2020年 ブルガリ新作をまとめて紹介/「ブルガリ アルミニウム」「オクト フィニッシモ」 (8/27更新)

FEATURE2020年新作時計
2020.08.27

オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック

オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック

ブルガリ「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」Ref.SAP103295
自動巻き(Cal.BVL 388、ムーブメント厚さ3.50mm)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約52時間。サンドブラスト加工グレード5チタン(直径42mm、厚さ7.40mm)。30m防水。世界限定50本。2020年10月発売予定。予価1584万円(税別)。

 これまで5つの世界最薄記録を持つブルガリから、2020年8月26日、6つ目の世界最薄記録を成し遂げたモデルが発表された。その名も「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」。自動巻きクロノグラフにトゥールビヨンを併載した厚さ3.50mmのムーブメントCal.BVL 388を搭載し、ケース厚を7.40mmに抑えた薄さを追求した複雑時計だ。

 薄型の自動巻きクロノグラフといえば、昨年発表された「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」を思い浮かべるだろう。ブルガリ5度目の世界最薄記録を達成したGMT機能を併せ持つ自動巻きクロノグラフである。クロノグラフ機構の作動制御にコラムホイール、動力伝達に水平クラッチ(キャリングアーム式)を採用し、自動巻き機構にムーブメント外周に回転錘を配したペリフェラルローターを用いたこのクロノグラフは、厚さ3.30mmのムーブメントCal.BVL 318を搭載し、ケース厚はわずか6.90mmにとどまる。

 今年の新作は、GMT機構に替えて、よりいっそう複雑なトゥールビヨン機構を搭載。さらに、文字盤とムーブメントをスケルトナイズすることで、モダンな意匠と複雑機構を際立たせた野心作である。注目すべきは、いかにして大きなスペースを必要とするクロノグラフ機構とトゥールビヨンキャリッジをムーブメントに収めたのか、という点だ。

 シースルーバックからムーブメントを確認すると、このふたつのクロノグラフムーブメントの違いが見て取れる。最も大きな違いは、クロノグラフ機構への動力伝達にキャリングアーム式を採用していたCal.BVL 318に対し、Cal.BVL 388ではスイングピニオン式を採用している点だ。いずれもムーブメントに対して横方向に秒クロノグラフ中間車が移動することで動力を連結・解除する水平クラッチであるが、中間車に歯車よりも圧倒的に直径が小さなカナ(ピニオン)を使用するスイングピニオンは、クロノグラフ機構をコンパクトにまとめられる利点を持つ。ムーブメントの中心に置かれた秒クロノグラフ車(クロノグラフランナー)と、文字盤側から見て5時位置に配されたコラムホイールをつなぐV字型の中間車発停レバーに注目すると、中間車発停レバーの秒クロノグラフ車側の先端に秒クロノグラフ中間車にあたるカナが据えられているのが分かる。このカナが左右に振動(スイング)することで文字盤側6時位置のトゥールビヨンキャリッジの動力をセンターの秒クロノグラフ車に伝達しているのだ。この水平クラッチがスイングピニオン式と呼ばれるゆえんである。

ブルガリ オクト フィニッシモ

ブルガリ「オクト フィニッシモ」コレクションがこれまでに成し遂げた6つの世界最薄記録を持つ歴代モデル。左から2014年発表の「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」。厚さ1.95mmの世界最薄の手巻きフライングトゥールビヨンムーブメントCal.BVL 268を搭載。ケース厚5mm。2016年発表の「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」。ミニッツリピーター機構搭載ムーブメントとしては驚異的に薄い3.12mmのCal.BVL 362を搭載。文字盤のアワーマーカーとスモールセコンド外周に開口部を設け、ムーブメント側だけでなく、文字盤側の空間も利用してゴングの音を増幅する独創的なミニッツリピーター。2017年発表の「オクト フィニッシモ オートマティック」。市場に存在する自動巻き腕時計として世界最薄のケース厚5.15mmを実現。ムーブメント厚2.23mmの自動巻きCal.BVL 138を搭載。2018年発表の「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」。手巻きの「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」をベースに自動巻き化した世界最薄の自動巻きフライングトゥールビヨン。ケースの厚さは3.95mm。搭載するムーブメントCal.BVL 288の厚さは1.95mmで、手巻きフライングトゥールビヨンムーブメントCal.BVL 268と同じであるから驚かされる。2019年発表の「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」。水平クラッチ式の自動巻きクロノグラフとGMT機能を併載。厚さ3.30mmのムーブメントCal.BVL 318を搭載し、世界最薄のケース径6.90mmを実現。2020年発表の「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」。

