【84点】パネライ/ルミノール 1950 3デイズ GMT

FEATUREスペックテスト
2010.05.03

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ケースの構造。船のように、弓形が交差して生まれるルミノールのフォルム。

パネライの伝統的なモデルで知られるサンドイッチ文字盤は、
時計に奥行きを与え、数字とインデックスが明るく発光するのに貢献している。

 スーパールミノヴァを塗布した下層の盤面に、アワーマーカーとインデックスをくり抜いた上層の盤面を重ねるサンドイッチ文字盤は、いつもながら美しい仕上がりである。時計に奥行きを与える2層構造の文字盤は、パネライで受け継がれてきた伝統的な技法だ。上層の盤面に数字をくり抜くため、"6"と"9"は開いたフォルムになっている。サンドイッチ文字盤の上で強く発光する数字とインデックスは、暗所での視認性に優れていることは言うまでもない。GMT針にも蓄光塗料が塗布されており、スモールセコンドの針と4本のインデックスも明るく発光する。日中も時刻を素早く把握できるが、ミニッツインデックスが配されていないために、正確な時刻が読み取りづらいこともある。裏蓋側のムーブメントに取り付けられたパワーリザーブインジケーターは、小さな窓で表示する方式だ。表示窓の中で回転するディスクが黒から赤に変わることで、パワーリザーブの残量がゼロに近づいたことを知らせる。
 細かく見てみると、微細だが針の上に埃が乗っているのが観察された。また、打ち抜き加工の針は薄いために、ポリッシュ仕上げの袴座に向かって湾曲している。ケースでも、ラグ部分のサテン仕上げに粗さが見受けられた。 こうした点を除けば、ケースの作り込みは良好である。特に、ラグに装備されたブレスレット交換システムは実に精巧で、同梱の工具でラグの裏側にあるプッシュボタンを操作すれば、バネ棒が簡単に外れ、同じく同梱のラバーストラップに付け替えることができる。3デイズ GMTは300メートルの防水性も備えていることから、ラバーストラップに交換すれば海に入ることも可能だ。

 納品時に装着されている、幅の広い機械縫いのアリゲーターストラップは、極めてクリーンな仕上がりである。仕上げの良さは、ボトルオープナーのような形の尾錠にも当てはまる。だが、ルーペを使って観察するのは避けたほうが賢明だ。とは言え、鋭いエッジは不快感を与えるほど手首に当たるわけではない。
 ルミノール 1950 3デイズ GMTは、44mmという堂々たるサイズにもかかわらず、着け心地はなかなか快適である。ラグには下方への伸びがあまりないため、装着時に本体が手首の上でぐらつく傾向があるものの、リュウズプロテクターが手の甲に当たるのではないかという懸念は無用である。
リュウズプロテクターはまた、操作性を損ねる要因にもなっていない。レバーロック機構は素早く解除することができ、時計を手首に着けたまま簡単に操作することができる。直径の大きなリュウズは扱いやすく、設定はどれも容易である。リュウズは、第1 ポジションで巻き上げ、第2ポジションではローカルタイム用の時針を1時間刻みで合わせることができる。タイムゾーンの異なる地域へ移動する際に、極めて便利な機能である。この時、日付も前後にジャンプするので、スペックとして日付早送り機能を積んでいないにもかかわらず、手早く修正することが可能だ。
 リュウズを第3ポジションに引き出すと、秒針がジャンプしてゼロに戻る。テンプが停止し、時と分を普通に合わせることができる。レバーを元に戻すことでリュウズを再びロックポジションに押し込むことができるのは、この上なく楽である。リュウズがケースに押し込まれると、秒針も再び動き出す。A.ランゲ&ゾーネではゼロリセット機構としてすでに採用されているが、ゼロリセットセコンド機構はパネライの伝統的なモデルにも搭載されていた。時報や電波時計とシンクロさせることを容易にする機能である。

 ゼロリセットセコンド機構はクロノグラフ機構と同様に、リセットカムをレバーが押すことで機能する。リセットカムは、秒針軸に取り付けられている。
 キャリバーP.9001は、サファイアガラスのトランスパレントバックからよく見えるものの、ローターがスケルトナイズされているわりには、大きな地板がムーブメント全体を覆っているので、鑑賞できるのはテンプとテンプ受けに限られる。だが、より詳細に観察すると、これらの他に、ガンギ車が覗く三日月型の窓と、自動巻きローターのコハゼが見える小さな窓を発見する。さらに、パワーリザーブインジケーターの窓があり、パワーリザーブが少なくなると、窓にディスクの赤い部分が現れる。ローターや地板、テンプ受けは線彫り模様で装飾されている。エングレーブされた文字にブルーカラーが盛られているのも、この時計にふさわしい美しくテクニカルな意匠に貢献している。ポリッシュ仕上げのネジ頭は美麗で、一部にはブルースクリューも使用されている。また、わずかながらも、面取りとポリッシュで仕上げたエッジも見える。これに反して残念なのが、薄い金属板から打ち抜き加工されたテンプのエンドプレートである。この部分はポリッシュのかけ具合も粗く、全体の構成に対してやや見劣りしてしまう。
 両方向巻き上げ式ローターは、磨耗に強いセラミック製のボールベアリングが軸部に使用されており、72時間のパワーリザーブを確保すべく、コハゼを介してツインバレルを巻き上げる。29個の受け石は、摩擦を抑えるための軸受けとして機能する。ムーブメントは合計227点もの部品で構成されている。4本のチラネジを備えたフリースプラングテンプは、賢い解決策だ。