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ロレックス/エクスプローラー(1/1) 2011年03月号(No.33)

ROLEX EXPLORER

ロレックスはエクスプローラーをスペックアップし、時宜にかなったサイズを与えた。それでもなお、エクスプローラーは50年以上も前と変わらない意匠を備えている。

イェンス・コッホ:文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・古典的デザイン
・卓越した加工品質
・秀逸な設計の自社製ムーブメント

point
・デイト表示がない
・針が短い

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エクスプローラーは、ロレックスが自社開発したショックアブソーバー
「パラフレックス」を搭載した初のステンレススティールモデルである。
これにより、衝撃吸収性能が向上し、取り付け作業も簡素化された。

より頑丈に。キャリバー3132は有名なキャリバー3130をベースとしているが、ロレックスが自社開発したパラクロム・ヘアスプリングとパラフレックス・ショックアブソーバーを搭載している。

冒険家と紳士

950 年代は冒険と征服の時代であった。人類は自然の克服を試み、深海の最たる深みへと挑戦し、世界最高峰の踏破に挑んだ。50年、世界初の深海潜水艇が作られ ると、同じ年、アンナプルナ第1峰では人類が初めて8000m峰を制覇した。次に目標とされたのは標高8848mの世界最高峰、エベレストである。エドモ ンド・ヒラリー卿とシェルパのテンジン・ノルゲイがエベレスト世界初登頂という偉業を成し遂げたのは53年のことだ。60年になると、有人潜水艇、トリエ ステ号が地球で最も深い場所、マリアナ海溝の水深1万916mまで到達し、8000m峰では、14峰あるうちの13峰までがこの年までに踏破されている。 50年に中国領となったチベットにある唯一の8000m峰であるシシャパンマは、中国当局から入山が禁じられていたのだ。こうして振り返ってみると、ロ レックスが53年にダイバーズウォッチのサブマリーナーだけでなく、“アドベンチャーウォッチ”エクスプローラーを発表したのは、なんら不思議ではないの である。

ヒラリー卿率いるエベレスト探検隊はすでに数々の高峰制覇で誉れ高く、53年5月にはロレックスから時計の提供を受けていた。だ が、当時のものは今日ならドレスウォッチと見なされるような時計だった。その数カ月後、どのような光の条件下でも最高の視認性を確保できるブラックダイア ルに、当時はまだ夜光インデックスと夜光数字が描かれていたエクスプローラーがリリースされる。エクスプローラーという名称は探検家を意味し、“探検と冒 険”という、この時計の使用目的を明確に示していた。時を経るごとに、エクスプローラーは絶え間なくスペックアップされ(122ページのコラム参照)、 89年以降は歴代のモデルよりもはるかにエレガントになった。以後、インデックスと数字はゴールド製になり、夜光塗料はメタルフレームで縁取られたイン デックスに象眼されるようになる。

冒険や探検用の時計を選ぶとき、今日であればエクスプローラーは決して第一候補にはならないだろう。デ イト表示がないことだけでも、すでに選択基準から除外されてしまう。ロレックスもそれを鑑みてか、24時間表示とデイト表示を追加したエクスプローラー IIを71年に発表している。ただ、エクスプローラーのケース径36mmという小型サイズは、ここ数年の間で時代の好みに合わなくなってきてしまった。ロ レックスが、同じくケース径36mmのデイトジャストとデイデイトに直径41mmの堂々たるケースを備えたデイトジャストIIとデイデイトIIを近年、仲 間入りさせた一方で、旧モデルに代わって登場した新しいエクスプローラーは、サイズアップされても控え目な39mmにとどまっている。

短い分針

これはスポーティーなドレスウォッチにはちょうど良いサイズであり、文字盤のプロポーションも素晴らしい。ただ、スリムで短めの針は、全体像との協調性に 欠ける感がある。特に、先代モデルではミニッツインデックスまで届くほど長かった分針は、新作ではかなり離れた場所で終わってしまう。これでは、ロレック スの熱烈なファンも不満を覚えるかもしれない。この点を除けば、デザインは極めて秀逸で、古典的とも言える有名なフェイスはひと目で認識することができ る。

柔らかく湾曲したラグと風防を囲む幅の広くなったベゼルを備えたケースは、渾然一体とした雰囲気を醸し出している。ケースにはラグの サイドに至るまで、全体的にポリッシュ仕上げが施されている。ロレックスではおなじみの、ケースからそびえ立つサファイアクリスタル製のフラット風防は、 縁が面取りされていて衝撃を直接受けないようになっている。サファイアクリスタル風防の6時位置には、本物の証としてロレックスの王冠マークがレーザーで エッチングされている。また、偽造防止のため、ケース内周に取り付けられた薄いメタルリングには“ROLEX”の刻印がぐるりと配され、12時位置にはロ レックスの王冠マークが、 6時位置には個別のシリアルナンバーが刻印されている。

