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クロノスイス/レギュレーター(1/1) 2006年09月号(No.06)

CHRONOSWISS
REGULATEUR

長年愛顧されているブランドイメージ

文:ヴィトルト・A・ミヒャルツィク
写真:金沢文春
翻訳:市川章子

クロノスイスの記念すべき第一号モデル「レギュレーター」は、登場から早くも19年が経過した。ブランドの古株として今なお愛されるその風貌は、古典的な雰囲気に包まれている。

point

・古典に範を得た考え抜かれたデザイン
・最高レベルの仕上げ加工
・独占使用のオールドストックムーブメントを搭載

point

・精度が並み程度
・夜間の視認性

クロノス評価:

・ストラップとバックル(最高10ポイント) 9pt.
・操作性(5) 3pt.
・ケース(10) 9pt.
・デザイン(15) 14pt.
・視認性(5) 4pt.
・装着性(10) 7pt.
・ムーブメント(20) 14pt.
・精度安定性(10) 7pt.
・コストパフォーマンス(15) 14pt.

合計81pt.

ベースキャリバーのエニカ165はクロノスイスが独占使用するデッドストックムーブメント。C.122では現代的な自動巻きにモディファイされている。ガラスの裏蓋を外さないと見えないような、ムーブメント固定のネジすら磨かれているなど、仕上げに一切の妥協はない。

クラシカルに知る時間

 自分の作品が大当たりするというのは格別爽快な気分に違いない。レギュレーター表示の腕時計で一躍人気を博したクロノスイスの“作者”、ゲルト・リュディガー・ラングもその種の気分を味わったうちのひとりだ。
 レギュレーターとは、かつて天文台や時計工房で正確な時刻を示すものとして使用されていた精密時計である。1950年代にはすでにレギュレーター表示の腕時計が登場していたが、1987年、ラングもこの大型クロックのデザインに範を得て、ブランド初モデルである腕時計を発表した。その名も「レギュラトゥール(Regulateur)」。いかにもフランスの香りが漂うが、これは時計製作の豊かな伝統を誇るフランス語圏の、スイス・ジュラ山脈地方のへのオマージュなのだ(注:日本では「レギュレーター」と英語式のネーミングが用いられている)。

 第一弾はユニタスの手巻きキャリバーを搭載した限定品だった。この腕時計は驚くべき早さで完売になり、ラングは手巻きに続くバリエーションとして自動巻きバージョンを発表する。以来、今日に至るまで、ミュンヘンブランド・クロノスイスの看板商品として好調な売れ行きを見せている。また、このモデルの人気により、レギュレーター表示の腕時計を扱うブランドが増えたのも事実だ。

時計作りの伝統に則った、クラシカルウォッチ。

 発表から早くも19年経過した2006年の今も、このデザインの影響力は失われていない。明確に区分けされたスモールセコンドとスモールアワー、そしてセンター分針は、やはりインパクトがある。造形の特徴は、保守的、古典的、もしくは堅実という言葉でも表すことができるだろう。クロノスイスのデザインはすべて、時計製作の伝統に身を捧げたようなスタイルといえる。今回のテストモデル「レギュレーター」の各ディテールも、ラングの時計の歴史についての見識の高さがうかがえる仕上がりだ。それは19個のパーツから成るケースにも表れている。ステンレススチールのボディはぴったりと組み合わされ、キズ見を通して見ても鋳造のワンピースケースかのようにきっちりと仕上がっている。パーツ間には、それと分かるようなはっきりした継ぎ目はなく、どこから見てもなめらかで美しい。スクリューバックの裏蓋を見て、ようやくかすかに接合部が判別できるほどだ。

