【90点】オメガ / スピードマスター ムーンフェイズ クロノグラフ マスター クロノメーター

FEATUREスペックテスト
2017.04.05

スピードマスター ムーンフェイズ クロノグラフ マスター クロノメーターを駆動するのは、最新の素材を駆使した革新的な自社開発ムーブメントである。

 オメガのスピードマスター ムーンフェイズ クロノグラフ マスター クロノメーターは、21世紀のスピードマスターである。機械式だが、時計に堅牢性、高精度、そして、高い耐磁性能を与えるハイテク素材が使用されている。にもかかわらず、ムーンフェイズとその色使いにより、この時計は決して未来のテクノロジーの権化ようには見えず、神話的と言っても過言ではない風格を備えている。

 今回のテストモデルでは、オメガの最新技術とムーンウォッチの伝統がひとつになっている。1957年に発表されたスピードマスターは、人類初の月面着陸という偉業に同行してからムーンウォッチと呼ばれるようになった。今日に至るまで、この時計はスピードマスター プロフェッショナルとして、アクリル製風防を備えるなど、初代モデルとほぼ変わらない外観を堅持している。手巻きキャリバー1861もオリジナルモデルのムーブメントをベースとするものである。このキャリバー1861をベースムーブメントとするムーンフェイズ搭載モデルも長らく供給されていたが、今は生産されていない。つまり、今回のムーンウォッチは、内部機構を刷新した後継機なのである。搭載ムーブメントは、スピードマスターの別モデルですでに知られているコーアクシャル脱進機を備えたオメガ自社開発キャリバー9300をベースとしている。伝統と最新技術がここでついに融合したのである。

 スピードマスターのすべてのモデル同様、ケースはリュウズガードを備えたアシンメトリカルなフォルムで、特徴的なタキメータースケールを持つ。今回のタキメータースケールはセラミックス製で、目盛りの部分には極めて硬いアモルファス合金のリキッドメタルが使用されている。ムーンフェイズ非搭載のスピードマスターに比べると、スピードマスター ムーンフェイズ クロノグラフ マスター クロノメーターは格段に上品な佇まいである。それには、ムーンフェイズ表示やサンブラッシュ仕上げを施した青文字盤、そして、ブルーのアリゲーターストラップが貢献している。あまりにも有名なツールウォッチから、スーツにも、セーターやシャツにも完璧にコーディネートできるスポーティーでエレガントな時計が生まれたのである。今回のムーンウォッチにはこの他にも、クラシカルな黒文字盤のモデル、ブラウンダイアルのバイカラーモデル、シルバー文字盤に緑色のベゼル、さらに、シルバー文字盤とワインレッドのベゼルを備えたホワイトゴールドモデルなど、数多くのカラーバリエーションが用意されている。その中で最も好印象だったのはやはり、青文字盤にブルーカラーのベゼルを備えたステンレススティールモデルだった。

 テストウォッチをより詳細に観察してみると、ムーンフェイズの月がまるで写真のようにリアルであることに気づく。ディテールが精密に再現されており、クレーターや谷まで認識することができる。倍率の高いルーペで見ても、網点やそれに類するものは見当たらないどころか、はるかにエキサイティングなものを見ることができる。ムーンウォッチの歴史を後世に伝えるべくオメガがムーンフェイズディスクに刻み込んだもの、それは、宇宙飛行士が月面に残したブーツの足跡である。人類初の月面着陸の写真で誰もが知る、あまりにも有名なシーンである。

 スピードマスター ムーンフェイズ クロノグラフ マスター クロノメーターのムーンフェイズが調整を必要とするのは10年経ってからである。ムーンフェイズは簡単なリュウズ操作で修正できるように設計されており、埋め込み式のプッシュボタンは装備されていない。リュウズを1段引き出した状態で時計回りに回すとムーンフェイズを1日先に送ることができ、反時計回りに回すと9時位置にある指針式日付表示が1日先に進む。