 加えて、V字型の中間車発停レバーをトゥールビヨンキャリッジの上に重ねて、スケルトナイズされたムーブメントの意匠に巧みに組み込んでいる点も見事だ。さらに、センターの秒クロノグラフ車と文字盤側から見て3時位置にある30分積算車、コラムホイールにまたがって配されるL字型のレバーもモダンに肉抜きされ、ムーブメントデザインと絶妙に調和しているが、このレバーは一体化されたリセットハンマーである。秒クロノグラフ車と30分積算車に固定されているハートカムをこのリセットハンマーでたたくことで積算計を帰零させるのだが、それぞれの積算車にリセットハンマーを設けるのではなく、一体化してL型にまとめることで、リセット機構もコンパクトにまとめられている。

 こうしてムーブメントにスペースをつくり出すことで、ブルガリは十分に存在感のあるトゥールビヨンキャリッジを巧妙に薄型のクロノグラフムーブメントに組み込んでいるのだ。

 薄型化に関しては、自動巻きの回転錘をペリフェラル(周辺部にある)ローターとしてムーブメント外周に配することで中心部の重なりを排除し、さらに、リュウズの巻き真を廃することで、厚みを持たせることなくクロノグラフ機構(30分積算計)を収めるスペースを確保している。なお、巻き真の代わりにコンパクトな歯車を連結することで主ゼンマイの巻き上げと時刻合わせを可能にした。文字盤側の4時と5時の間の配されたウルフティース型の歯を持つ歯車が巻き上げと時刻合わせの切り替え車で、4時位置のプッシュボタン(ファンクションセレクター)を押すことで、この歯車を回して巻き上げと時刻合わせを切り替える。したがって、クロノグラフ機構を操作するのはCal.BVL 318同様、2時位置のプッシュボタンであり、スタート→ストップ→リセットを順次切り替えるワンプッシュクロノグラフである。

 これらペリフェラルローターもファンクションセレクターも、いずれも2018年に発表されたブルガリ4度目の世界最薄記録を持つ「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」ですでに搭載済みの機構だ。つまり、ブルガリ6度目の世界最薄記録をかなえた新作「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」は、これまで5回にわたって世界最薄記録を樹立してきたブルガリが、「オクト フィニッシモ」に注ぎ込んできた研究開発力と技術力、そしてよく練られたノウハウの上に築き上げられた最新の金字塔と言えるのだ。

 まさに、「オクト フィニッシモ」コレクションで追求してきた薄型ムーブメント自体を、たとえシンプルな3針モデルであってもコンプリケーションと位置付けてきたブルガリの成せる業にほかならない。

オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック
Cal.BVL 388
Cal.BVL 388
Cal.BVL 388
「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」が搭載するCal.BVL 388。ブルガリのキャリバーナンバーはムーブメントのパーツ数を表す。すなわち、このCal.BVL 388は388個の部品で構成されることを意味する。




ブルガリ アルミニウム

ブルガリ アルミニウム

(左)「ブルガリ アルミニウム」Ref.SAP103445
自動巻き(Cal.B77)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。アルミニウム×ラバー(直径40mm)。100m防水。2020年9月発売予定。31万5000円(税別)。
(中)「ブルガリ アルミニウム クロノグラフ」Ref.SAP103383
自動巻き(Cal.B130)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。アルミニウム×ラバー(直径40mm)。100m防水。2020年9月発売予定。45万5000円(税別)。
(右)「ブルガリ アルミニウム」Ref.SAP103382
自動巻き(Cal.B77)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。アルミニウム×ラバー(直径40mm)。100m防水。2020年9月発売予定。31万5000円(税別)。

