【86点】A.ランゲ&ゾーネ / サクソニア・アニュアルカレンダー

FEATUREスペックテスト
2010.11.29

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見事な尾錠の造形と仕上げ。
使い勝手の良い尾錠は、フォールディングバックルの存在意義を脅かすかもしれない。

永久への小さな一歩

技術に造詣の深い読者なら、サクソニア・アニュアルカレンダーが永久カレンダーとよく似たメカニズムであることに、すでにお気づきではないだろうか。特に、48の段差を持つ月プログラム車が4年で1回転することや、月を表示するために減速歯車がもうひとつ必要な点などがよく似ている。ランゲマティック・パーペチュアルの永久カレンダーの構造を見てみても、使用されている技術は実際、同じである。年次カレンダーではデイ・ナイト表示の針と閏年を示す針がなく、48の段差を持つ月プログラム車の2月の段差が永久カレンダーほど深く切り込まれていないことが、わずかな相違点である。つまり、部品点数476個のサクソニア・アニュアルカレンダーのムーブメントが、ランゲマティック・パーペチュアルよりも2個、部品が少ないだけで、厚さもほとんど変わらないのは、少しも不思議ではないのだ。

これは、ポルシェがエントリーモデルをポルシェ911の半額で提供するケースに例えられるだろう。タイヤの仕様が異なるために最高速度が時速280kmではなく時速140kmに制限されているのが、唯一の違いである。こうしたケースは、自動車の世界だけではなく、時計でも珍しくない。だが、例えばパテック フィリップなど、他社の年次カレンダーは、永久カレンダーよりもかなりシンプルに設計されており、永久カレンダーとは別に開発された独自の構造を持っている。

複雑であるという理由だけで永久カレンダーの価格が跳ね上がる実情を鑑みれば、A.ランゲ&ゾーネの取った行動には一層驚かされる。しかし、年次カレンダー専用のカレンダー機構を別途開発するほうが、永久カレンダーをモディファイするよりももっとコストがかかることなのだろう。いずれにしても、サクソニア・アニュアルカレンダーの購入者にとっては、永久カレンダー並みに複雑な技術を搭載した時計が、ランゲ1・ムーンフェイズのゴールドモデル(393万7500円)を下回る価格で手に入れられるわけだから、これほどうれしいことはない。

技術仕様
A.ランゲ&ゾーネ/サクソニア・アニュアルカレンダー

製造者: A.ランゲ&ゾーネ
Ref.: LS3303AP
機能: 時、分、秒、アウトサイズデイト、曜日表示、月表示、ムーンフェイズ
ムーブメント: L085.1、自動巻き、2万1600振動/時、43石、耐震軸受(KIF使用)、グリュシデュール製テンワ、スワンネック型緩急調整装置、ハンドエングレービングが施されたテンプ受け、パワーリザーブ約46時間、直径30.4mm、厚さ5.4mm
ケース: 18KWG製、サファイアクリスタル製の風防ガラス(無反射コーティング)、6カ所でネジ留めされたサファイアクリスタルのトランスパレントバック(無反射コーティング)、3気圧防水
ストラップとバックル: 手縫いのクロコダイルベルトおよび18KWG製尾錠
サイズ: 直径38.5mm、厚さ9.8mm、総重量96g
バリエーション: 18Kピンクゴールド(371万7000円)
価格: 371万7000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)

平常時
文字盤上 +7
文字盤下 +5
3時上 -3
3時下 -3
3時左 -4
3時右 -3
最大日差: 11
平均日差: 0
平均振り角:
水平姿勢 321°
垂直姿勢 284°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 9pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 6pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 86pt.