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グラスヒュッテ・オリジナル/セネタ・クロノメーター(1/1) 2009年11月号(No.25)

GLASHÜTTE ORIGINAL / SENATOR CHRONOMETER

グラスヒュッテ・オリジナルは最新モデルのセネタ・クロノメーターでマニュファクチュール本来の美徳である精度の追求に立ち返った。このモデルはザクセンのマニュファクチュール史上初めてのグラスヒュッテ公式歩度証明書を取得したハイプレシジョンウォッチである。

point
・ドイツ工業規格(DIN)8319に準拠した公式歩度証明書を有するクロノメーター
・仕上げが極めて美しい自社製キャリバー
・自社開発した独自の秒針ゼロストップ機構
・時刻を正確に合わせるのが簡単
・微調整のレベルが非常に高い

point
・ダブルフォールディングバックルが扱いづらい

クロノス評価

ストラップとバックル (最大10pt.):8pt.
操作性(5pt.):5pt.
ケース(10pt.):10pt.
デザイン(15pt.):15pt.
視認性(5pt.):4pt.
装着性(10pt.):9pt.
ムーブメント(20pt.):18pt.
精度安定性(10pt.):10pt.
コストパフォーマンス(15pt.):13pt.
合計:92pt.

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キャリバー58-01で目を引くのは、ハンドエングレービングを施したテンプ受けだけではない。
香箱や巻き上げ車が、パワーリザーブ表示のための遊星歯車機構とともによく見える。

ザクセン産クロノメーター

ドイツでは数年前、ヴェンペの尽力によって公式クロノメーター検定が再び導入された。当初、グラスヒュッテ天文台で行われる検定に自社の時計を送り込む有力ブランドなど、ヴェンペ以外で果たしてあるのかと、誰もが疑問に思った。DKDドイツ計量検定所(DKD=Deutsche Kalibrierdienst)も、原則としてすべてのマニュファクチュール(ドイツ以外に拠点を置くものも含む)の自由裁量に任せられた機関だが、逡巡の末、最終的には協力することとなる。こうした状況下で、エルツ山地の街を本拠とするドイツ最大のマニュファクチュール、グラスヒュッテ・オリジナルが参加を決意したことは、妥協が一切許されないことを意味すると同時に、喜ばしいことでもあった。検定を通った時計の価値が高まるばかりか、ドイツ・クロノメーター検定の名をより広く知らしめることになるからである。
2009年のバーゼルワールドで発表されたセネタ・クロノメーターは、クロノメーターというコンセプトを明確に主張している。マリン・クロノメーターの長い伝統を守り、公式クロノメーター認定証によって高い精度が保証されたタイムピースだ。

グラスヒュッテ・オリジナルが製作したセネタ・クロノメーターは、どの個体にもドイツ工業規格(DIN=Deutsche Industrie Normen)8319に基づく精度試験が行われている。このモデルには特別に設計された新型ムーブメントが搭載されている。手巻きキャリバー58‐01だ。
クロノメーターというコンセプトが一貫して表現されているのは、ムーブメントだけではない。秒針がセンターではなく6時位置にあり、パワーリザーブ表示が12時位置にある文字盤は、マリン・クロノメーターを踏襲した意匠である。パワーリザーブは約45時間で、パワーリザーブ表示にある小さな円形の開口部は、ナイト&デイ表示だ。ここには、6時から18時まで白いディスクが、18時を過ぎると黒いディスクが現れる。高級感溢れる文字盤の表情は、グラスヒュッテ・オリジナル独自のパノラマデイト表示、洋梨(Poire)の形をしたポリッシュ仕上げの青焼き針による時刻表示、そして手仕上げでポリッシュを施した袴座によって完成されている。文字盤はまた、高度な表面処理や削り出し加工のレイルウェイトラック、彩色されたフライス加工のローマンインデックスによって、見る者の心を瞬く間に捉えるだろう。仕上がりの見事な文字盤の表面は、シルバープレート仕上げ(argenture grainée)によって生まれたものである。この高度な手法は、まず、水、チョーク、木を混ぜたものを使って真鍮製の文字盤表面を機械で磨いた後、銀粉と水からなるペーストを手作業で丁寧に塗布していく。
水平に並べられた2枚のディスクが特徴のパノラマデイト表示は、24時ちょうどに切り換わり、視認性に優れている。自社製キャリバー95で初めて採用されたこの機構は3時位置に配置されており、日付はケースサイド4時位置にある小さなボタンで修正する。