 2020年8月26日、スイス・ジュネーブで開催された「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」の初日、ブルガリが時計愛好家の心を揺さぶる新作を発表した。まず注目すべきは、1998年に発表され、ラグジュアリーウォッチとしては予想外の素材、アルミニウムとラバーを外装に採用し、またデザインにおいても性別、年齢、時代にとらわれない、ジェンダーレスでタイムレスなデザインに果敢に挑み、時計業界に強烈なインパクトを与えた「ブルガリ アルミニウム」の新世代モデルだ。当時、ハイジュエラーとしてすでに確固たる地位を築き、世界的にも人気ブランドであったブルガリが、時計業界の常識を打ち破ったのだから、注目を集めないはずがない。

 ケースとブレスレットの素材に貴金属ではなく、アルミニウムを使用することで軽量化されることはもちろん、ゴールドでもなくステンレススティールでもない、時計業界にとって“新鮮なマテリアル”を用いることによって、ケース素材によって着用者の社会的な立場を規定させないボーダレスな“コード”を創出することをかなえた。

 加えて、ベゼルとブレスレットにブラックラバーを配し、さらにベゼルには大きくブランド名を刻むことで、ひと目で「ブルガリ」だと認識させるアイコン化も成し遂げた。第1世代の登場から20年以上を経た今なお、時計好きの記憶に「ブルガリ アルミニウム」がありありと刷り込まれていることからも、このモデルが時代を超えたアイコンと成り得たこと証明している。

アリタリア

1998年のバーゼル・フェアで発表された「ブルガリ アルミニウム」。そのローンチを記念して、ブルガリはイタリアのナショナル・フラッグ・キャリアのアリタリア航空と共同で、機体に巨大なブルガリ アルミニウムを描いたボーイング747を仕立て、1年かけて世界を飛行するプロジェクトを行った。その処女飛行はローマから、ブルガリ アルミニウム発表の場であるバーゼルへの空の旅であった。機体には“Bvlgari Aluminium flies with Alitalia”のメッセージが添えられていた。

 2020年の新世代ブルガリ アルミニウムは、かつての革新性に加え、この20年あまりでブルガリ グループが成し遂げたマニュファクチュールとしての成果が惜しむことなく盛り込まれている。

 最も象徴的なのが、かつては3針モデル、クロノグラフともに直径38mmであったのが、いずれも直径40mmに拡大された点だ。そのケースサイズに合わせてラグの形状も見直され、装着感が向上している。さらに、防水性もかつての日常生活防水から100m防水まで向上しているため、3針、クロノグラフを問わず、日常生活における着用シーンが大幅に広まった。今やケースとブレスレットの製造も自社グループで手掛けるマニュファクチュール、ブルガリの本領発揮といえる。

 さて、多くのユーザーにとって最も気になるのが、ケース素材に使用されるアルミニウム合金の耐久性に違いない。現時点において詳細は明かされていないが、リリースには「より耐久性を増し」たと明記されていることも報告しておく。

 今振り返れば、第1世代の「ブルガリ アルミニウム」は、貴金属を避けた素材使いといい、スポーティーなデザインといい、昨今、各時計メーカーが力を入れる「インフォーマルウォッチ」あるいは「マルチパーパスウォッチ」の先駆けであることは間違いない。

 その普遍性を武器によみがえった新世代の「ブルガリ アルミニウム」。2020年9月発売予定の実機をぜひ手に取って、現代のブルガリの総合力を確認していただきたい。

ブルガリ アルミニウム
ブルガリ アルミニウム
ブルガリ アルミニウム
ブルガリ アルミニウム





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