【86点】ジャガー・ルクルト/マスター グランド ウルトラスリム

FEATUREスペックテスト
2009.09.03

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引き算の美学を体現したシンプルな文字盤。構成要素は少ないが、クサビ形のアプライドインデックスや、文字盤から一段下げ、さらに立体的なドットを配置した大型のスモールセコンドによって、表情に間延び感が出ないよう配慮されている。

美しさと高い機能性を兼ね備えた心臓部

操作性と装着性はどうだろう。このモデルのリュウズは小振りではあるが、引き出すのも回転させるのも不自由は感じなかった。またストップセコンド機能が付いているので、時刻合わせも完璧に行うことができる。ベージュの文字盤によくマッチするブラウンのクロコダイルストラップはしなやかで、時計の腕馴染みも良い。コントラストに富んだ文字盤は視認性が高いが、夜光塗料がまったく使われていないため、暗所では時刻確認ができない。

時計を裏返すと、トランスパレントバックを通して美しい心臓部が現れる。ペルラージュ模様の地板、コート・ド・ジュネーブを施したブリッジ、外周が22Kゴールドのローター、ポリッシュで仕上げられたブルースクリューのネジ頭など見所はたっぷりだ。エッジの面取りとポリッシュ仕上げにまだ改善の余地がありそうだが、その代わりに高級時計ならではの特徴を見出すこともできる。バランスウェイトで微調整を行うフリースプラングである。これにより、ヒゲゼンマイは2本のヒゲ棒で伸縮する際の動きを規制されることなく自由に振動し、長時間の安定した精度を実現することができる。また、テンワはグリュシデュール製で、ローターのボールベアリングにはセラミックス製のボールが採用されていることも付け加えておきたい。

このモデルが搭載するキャリバー896は、242個のパーツから構成されており、これはベースとなった日付表示付きセンターセコンドのキャリバー899より23個も多い。もちろん、この数字で精度を判断することはできない。いつものように、歩度測定器で計測をしてみよう。姿勢差による最大日差は4秒と、実に優秀だ。平均日差もプラス4・3秒で、十分な実力を持っているといえるだろう。

総合的に見て、この時計には十分な価値を見出せる。確かにゴールドモデルといっても、シンプルな機能ながら142万8000円という価格は安くはない。しかし、フリースプラングとグリュシデュール製テンワを搭載した自社製キャリバー、卓越したディテールがもたらすエレガントな佇まいは、決してこの時計のコストパフォーマンスを下げることにはならないはずだ。、これを難点と捉えるか否かは、ユーザーの判断に任せたい。