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ジャガー・ルクルト/マスター グランド ウルトラスリム(1/1) 2009年09月号(No.24)

JAEGER-LECOULTRE/MASTER GRANDE ULTRA SLIM

自動巻きのエレガンス
文字盤の構成要素を極力省き、シンプルかつエレガントな時計を作ることは決して簡単な作業ではない。ジャガー・ルクルトは確かな見識と工夫によって、見事にそれを成し遂げている。

point

・古典的な美しいデザイン
・非常に薄く見える
・秀逸な自社製ムーブメント

point

・暗所では時刻が確認できない

クロノス評価

ストラップとバックル(最大10pt.):8pt.
操作性(5pt.):5pt.
ケース(10pt.):9pt.
デザイン(15pt.):13pt.
視認性(5pt.):4pt.
装着性(10pt.):9pt.
ムーブメント(20pt.):17pt.
精度安定性(10pt.):8pt.
コストパフォーマンス(15pt.):13pt.
合計:86pt.

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自社製キャリバー896は、フリースプラングテンプやローターにセラミックス製のボールベアリングを採用し、機能性を向上させた素性の良いエンジン。ポリッシュされたブルースクリューのネジ頭やコート・ド・ジュネーブが施されたブリッジなど、装飾も美しい。

極薄ケースと思わせる設計技術の妙味

時計におけるエレガンスとは、まさに引き算の芸術である。これを理解するのは簡単だ。優美な品格を損なうことなく、日付表示を搭載することがデザイン上、可能であったかを想像すればよい。日付が実用的なことは周知の事実だが、日付窓ひとつあっただけでも文字盤の無垢な美しさに傷をつけかねないのである。
これを証明するのが、ジャガー・ルクルトのマスター・グランド・ウルトラスリムである。スモールセコンドを搭載したクラシカルな文字盤配分においては、美学的要素を多少でも犠牲にしなければ、日付表示を組み込むことはできない。ポインターデイトでさえ、美観を損ねてしまうだろう。

まずは顔立ちを見よう。ケース直径40のグランド・ウルトラスリムはその恩恵で文字盤も広い。しかし、ゴールドプレート仕上げで三面にファセットを施したクサビ形インデックスと、6時位置に配置された大型のスモールセコンドによって、間延びを感じさせないように注意深く配慮されている。また、ドーフィン型の時分針は、片側をヘアラインに、もう一方の面をポリッシュで仕上げることによってファセットを強調。文字盤より一段低くなったスモールセコンドサークルとともに、表情に立体感を与えている。

エレガントな時計の条件として、文字盤構成要素の少なさとともに重要なのが厚さだ。思えば、ジャガー・ルクルトは、超薄型時計を作ることにかけては長い伝統を持つメゾンである。例えば、創始者の孫であるジャック・ダヴィド・ジャガーが1907年に完成させたポケットウォッチ用キャリバー145は厚さがわずか1・38㎜しかなく、当時はもちろん、今日でも非常に薄い部類に入る。94年には腕時計用に、厚さが1・85㎜の手巻きキャリバー849が開発され、このムーブメントを搭載したマスター・ウルトラスリムはケース厚がわずか4・2㎜しかない。今回のテストモデルであるマスター・グランド・ウルトラスリムは、マスター・コントロールに搭載される自動巻きキャリバー899をベースに開発された、キャリバー896を積んでいる。日付表示機能を省略したとはいえ、センターセコンドをスモールセコンドに変えたことで、キャリバー899よりも厚みが0・68㎜増しており、厚さは3・98㎜となる。同社の歴史と比べるまでもなく、汎用キャリバーであるETA2892-A2よりも厚みのあるこのキャリバーは、もはや超薄型とは呼べないだろう。ケースの厚さも8・62㎜あり、機能を考えれば決して際立った薄さではない。しかし、このモデルはスペックの数値ほど厚みがあるようには感じない。なぜだろうか。
その秘密は、ケースの精巧な設計技術によるところが大きい。このモデルでは、ケースサイズに比べ、ムーブメントがとても小さなことを逆に利用して、ケースバックから胴に向かって傾斜を持たせているのである。横から見ると、スリムに絞られた側面しか見えないので非常に薄く見える仕組みなのだ。こうした努力によって、平均的なケースの厚みを持っているにもかかわらず、マスター・グランド・ウルトラスリムは極めて薄い印象を手に入れ、エレガンスをまとっているのである。

