MEMBERS SALON

ブライトリング/スーパーオーシャンII(1/1) 2010年09月号(No.30)

BREITLING SUPEROCEAN II

ブライトリングの新作、スーパーオーシャンIIは、水深1500mまで潜水可能だ。ただし、その真価が発揮されるのは、光が届くところまでである。

アレクサンダー・クルプ:文 Text by Alexander Krupp
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik SchÖlzel
シェリル・ケーシー(シャッターストック):背景写真 Background photographs by Cheryl Casey (shutterstock)
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・防水性が極めて高いケース
・完璧な精度
・細部まで良質な作り込み
・強く発光する

point
・文字盤が混雑気味
・ベゼルが読み取りにくい

spec120102br670_420b.jpg

外観も技術面も調整されたETA2824ベースのCal.B17はこの上なく正確に作動する。

光輝を放つもの

ブライトリングのダイバーズウォッチシリーズ、スーパーオーシャンが生まれてから、すでに50年以上が経つ。パイロットウォッチを得意とするブランドとしてすでによく知られていたブライトリングがダイバーズモデルの1号機を発表したのは、1957年のことである。初代スーパーオーシャンは、シェル構造のケースと極めて強靭な風防の恩恵により、200mの防水性を備えていた。スーパーオーシャンが、職業ダイバーや海軍の兵士の手首からアマチュアダイバーの腕へと活躍の場を広げていくのに、それほど時間はかからなかった。
歴史的な初代スーパーオーシャンをもっとも忠実に再現したモデルは、2007年にリリースされたスーパーオーシャン・ヘリテージ46である。アラビア数字インデックスを廃した控えめな文字盤に、先端が三角形の時針、刻み目の付いた幅の広いベゼルに5分ごとに配された分目盛り、そして200m防水を備えていたことなどが、注目すべき共通点である。

スーパーオーシャン・ヘリテージ46でヴィンテージモデルのコンセプトを明確に打ち出したブライトリングだが、今回の新作スーパーオーシャンIIでは造形の新領域に挑戦している。小さなバーインデックスが静かに座っていたアワーマーカーの場所では、特大のアラビア数字インデックスと蓄光インデックスが元気よくはしゃぎ回っている。逆回転防止ベゼルにはラバーリングが装着され、今回初めて大きな数字が15分置きに配されている。また、中央部をレリーフ状に隆起させたシンプルなラバーストラップも、新作に合わせて新しくデザインされたものである。“ダイバープロ”と呼ばれるこのストラップは、インパクトのある穴開きストラップ、“オーシャンレーサー”に続く選択肢として、ストラップの仲間に加えられた。

光がなければうまく機能しない

スーパーオーシャンIIの防水性は、ねじ込み式リュウズ、強靭なサファイアクリスタル製風防、気密性の高いねじ込み式裏蓋の恩恵によって極めて高く、理論上はこの時計を着けたまま水深1500mまで潜水できることになっている。しかし、実際には日光の届く所までが潜水できる限度である。スーパーオーシャン・ヘリテージと同様に、回転ベゼルには蓄光塗料を塗布したドットインデックスがなく、暗所での潜水時間を確認することができないからだ。光の条件を別にしても、ベゼルには1分刻みの目盛りが付いていないので、ダイバーは潜水時間を正確に計ることができない。
ダイバーベゼルとしての機能に不足があることは、ブライトリングにとって承知の上である。太字のアラビア数字を4つ配してデザインに調和を与えるために、あえてこの点を甘受したのだ。ブライトリングはスーパーオーシャンIIを、サーフィンやレクリエーションダイビング、また人命救助など、水面近くでの活動に相応しい堅牢なアイテムとみなしている。とは言え、職業ダイバーがどうしてもこの時計を潜水艇に持ち込みたい場合に備えて、自動減圧バルブが装備されおり、潜水ベルで浮上する際には時計のケースを破損しないようにヘリウムガスを逃がすことができるようになっている。