ケースは作り込みが秀逸である。引っかかりがどこにもない、完璧な平滑面を実現している。無反射コーティングのサファイアガラスが使用されたケースバック からは、手巻きキャリバー58‐01を存分に堪能することができる。ムーブメントはケースとジャストサイズで設計されているので、ホルダーリングは不要 だ。ムーブメントを見るとすぐに、香箱、パワーリザーブ表示のための遊星歯車機構を備えた巻き上げ車、ゴールドシャトンを配した3/4プレート、また手彫 りエングレービングを施したテンプ受けなどが目に飛び込んでくる。
これらの特徴は、アルフレッド・ヘルヴィグの時代にグラスヒュッテで作られたマスターピースや、グラスヒュッテ・アンクル・クロノメーター、あるいはポ ケット・クロノメーターなどの様式を受け継ぐものである。グラスヒュッテ・オリジナルのインターナショナルセールスマネージャー、ディタ・パハナー氏は、 バーゼルワールドで我々に次のように語ってくれた。

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伝統的なマリン・クロノメーターのスタイルを踏襲する文字盤では、パワーリザーブ表示が12時位置に、スモールセコンドが6時位置に配されている。“ポワレ型”の青焼き針とポリッシュ仕上げの袴座、そしてグラスヒュッテ・オリジナル独自のパノラマデイト表示が、外観を完成させている

時刻合わせはとても簡単

「キャリバー58‐01は、歴史的なポケット・クロノメーターとデッキウォッチの技法に則って設計されました。直径35mmという大型手巻きキャリバーは、リスト・クロノメーターやパイロットウォッチ用に開発されたのです。ムーブメントの設計時には、3/4プレートや構成部品の仕上げ作業、また表示エレメントの配置など、グラスヒュッテの伝統を重視しました」
このように、セネタ・クロノメーターの伝統的な意匠やムーブメントの仕上げは完璧と言っても過言ではない。ただ、重厚なダブルフォールディングバックルだけは、調和の取れた全体像を少々損なっている感がある。ソリッドゴールドでできたバックルは高級感があり、その上、ストラップの長さを調整することもできるのだが、残念ながら取り扱いが非常に面倒である。サイドにあるボタンで短い方のバックルを閉め、その後で長い方のバックルを閉めようとすると、短い方が開いてしまうのだ。そのため、時計を着ける際はいつでも、バックルの扱いに時間がかかってしまう。シンプルなフォールディングバックルの方がよい解決策ではなかっただろうか。
正確さを追求したセネタ・クロノメーターで重視されているのは、高い精度だけではない。キャリバー58‐01は、時刻合わせにおいても新たな道を切り開くべく設計されている。独自の秒針ゼロストップ機構は、まさに新機軸と呼ぶにふさわしい。

時刻合わせを行うためにリュウズを第1ポジションに引き出すと(リュウズにはひとつのポジションしかない)、時刻を表示するエレメントが停止し、秒針がゼロの位置にジャンプして戻る。秒針がゼロで止まっている間、分針は〝見えざる手〟によって、ひとつ前あるいはひとつ先のミニッツインデックスに移動する。ここで時刻を合わせるためにリュウズを回すと、分針を分刻みで動かすことができる。つまり、秒針がゼロに位置しているときに、分針が2本のミニッツインデックスの中間地点で止まる恐れがないように設計されているのだ。時報に合わせて素早く簡単に修正したい場合には、特に便利な機構である。つまり、リュウズを引き出し、時報がひとつ先の分まで進むのを待ち、リュウズを再び押し込む。これだけで、セネタ・クロノメーターは正しい時刻で再び時を刻み始める。これに比べると、通常の時計では、時刻合わせにもっと手間がかかる。まず、秒針がゼロに到着するまで待たなければならない。そして、秒針がゼロを通過する瞬間に素早くリュウズを引き出し、分針を正確にひとつ先のミニッツインデックスに合わせ、時報がゼロになったと同時にリュウズを押し込まなければならないのだ。
このメカニズムは、一体どのように機能するのだろうか。リュウズを引き出した状態での秒針ゼロストップ機構を示した図をもとに、考えてみよう。通常の三針時計の場合、時刻を合わせるときにリュウズを回すと、伝え車を介して二番カナが回転する。二番カナは常に、日ノ裏車を経由してツツ車とかみ合った状態になっている。時針と分針の動きが連動しているのはそのためだ。つまり、分針が45分を指していれば、時針もふたつのアワーマーカーの間で4分の3進んだ場所にあることになる。ただし、この理論は秒針と分針の動きには当てはまらない。二番車と二番カナがスリップして回るため、秒針への連結が解除されるからだ。故に、秒針がゼロを指していたとしても、分針がミニッツインデックスの中間地点を指していることもありうる。