無反射加工されていないフラットなサファイアクリスタ ル風防は視認性に少々劣る感があるが、わずかに膨らみを持たせたロジウムプレート仕上げのゴールド製メルセデスハンドは、マットブラックの文字盤からしっ かりと浮かび上がる。バー型のアワーインデックスには夜光塗料が施され、12時位置に置かれた大きな夜光三角マークは暗所での位置確認に役立つ。3時、6 時、9時は、ゴールドにロジウムプレート仕上げを施したアラビックインデックスで、夜光塗料は使用されていない。先代モデルでは、ロジウムプレート仕上げ のアラビックインデックスに発光しないホワイトカラーが象眼加工されていて、新作よりも調和が取れており、光の当たり方によっては視認性にも優れていた。 今回のモデルでは、新しい蓄光塗料、ルミネッセンス・クロマライトが採用されたこともあって、針とインデックスは暗所で強く発光する。ルミネッセンス・ク ロマライトが使用されるのは、ロレックス ディープシー、サブマリーナー デイトに続いてエクスプローラーが3作目である。エクスプローラーの場合は、ダイバーズウォッチのように水中で認識しやすいブルーではなく、通常モデルと 同じ薄いグリーンで発光する。その代わり、エクスプローラーのほうが発光時間は長く、暗所で11時間経っても時刻をはっきりと読み取ることができる。

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上品な表面仕上げ。
ポリッシュ仕上げのベゼルと、上面にサテン仕上げ、側面にポリッシュ仕上げが施されたケースとブレスレット。

簡単な操作

エクスプローラーは、操作も極めて快適である。リュウズは簡単に解除することができ、引き出しポジションは当然のことながら巻き上げ用と時刻合わせ用のふ たつしかない。時刻合わせは、テンプと針を停止させるストップセコンド機能によって秒単位で正確に行うことができる。リュウズに配されたロゴ、つまり、ア ンダーライン付きの王冠マークは、トゥインロックリュウズであることを意味している。GMTマスターIIとは異なり、エクスプローラーはスペックアップさ れても、より気密性の高いトリプロックリュウズは装備されなかった。それでも、エクスプローラーは100mの防水性を備えているのだから、スポーティーな ドレスウォッチとしては十分ではないだろうか。

エクスプローラーにはGMTマスターIIと同じ改良点がある。堅牢な新型オイスターロック を備えたスティールブレスレットである。このバックルは操作が非常に簡単だ。指の爪で軽く引っ張るとフリップロックが開き、次にバックルの手前部分を引っ 張るとテコの原理が働いてバックルが開く。開閉操作が楽しいばかりか、裏に隠された匠の技を体感できるのもひとつの喜びである。イージーリンクも実用的な システムだ。コマの半分がバックルの中に隠れているので、ブレスレットの外観を変えずに5mm延長することができる。
バックルやケースと同様に重 厚感のあるブレスレットも高級感ある仕上がりで、加工品質が極めて高い。バックルと同じく、隅々までサテン仕上げが施された上面とポリッシュ仕上げの側面 を持つブレスレットはケースとの相性が完璧である。ただ、39mmのケース径を考慮すると、バックル付近のブレスレット幅がやや狭いように感じる。

ス ペックアップされたのは外部の構成だけではない。しっかりと保護されたねじ込み式裏蓋の内側で時を刻むのは、キャリバー3132である。これまでのエクス プローラーに搭載されていたキャリバー3130をベースに、パラクロム・ヘアスプリングとパラフレックス・ショックアブソーバーを装備することで、さらに 性能が高められた。また、キャリバー3130および3132は、サブマリーナー デイトやデイトジャストを駆動するデイト付きの名機、キャリバー3135のデイトなしバージョンである。これらのロレックス自社製キャリバーは、市場に出 回っている中で最も優秀な自動巻きムーブメントと言われている。高い評価の理由は、耐久性を重視して設計された堅牢な構造によるもので、その恩恵により微 調整も非常に高い精度で行うことができる。テンプは、かつてのキャリバー3000(デイトなし)や3035(デイト付き)の片側で支えるバランスブリッジ に代わり、頑丈な両持ちのバランスブリッジで両側からしっかりと固定されており、軸方向への遊びは2本のネジによって調整することが可能だ。緩急調整は緩 急針ではなく、テンワに備わったマイクロステラナットによって行われ、巻き上げ式のヘアスプリングがすべての姿勢において安定した精度を導き出す。さら に、自動巻きローターの切り替え車にはレッドアルマイト処理を施し、摩擦を最小限に抑えている。
今回のエクスプローラーにも、ロレックスが自社生 産するブルーのパラクロム・ヘアスプリングが採用されている。ニオブ(Nb)とジルコニウム(Zr)の特殊合金で出来たこのヘアスプリングは、磁力の影響 を受けないことが特徴だ。また、耐衝撃性も標準のものと比べて約10倍向上している。