このようなケース造形の妙味は随所に見ることができる。長いラグは先端からキャラクターラインを入れることで、より細く、そして立体的になった。またリュウズは2段構造にすることで、スリット部分が主張しすぎて全体のバランスを崩すことを抑えている。

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引き算の美学を体現したシンプルな文字盤。構成要素は少ないが、クサビ形のアプライドインデックスや、文字盤から一段下げ、さらに立体的なドットを配置した大型のスモールセコンドによって、表情に間延び感が出ないよう配慮されている。

美しさと高い機能性を兼ね備えた心臓部

操作性と装着性はどうだろう。このモデルのリュウズは小振りではあるが、引き出すのも回転させるのも不自由は感じなかった。またストップセコンド機能が付いているので、時刻合わせも完璧に行うことができる。ベージュの文字盤によくマッチするブラウンのクロコダイルストラップはしなやかで、時計の腕馴染みも良い。コントラストに富んだ文字盤は視認性が高いが、夜光塗料がまったく使われていないため、暗所では時刻確認ができない。

時計を裏返すと、トランスパレントバックを通して美しい心臓部が現れる。ペルラージュ模様の地板、コート・ド・ジュネーブを施したブリッジ、外周が22Kゴールドのローター、ポリッシュで仕上げられたブルースクリューのネジ頭など見所はたっぷりだ。エッジの面取りとポリッシュ仕上げにまだ改善の余地がありそうだが、その代わりに高級時計ならではの特徴を見出すこともできる。バランスウェイトで微調整を行うフリースプラングである。これにより、ヒゲゼンマイは2本のヒゲ棒で伸縮する際の動きを規制されることなく自由に振動し、長時間の安定した精度を実現することができる。また、テンワはグリュシデュール製で、ローターのボールベアリングにはセラミックス製のボールが採用されていることも付け加えておきたい。

このモデルが搭載するキャリバー896は、242個のパーツから構成されており、これはベースとなった日付表示付きセンターセコンドのキャリバー899より23個も多い。もちろん、この数字で精度を判断することはできない。いつものように、歩度測定器で計測をしてみよう。姿勢差による最大日差は4秒と、実に優秀だ。平均日差もプラス4・3秒で、十分な実力を持っているといえるだろう。

総合的に見て、この時計には十分な価値を見出せる。確かにゴールドモデルといっても、シンプルな機能ながら142万8000円という価格は安くはない。しかし、フリースプラングとグリュシデュール製テンワを搭載した自社製キャリバー、卓越したディテールがもたらすエレガントな佇まいは、決してこの時計のコストパフォーマンスを下げることにはならないはずだ。、これを難点と捉えるか否かは、ユーザーの判断に任せたい。

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ダークブラウンのクロコダイルストラップは、テストモデルに選んだピンクゴールドのケースとベージュの文字盤にとても良く似合う。しなやかな手触りで腕への当たりも心地よい。

◎スペック

製造者:ジャガー・ルクルト

Ref.:1352420

機能:時、分、秒(ストップセコンド仕様)

ーブメント:自動巻きキャリバー896、直径26.6、厚さ3.98、2万8800振動/時、34石、耐震装置(KIF使用)、フリースプラングテンプ、グリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約43時間

ケース:18KPG製、4カ所ネジ留めされたサファイアクリスタル製トランスパレントバック、5気圧防水
ストラップとバックル:クロコダイルストラップおよび18KPG製フォールディングバックル

精度安定試験(日差 秒/日、振り角)
文字盤上:+7
文字盤下:+6
3時上:+3
3時下:+4
3時左:+3
3時右:+3
最大姿勢差:4
平均日差:+4.3
平均振り角:水平姿勢/290° 、垂直姿勢/250°

サイズ:直径40、厚さ8.62、総重量77g

価格:142万8000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

>>ジャガー・ルクルトのモデル一覧はこちら

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