グラスヒュッテ・オリジナルのエンジニアは、この問題を解決する策を考案した。秒針がゼロの位置にある場合は、分針が必ずインデックスを指す方法だ。従来のように、二番カナがスリップする構造とは異なり、セネタ・クロノメーターではロックリングに2個の爪がかみ合うことで、二番真に対して二番車が回転する仕組みになっている。2個の爪は、絶えず動力を受けながら、ロックリングに刻まれた60個の歯と正しくかみ合うように配置されている。二番車の機構(9)は、三番車の機構(8)にある三番カナによって駆動される。三番車の機構は二重構造になっており、スプリングあるいはディスクスプリングを用いたフリクションクラッチによって、片方の三番車が二番車の機構と連結し、もう1枚の三番車には輪列からの動力を伝える役割がある。駆動用の三番車はカナを介し、同じく二重構造になっている四番車の機構(7)に動力を伝える。四番車は、一方が輪列からの動力を伝えるためにガンギ車と連結しており、もう一方は二番車へと続く三番車の機構に連結している。これら2枚の四番車は、フリクションクラッチによって接続している。四番車の機構の中で分表示と連関している部品には、秒を表示する役割があり(秒針軸)、秒針をゼロに戻すハートカムは、ここに取り付けられている。リュウズが押し込まれた状態では、おしどり(2)によってリセットカム(3)とゼロリセットレバー(4)の歯がかみ合い、四番車のハートカムから解除される。

リュウズを引き出すと、おしどりの歯がリセットカムを回転させ、リセットカムとゼロリセットレバーの歯が解除されることによってゼロリセットレバーがハートカムの方向へ押され、秒針が取り付けられている四番真がゼロのポジションに動いて、ここで固定される。ゼロリセットレバーは同時に、ハートカムが作動領域に達する直前にブレーキレバー(5)を解除する。解除されたブレーキレバーはさらに、テンプとムーブメントを止めるためのブレーキスプリング(6)を解除する。二番車の下部機構は、秒針ゼロストップ機構によって三番車の機構に固定される。
ここで、時刻合わせを行うためにリュウズを回すと、二番カナが正確にかみ合いながら二番車の方へと動き、分を任意に合わせることができる。ハートカムには、弾力のあるゼロリセットレバーによって、一定以上のスプリング力がかからないようになっているが、四番車の機構を損傷することなく、秒針が確実にゼロに戻るようにスプリング力を調整する必要がある。リセットカムとゼロリセットレバーには特別な形の歯が切られており、ゼロリセットレバーに溜められたスプリング力によって発生するトルクは、この歯があるためにおしどりには伝達されないようになっている。その結果、巻き真(1)とリュウズには力がかからず、時刻合わせの際は問題なく回すことができる。リュウズを押し込み、それによって巻き真が停止位置になると、おしどりがリセットカムを動かす。リセットカムとゼロリセットレバーの歯がかみ合うと、ゼロリセットレバーはもとの位置に戻る。すると、ゼロリセットレバーは四番車のハートカムを解除し、同時にブレーキレバーもゼロリセットレバーによって停止位置に移動する。こうして、テンプを押さえていたブレーキスプリングが外れてテンプが解除され、ムーブメントは再び動き出す。三番車の機構と四番車の機構が二重構造になっていることから、秒針と分針は寸分のずれなく始動する。