ブライトリングの開発者とデザイナーの意図に敬意を表し、スーパーオーシャンIIを素晴らしく堅固なスポーツ兼デイリーウォッチとして観察してみよう。すぐに、多くの長所に気づくだろう。直径42mmの大きなステンレススティールケースは、高い防水性を備えていることは言うに及ばず、噛み合いの良好な逆回転防止ベゼル、ハイレベルなポリッシュ仕上げ、ケースバックにエングレーブされたブランドロゴの贅沢なレリーフなど、ブライトリングの品質を証明する数多くの特徴を見出すことができる。ベゼルにはブラックラバーがモールド成型されており、サテン仕上げの数字やインデックスと表面の高さが同じになるまで、丁寧に研磨されている。加工品質においてはまったく非の打ち所がないのだが、ラバー部分に埃が付きやすく、金属製のインデックスに傷が付きやすいことは否めない。ケースの側面や大きなバックルも、鏡面仕上げの精度が高いだけに傷が目立ちやすいことは確かである。
小さな傷が付くことを除けば、バックルは機能的で扱いやすい。堅牢な構造で、ロックもきちんと噛み合い、2個のセーフティーボタンによって安全に開くことができる。また、内側に内蔵されたエクステンションを指で押し出すと、ストラップを9mm延長できる。日常的に使用する場合は素早く長さを調節できるので非常に便利だが、ダイビングスーツの上から着用するにはエクステンションを出しても長さが足りない。このことからも、スーパーオーシャンIIの守備範囲が主に砂浜や浅瀬であることがわかるだろう。

spec120102br670_420c.jpg

深海に相応しい。自動減圧バルブとねじ込み式裏蓋を備えたケースは1500mの水圧にも耐える。

新型スーパーオーシャンIIは、正真正銘“ブライトリング産”だ。ケース、ムーブメント、
ストラップ、そしてバックルが、ブランド特有の高い加工品質を証明している。

ストラップ自体は地味だが丈夫である。約4mmとかなり厚く、重厚なタイムピースによく似合い、快適な装着感にも貢献している。わずかなマイナス点を挙げるとすれば、堂々たるケースの厚さが15mmもあるために頭でっかちに見え、手首の上で不安定に揺れることだ。
良好な装着感と同様、操作性もレベルが高い。大きなねじ込み式リュウズは扱いやすく、解除時はベゼルとリュウズプロテクターがほとんど邪魔にならない。2段ある引き出しポジションへの噛み合いも良好だ。巻き真は非常に堅牢な作りで、引き出した状態でもぐらつくことがない。ストップセコンドと日付早送り調整機能は、ベースとなるETAの量産キャリバー2824なら当然搭載されている機能である。縁の刻み目が深いベゼルは、グローブを着用したままの操作が可能で、1回転120刻みでクリーンに噛み合う。

スポーティーな顔

スーパーオーシャンIIの文字盤は、ケースやストラップと同様、スポーティーな印象に仕上がっている。新しい要素がふんだんに盛り込まれているにもかかわらず、“ブライトリング産”であることはひと目で認識することができる。6時、9時、12時の3カ所に配された特大インデックス、幅の広い針、イタリック体の巨大なアラビア数字インデックス、そして何よりもこれらのコンビネーションは、新世代を示唆するよりダイナミックなデザインの要素である。ただ、幅の広いベゼルに囲まれてすでに圧迫感のある文字盤は、表示エレメントが大きくなったこともあって非常に混雑した印象だ。日付窓の位置はよい。外周いっぱいまで寄せた日付窓は、適切なサイズの恩恵により、アワーインデックスにうまく溶け込んでいる。だが、日付の数字が細く、とりわけ10日から19日までは10の位の数字が窓枠ぎりぎりに位置するため、読み取りには少々骨が折れる。

分針が文字盤リングのミニッツインデックスに届いていないものの、時刻の視認性は概して良好である。夜間、強烈に発光する様には感銘を覚えるほどで、秒針の先端に至るまで強い輝きが長時間持続する。ダイバーベゼルには蓄光塗料が使用されていないので、ダイバーは光が降りそそぐ水面近くにしかいられない。従って、ダイバーにとって輝度の高い秒針の利用価値は、暗所で時計が作動しているか確認できることぐらいだろう。しかし、日常で使用する分には、高輝度の蓄光塗料が塗布された秒針は頼もしい存在である。特に夜間、サイドテーブルに置いた時計がまだ動いているかどうかをチェックするのに便利である。

