【90点】ロレックス/エクスプローラー

FEATUREスペックテスト
2011.03.03

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エクスプローラーは、ロレックスが自社開発したショックアブソーバー
「パラフレックス」を搭載した初のステンレススティールモデルである。
これにより、衝撃吸収性能が向上し、取り付け作業も簡素化された。

より頑丈に。キャリバー3132は有名なキャリバー3130をベースとしているが、ロレックスが自社開発したパラクロム・ヘアスプリングとパラフレックス・ショックアブソーバーを搭載している。

冒険家と紳士

950 年代は冒険と征服の時代であった。人類は自然の克服を試み、深海の最たる深みへと挑戦し、世界最高峰の踏破に挑んだ。50年、世界初の深海潜水艇が作られ ると、同じ年、アンナプルナ第1峰では人類が初めて8000m峰を制覇した。次に目標とされたのは標高8848mの世界最高峰、エベレストである。エドモ ンド・ヒラリー卿とシェルパのテンジン・ノルゲイがエベレスト世界初登頂という偉業を成し遂げたのは53年のことだ。60年になると、有人潜水艇、トリエ ステ号が地球で最も深い場所、マリアナ海溝の水深1万916mまで到達し、8000m峰では、14峰あるうちの13峰までがこの年までに踏破されている。 50年に中国領となったチベットにある唯一の8000m峰であるシシャパンマは、中国当局から入山が禁じられていたのだ。こうして振り返ってみると、ロ レックスが53年にダイバーズウォッチのサブマリーナーだけでなく、“アドベンチャーウォッチ”エクスプローラーを発表したのは、なんら不思議ではないの である。

ヒラリー卿率いるエベレスト探検隊はすでに数々の高峰制覇で誉れ高く、53年5月にはロレックスから時計の提供を受けていた。だ が、当時のものは今日ならドレスウォッチと見なされるような時計だった。その数カ月後、どのような光の条件下でも最高の視認性を確保できるブラックダイア ルに、当時はまだ夜光インデックスと夜光数字が描かれていたエクスプローラーがリリースされる。エクスプローラーという名称は探検家を意味し、“探検と冒 険”という、この時計の使用目的を明確に示していた。時を経るごとに、エクスプローラーは絶え間なくスペックアップされ(122ページのコラム参照)、 89年以降は歴代のモデルよりもはるかにエレガントになった。以後、インデックスと数字はゴールド製になり、夜光塗料はメタルフレームで縁取られたイン デックスに象眼されるようになる。

冒険や探検用の時計を選ぶとき、今日であればエクスプローラーは決して第一候補にはならないだろう。デ イト表示がないことだけでも、すでに選択基準から除外されてしまう。ロレックスもそれを鑑みてか、24時間表示とデイト表示を追加したエクスプローラー IIを71年に発表している。ただ、エクスプローラーのケース径36mmという小型サイズは、ここ数年の間で時代の好みに合わなくなってきてしまった。ロ レックスが、同じくケース径36mmのデイトジャストとデイデイトに直径41mmの堂々たるケースを備えたデイトジャストIIとデイデイトIIを近年、仲 間入りさせた一方で、旧モデルに代わって登場した新しいエクスプローラーは、サイズアップされても控え目な39mmにとどまっている。

短い分針

これはスポーティーなドレスウォッチにはちょうど良いサイズであり、文字盤のプロポーションも素晴らしい。ただ、スリムで短めの針は、全体像との協調性に 欠ける感がある。特に、先代モデルではミニッツインデックスまで届くほど長かった分針は、新作ではかなり離れた場所で終わってしまう。これでは、ロレック スの熱烈なファンも不満を覚えるかもしれない。この点を除けば、デザインは極めて秀逸で、古典的とも言える有名なフェイスはひと目で認識することができ る。

柔らかく湾曲したラグと風防を囲む幅の広くなったベゼルを備えたケースは、渾然一体とした雰囲気を醸し出している。ケースにはラグの サイドに至るまで、全体的にポリッシュ仕上げが施されている。ロレックスではおなじみの、ケースからそびえ立つサファイアクリスタル製のフラット風防は、 縁が面取りされていて衝撃を直接受けないようになっている。サファイアクリスタル風防の6時位置には、本物の証としてロレックスの王冠マークがレーザーで エッチングされている。また、偽造防止のため、ケース内周に取り付けられた薄いメタルリングには“ROLEX”の刻印がぐるりと配され、12時位置にはロ レックスの王冠マークが、 6時位置には個別のシリアルナンバーが刻印されている。

無反射加工されていないフラットなサファイアクリスタ ル風防は視認性に少々劣る感があるが、わずかに膨らみを持たせたロジウムプレート仕上げのゴールド製メルセデスハンドは、マットブラックの文字盤からしっ かりと浮かび上がる。バー型のアワーインデックスには夜光塗料が施され、12時位置に置かれた大きな夜光三角マークは暗所での位置確認に役立つ。3時、6 時、9時は、ゴールドにロジウムプレート仕上げを施したアラビックインデックスで、夜光塗料は使用されていない。先代モデルでは、ロジウムプレート仕上げ のアラビックインデックスに発光しないホワイトカラーが象眼加工されていて、新作よりも調和が取れており、光の当たり方によっては視認性にも優れていた。 今回のモデルでは、新しい蓄光塗料、ルミネッセンス・クロマライトが採用されたこともあって、針とインデックスは暗所で強く発光する。ルミネッセンス・ク ロマライトが使用されるのは、ロレックス ディープシー、サブマリーナー デイトに続いてエクスプローラーが3作目である。エクスプローラーの場合は、ダイバーズウォッチのように水中で認識しやすいブルーではなく、通常モデルと 同じ薄いグリーンで発光する。その代わり、エクスプローラーのほうが発光時間は長く、暗所で11時間経っても時刻をはっきりと読み取ることができる。