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イージーリンク付きオイスターロック。
実用的なバックルには“ROLEX”の文字と王冠マークが刻印されている。

独自のショックアブソーバー

衝 撃吸収性能も、ロレックスが開発したパラフレックス・ショックアブソーバーによってこれまで以上に向上した。ロレックスがスティールモデルにパラフレック ス・ショックアブソーバーを装備するのは今回が初めてで、以前はゴールド製モデルのみのロレックス プリンスとデイデイトIIにしか搭載されていなかった。パラフレックス・ショックアブソーバーの場合、上部の受け石を中心に戻す板バネが回転対称のフォル ムを持ち、表裏両面とも仕上げが施されている。そのため、取り付け時に表と裏を気にする必要がなく、工程が大幅に簡素化されるというメリットがある。板バ ネは、激しい衝撃が加わっても固定部から外れにくい構造で、天真を穴石の中心で安定させるための独特な形状によって曲がりにくくなっているため、簡単には 変形しない。ショックアブソーバーにはさらに、上限と下限のオイルレベルを示すマークがふたつ付けられている。すなわち、パラフレックスは、良いものをさ らに進化させるというロレックスのたゆみない努力を示す好例なのだ。

ムーブメントで納得させられるのは設計面だけではない。ソリッドバッ クモデルであるにもかかわらず、装飾にも手を抜いていないのだ。ロレックス特有のツーピース構造のローターには、ローターブリッジと同様にサンブラッシュ 仕上げが施され、他のブリッジにはペルラージュ仕上げが施されている。ブリッジと地板はすべてロジウムプレートで仕上げられており、エッジは丁寧に面取り した上にポリッシュ仕上げが施されている。とりわけ、鏡面仕上げされたネジ頭は美麗である。
ロレックスは精度の高い時計作りで名高い。テスト ウォッチも例外ではなく、着用テストではプラス3秒/日という優秀な動態精度を見せてくれた。最新式の歩度測定機、ウィッチ製クロノスコープX1でも似た ような測定結果を得ることができ、プラス3・7秒/日という平均日差が観察された。ただ、垂直姿勢では顕著な振り落ちが見られ、最大姿勢差は7秒と、ロ レックスにしてはやや大きかった。とは言え、着用時の平均日差はプラス3秒/日なのだから、いずれにしても時計師がいらないほどの高精度であることは確か である。

良品にふさわしい価格

数多くのスペックアップにともなって価格も上昇しているが、これはそれほど驚くに値しない。新型エクスプローラーが59万8500円であるのに対し、旧モ デルはプライスリストによると49万3500円であった。自動巻きキャリバーを搭載したデイトなしモデルでエクスプローラーに比肩し得る時計は多くはな い。ロレックスが数多くのディテールをさらに進化させたことを考慮すれば、十分に適正な価格と言えるだろう。デイト表示を必要とせず、針が短くても構わな いのであれば、エクスプローラーを選ぶことで、技術的に申し分のない、程よいサイズの古典的なモデルを手に入れることができる。ロレックスは、一般的なレ ベルをはるかに超えた実用性を新型エクスプローラーに与えた。
特筆すべきは、エクスプローラーは8000m峰への登頂を難なくこなす実力を備えつつも、スーツにも似合う時計だということである。

技術仕様
ロレックス/エクスプローラー

製造者: ロレックス
モデル: Ref.214270
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)
ムーブメント: 自社製キャリバー3132、自動巻き、直径28.5mm、厚さ5.37mm、2万8800振動/時、31石、パラフレックス・ショックアブソーバー、巻き上げ式パラクロム・ヘアスプリング、マイクロステラナット付きグリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約48時間
ケース: 904Lスティール製、ねじ込み式裏蓋、サファイアクリスタル製フラット風防、ねじ込み式トゥインロックリュウズ、100m防水
ストラップとバックル: 904Lスティール製イージーリンク付きオイスターロックブレスレット
サイズ: 直径39mm、厚さ11mm、総重量126g
バリエーション:
価格: 59万8500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)

文字盤上 +7
文字盤下 +6
3時上 +5
3時下 0
3時左 +4
3時右 0
最大姿勢差: 7
平均日差: +3.7
平均振り角:
水平姿勢 296°
垂直姿勢 263°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 13pt.
視認性(5pt.) 5pt.
装着性(10pt.) 10pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 90pt.
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