3時上 +2
3時下 +1
3時左 +3
3時右 0
最大姿勢差: 5
平均日差: +2.3
平均振り角:
水平姿勢 253°
垂直姿勢 239°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 12pt.
視認性(5pt.) 3pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 82pt.

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