“正確に作動する”ことこそ、この時計の大きな武器のひとつである。電子歩度測定器による検査では、テストウォッチの平均日差はプラス1・8秒/日と、ごくわずかなプラス値が観察され、姿勢差による最大日差も2秒と少なかった。テンプの振り角も水平・垂直両姿勢ともあまり変わらず、極めて安定していた。どこかの姿勢でマイナス値が出るというリスクを冒したくなければ、この上なく優秀な微調整と言えよう。着用テストも、歩度測定器による結果を裏付けてくれた。時計は毎日同じように、2秒ずつ進んでいった。つまり、この時計のオーナーが約束の時間よりも1分早く待ち合わせ場所に到着するまで、1カ月はかかる計算になる。

spec120102br670_420d.jpg

見事な最終章。セーフティーフォールディングバックルは美しく、堅牢で機能的。

ブライトリングが今回のニューカマーに採用したコンセプトは、信頼性の高い
スポーツ兼デイリーウォッチだ。高い精度ももちろん、欠かせない要素である。

完璧な精度をたたき出すエンジンはETA2824ベースのB17である。ブライトリングの個体はすべて、スイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)からクロノメーターとして認定されている。C.O.S.C.による公式検定の前に、ブライトリングは主ゼンマイを改良したものに取り換え、アンクルとガンギ車のマッチングを最適化し、ヒゲゼンマイのセンタリングを行ってテンプのバランスを整え、ムーブメントを5姿勢で調整している。
ムーブメントの装飾も、機構の素晴らしさに比肩しうる好印象な仕上がりだ。ローターは、コート・ド・ジュネーブが施された中心部にブランド名がゴールドカラーで彫り込まれ、縁部分がサンバースト模様で仕上げられている。ローター受けとブリッジのいくつか、そして地板はペルラージュ模様で飾られ、香箱には対照的にサンバースト模様が施されている。

ネジやエッジの多くには手が加えられていないが、28万8750円でこのタイムピースを手に入れられることを考えれば、許容の範囲内だろう。ETA製キャリバーを搭載した3針時計としては決して安いほうではないが、ケース、ストラップ、そしてムーブメントの高いクォリティを考慮すれば、良心的な価格設定である。スーパーオーシャンIIなら身に着けたまま、水泳やシュノーケル、サーフィン、ジェットスキー、またレクリエーションダイビングなど、何のためらいもなく楽しむことができる。これほど魅力的なタイムピースを無防備に砂浜に置いておくほうが、かえって危険だと言えるだろう。

技術仕様
ブライトリング/スーパーオーシャンII

製造者: ブライトリング
Ref.: A187B28RRC
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付
ムーブメント: Cal.B17(ETA2824ベース)、自動巻き、C.O.S.C.認定クロノメーター、2万8800振動/時、25石、グリュシデュール製テンプ、エタクロン式緩急調整装置、耐震軸受(インカブロック使用)、パワーリザーブ約40時間、直径25.6mm、厚さ4.6mm
ケース: SS製、ドーム型サファイアクリスタル(両面無反射コーティング)、SS製ねじ込み式裏蓋、ねじ込み式リュウズ、逆回転防止ダイバーベゼル、自動減圧バルブ、1500m防水
ストラップとバックル: ラバーストラップおよびエクステンション内蔵SS製セーフティーフォールディングバックル
サイズ: 直径42mm、厚さ15mm、総重量147g
バリエーション: 別カラーの文字盤リング(シルバー、イエロー、レッド、ブルー)、尾錠タイプのラバーストラップ(25万7250円)、セーフティーフォールディングバックル付きラバーストラップ(28万8750円)またはSS製ブレスレット(29万9250円)
価格: 28万8750円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)

平常時
文字盤上 +1
文字盤下 +2
3時上 +2
3時下 +3
3時左 +2
3時右 +1
最大日差: 2
平均日差: +1.8
平均振り角:
水平姿勢 291°
垂直姿勢 297°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 12pt.
視認性(5pt.) 3pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 13pt.
精度安定性(10pt.) 10pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 80pt.
前の記事

ゼニス/エル プリメロ ストライキング 10th クロノグラフ

次の記事

ジャガー・ルクルト/マスター・メモボックス

おすすめ記事

pick up MODEL

正規時計販売店

正規時計販売店

高級時計を取り扱う全国の正規時計販売店をご紹介。各店が行うフェア情報やニュースもお届けします!

時計ランキング

時計ランキング

その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。

スペックテスト

スペックテスト

クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!

基礎からの時計用語辞典

基礎からの時計用語辞典

時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。

PAGE TOP