 シリンダー形のケースは上下にコインエッジリングが据えられ、玉ネギ形リュウズとともにゆったり拡散する印象を与える。そこにビス留め式のラグが堂々とした風格を添えている。バネ棒とは異なり、ストラップをより確実に取り付けることができ、それでいてフレキシブルに動くこのシステムは、クロノスイスの特許によるものだ。
 ケース上下のリング、リュウズ、ラグのビスはポリッシュ、その他の部分はすべてサテンで、メリハリのきいた仕上がりになっている。ポリッシュ、またはサテンのどちらか一方だけの加工では平坦な印象になることもあり、コンビでは部分的に妙に浮いて見えたりもしがちだが、無理なくきれいにまとまっているのはクロノスイスならでは。このように神経質なまでに徹底的に考え抜かれた処理の仕方ひとつ取っても、ブランドが成功した理由が自ずと知れる。

 細部に凝っているのはケースだけではない。文字盤上ではポワール形(梨形)の時針をはじめ、それぞれ特徴的な分針、秒針が絶妙な景観を作り上げている。このレイアウトは19世紀中期に流行したスタイル。これを見ると、クロノスイスのモデルが時計デザインの歴史に深く結びついていることが分かる。そのまま見てもエレガントさが伝わるが、針もキズ見を通して見ると、より魅力的なことが分かる。ブルースチール仕立てのそれぞれの針はほっそりと繊細で、先端にまで光沢が行き渡るほど丁寧に磨き上げられている。針留めも目玉状のパーツが華を添え、我々の目をさらに楽しませてくれる。

 これらの針を受け止めているのが古典的な文字盤だ。ローマンインデックスの時表示とアラビックインデックスの分と秒の表示はレイルウェイトラックと相まって、美しいアンサンブルを見せている。プリントもパーフェクトだ。しかしながら、文字盤の仕上がりに完全に満足というわけではない。というのも全体が均一にフラットに仕上がっているため、かなり平坦な印象で、生き生きした表情にやや欠けている。例えばスモールセコンドを一段低くしたり、インデックスの塗りに厚みを出して段差をつけると、味わいはさらに深みを増すように思われる。

文字盤の読み取りは一瞬戸惑うものの、すぐに慣れる。磨き上げられたポワール形(梨形)針、クラシカルなダイアルデザインは、美しいの一言である。ケースの表面加工は鏡面とマットが交互に組み合うバランスの良い仕上がり。クロノスイス伝統のコインエッジリングや玉ネギ形リュウズも、全体の存在感を高めている。

細部にわたる妥協なき仕上げが、絶妙なバランスを生み出す。

 レギュレーターダイアルの視認性についてはとやかくいうべきではないだろう。当然ながら、時・分・秒がすべて分離したデザインは、レギュレータークロックをふだん見慣れていない限り、手首の上で読み取るには慣れが必要だ。だが配置の違いに一瞬は戸惑うものの、すぐになじんで判別できるようになる。しかしそれも明るい場所だけの話。あくまで古典的であって夜光塗料は使用されていない。

 さて肝心の精度だが、お借りしたテストモデルでは手本としたクロックに匹敵するというところまではいかなかった。検査器での結果は、姿勢差で11秒、平均日差は7・3秒を記録した。許容範囲内のデータではあるが、着用テストでの平均値同様、最良の域には達していない。週に一度は時報などで針合わせすることをお勧めしたい。もっともストップセコンド仕様ではないため、秒単位で正確な針合わせは難しいかもしれない。振り角も同様に、完全に満足がいくところまでは達しておらず、もうひと息の落ち着きが欲しいところだ。しかし、文字盤を上に平置きした状態では300度を超え、力強さを証明した。

 ムーブメントは3Hzで脈打つ。今どきの最新式ムーブメントと比べるとずいぶんゆったりとしているが、クラシカルな風貌の時計にはふさわしいテンポだろう。一連の動きを司るのはキャリバーC.122である。エニカのキャリバー165をモディファイしたムーブメントだ。エニカ165は審美的観点よりも産業的な利便性を強く打ち出した構造ではあるが、1970年代の革新的ムーブメントのひとつに挙げることができる。ひと頃はエニカといえば、イコール165というくらい、パンとバターのように切っても切れない存在だった。
 しかしクォーツクライシスが訪れて、この機械式キャリバーの設計図にも大きくバツ印がつけられたような事態となり、エニカは操業終了となったのだった。そしてこのエニカキャリバーのストックはひとまとめにラングの手に移り、クロノスイスのさまざまなモデルのベースに使用されてきた。オールドストックムーブメントを多く取り入れてきた同社のラインナップの中でも、エニカ165は他社モデルには搭載されておらず、独占使用のキャリバーなのだ。