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ドイツ工業規格8319に準拠したドイツのクロノメーター検定
テューリンゲン州測量校正局の出先機関であるクロノメーター検定所、DKDドイツ計量検定所の計量検定研究室(DKD-K-09801)は、グラスヒュッテにあるザクセン州測量校正局との協力の下、15日間にわたる精度試験を実施している。C.O.S.C.(スイスクロノメーター検定協会)の検定基準との違いは、ケースに入れずにムーブメントだけを5姿勢でテストするのではなく、ケーシングした状態でテストすることである。ドイツ検定基準のその他の特徴は、試験対象となる個体すべてが秒単位で正確に時刻合わせできなければならないことである。日差は、全姿勢でマイナス4秒からプラス6秒の間でなければならず、平均日差は2秒、最大日差は5秒を超えてはならない。測定は、湿度50パーセントで気温を23℃、8℃、38℃にした環境で行われる。24時間経過したら、それぞれ日差を測定し、ゼンマイを再度巻き上げる。

精度安定試験では理想値との差が限りなくゼロに近かった

精度においても、セネタ・クロノメーターは十分期待に応えてくれた。歩度測定器を使用し、フルに巻き上げた状態でテストした場合は、6姿勢のすべてでほとんど日差が観察されなかった。3時左の姿勢でマイナス1秒/日、文字盤上でプラス1秒/日が観察されただけで、他の4姿勢ではゼロという理想値を達成した。
クロノスドイツ版編集部は、香箱を半分しか巻き上げていない状態でもテストを試みたが、ここでもやはり、2姿勢でプラス2秒/日、1姿勢でマイナス1秒/日、3姿勢でゼロという結果を得ることができた。さらに、実際の着用テストでセネタ・クロノメーターが見せた精度は、クォーツウォッチと比肩するものであった。もちろん、この卓越した精度には、輪列全体が摩擦を抑えた構造になっていることや、大型のチラネジ付きテンプとブレゲ式ヒゲゼンマイを採用していることも大きい。ちなみに、グラスヒュッテ・オリジナルはブレゲ式ヒゲゼンマイをプレシジョン・エンジニアリング社(Precision Engineering AG)から購入している。スイスのノイハウゼン・アム・ラインファルを拠点とするモーザー・グループ(Moser Group AG)の子会社である。分針がレイルウェイ分目盛りの上を正確に動き続けることも、ムーブメントの高い精度と同じように重要な要素だ。
秒針と分針の、運針における相関関係は、この上なく精密である。これはまた、どれほどの綿密さをもって文字盤を製造し、針をセットしたか、また357もの部品点数から成るメカニズムをいかに設計したかを物語っている。

■スペック

製造者:グラスヒュッテ・オリジナル
Ref.:58-01-01-01-04
機能:時、分、秒(ストップセコンド仕様)
ムーブメント:キャリバー58-01、58石、スイス式レバー脱進機、チラネジ付きテンプ、ブレゲ式ヒゲゼンマイ(プレシジョン・エンジニアリング社製)、2万8800振動/時、耐震軸受(インカブロック使用)、拘束角53°、スワンネック型緩急調整装置、シングルバレル、パワーリザーブ約45時間、部品点数357個、直径35mm、厚さ6.47mm
ケース:18Kソリッドゴールド製スリーピース構造、5箇所ネジ留め式サファイアガラス製ケースバック、リュウズ、日付修正ボタン、両面無反射コーティングを施したサファイアガラス、5気圧防水
ストラップとバックル:アリゲーターストラップおよびコンビ仕上げのゴールド製ダブルフォールディングバックル

精度安定試験 (日差 秒/日及び振り角)
フル巻き上げ時/半巻き上げ時
文字盤上:+1/+2
文字盤下:0/0
3時上:0/-1
3時下:0/+2
3時左:-1/0
3時右:0/0
最大日差:2/3
平均日差:0/+0.5
平均振り角:
水平姿勢:303°/283°
垂直姿勢:277°/258°

サイズ:直径42mm、厚さ12.3mm、総重量164g
価格:328万1000円
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

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