 オリジナルは中三針だが、「レギュレーター」では時・秒がオフセンターに作り替えられている。モディファイされているのはそればかりではない。多くの箇所に技術的な改良が加えられ、化粧直しが施されて、クロノスイスの作品として生まれ変わっている。例えば元は両方向巻き上げ式だったローターは新たに設計され、片方向巻き上げ式に変更されている。技術的なアップデイトとともにルビーも6点追加され、C.122は30石となっている。シースルーバックのガラス越しにムーブメントを見ると、ブリッジのコート・ド・ジュネーブと地板のペルラージュの取り合わせも無理なくまとまっている。そこへ美しく磨かれたネジと歯車が、競わんばかりに輝きを放っている。

ロゴ入りの尾錠はバネ棒を使わないビス留めスタイル。時計全体のクラシカルなムードを高めている。

長年の人気を支えたコンセプトは、これからも不変。

 ガラスの裏蓋を外すと、すぐには目に入らないようなムーブメント固定のためのネジすらも光沢鮮やかに磨き上げられている。パーツの仕上げの工程では、一部を簡略化するようなことなくすべてスタイリッシュに作られていることがよく分かる。ゴールドのスケルトナイズローターも、動力源という役割の武骨さを感じさせないほど美しい。
ケース直径38mmというサイズも今やほとんど古典的といっていいだろう。手首が太くがっしりした人であればもの足りない感じがあるかもしれないが、大抵の人には77gという重さの心地よさは忘れ難い印象を残すはずだ。クロコダイルストラップも丁寧に仕上げられ、手首にすんなりなじむ。尾錠に入れられたロゴも心憎い。こんなところにまで技術の確かさが発見できるのはやはりうれしい。

 36万7500円という価格は飛びつきやすい金額ではないかもしれないが、ディテールの細部にまで手をかけた仕上げの高さと、良い意味でのアナクロニズムを目と体で感じてしまうと、理に適っていると思える。このモデルを所有するということは、あらゆる点で他にはない良さを味わえるということなのだ。
 「レギュレーター」は発売から19年経った。人間でいえばティーンエイジャーに終わりを告げる時代にさしかかったが、20代に突入するこれからもまだまだ新鮮さを保ち続けるだろう。時計技術が急速に進歩している昨今、表情は少々の化粧直しで変わることがあるかもしれないが、大筋の部分はそのまま変わらないように思える。数多くの亜流がある中においても、このモデルは威光を保っている。今後もベースムーブメントのストックがある限り、カタログから消えずに存在し続けるだろう。

スペック

製造者:
クロノスイス:Munchen/Germany

Ref.:
CH 1223

機能:
時、分、秒(レギュレーター配置)
ムーブメント:C.122(自動巻き、ベースキャリバー:エニカ165)直径26.80mm、厚さ5.30mm、振動数2万1600/時、グルシドゥア・スムーステンプ(三叉アーム式)、平ヒゲゼンマイ(ニヴァロックス1使用)、耐震軸受(インカブロック使用)、マイクロメーター緩急調整システム、30石、パワーリザーブ約40時間

ケース:
SS製、サファイアガラス、シースルーバック(スクリュー式)、3気圧防水

ストラップとバックル:
クロコダイルストラップ、SS製尾錠(ビス留め式)

精度安定試験:
(日差 秒/日、振り角)
文字盤上 +10
文字盤下 +4
3時上  +2
3時下  +13
3時左  +8
3時右  +7
最大日差 11
平均日差 +7.3

平均振り角:
水平姿勢 295°
垂直姿勢 272°

サイズ:
直径:38.00mm、厚さ:10.50mm、総重量:77g

価格:
36万7500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

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