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デザインキング、ロレックス「デイトジャスト」(中編)(1/1)

ロレックスのアイコニックなデザイン要素である拡大レンズは、視認性を最大限に得るために開発された。メルセデス針が選ばれたのは、出来るだけ多くの蓄光塗料を載せることが出来るようにという理由からだ。デザインキング、ロレックス「デイトジャスト」の中編をお届けする。(前編を見る

Text by Jens Koch

 ロレックスは、ロレックスたらしめるデザイン要素の数々を最大限に活用している。ロレックスの現在のコレクションを見ても、デザインが多様化しているとは言い切れない。例えば、針はふたつの形状のみであり、ケースの形状も非常に似通っている。
 大きな成功を収めているふたつのモデル、サブマリーナーとGMTマスターとの違いは、回転式ベゼルの数字とGMT針だけである。シードゥエラーは基本的にサブマリーナーからサイクロップレンズを取り除いただけである。ディープシーは、シードゥエラーの派生バージョンであり、違いはそのサイズと文字盤を取り囲むリング、そして防水性能の向上だけである。ヨットマスターは同じ文字盤のレイアウト、針、ケースが採用されており、インデックスと回転ベゼルが際立っているが、文字盤とベゼルの色使いだけが異なる。エクスプローラーIIでさえ、他とは違うベゼルやタイムゾーン表示の針によって独自の位置を確立しているが、多くのデザイン的特徴を他のモデルと共有している。サブマリーナーのデイト表示無しのモデルについて付け加えると、7つのモデルそれぞれとの違いは、ディテールの僅かな違いのみである。上記に掲げた全てのモデルが、オイスター ブレスレット、メルセデス針、バーインデックスとサーキュラーインデックスを採用しているのである。そしてこれら7つのモデルがロレックスの売り上げの大部分を占めているのだ。

 興味深いのは、これらのデザイン要素全てが、実用する上で必要性があり、1950年代に考案されているという点だ。メルセデス針が採用されたのはできるだけ多くの蓄光塗料を塗布することができるからだ。蓄光塗料は液状で塗布された後に硬化させる。そのため針はできるだけ表面張力を保てる状態でなければならない。スケルトン仕上げが施された針の表面にできるだけ広い面積を確保するためには、蓄光塗料が載せられる面は分割される必要がある。そのため、ロレックスの時針の先端にある大きな「目」の部分は3本のバーによって3分割されており、そのためメルセデスのロゴを想起させる形となっているのである。

日付表示の視認性を高めるギリシャの神キュクロプスのようなサイクロップレンズは、ロレックスのほとんどのモデルに見られる特徴である。

新しいデイトジャスト 41には、クラシカルな3列のオイスター ブレスレットも用意されている。

 実用性、視認性や使い勝手の向上の例は他にもある。12のアワーマーカーのうち6つが円形のインデックス、3時、6時、9時位置はバーインデックス、そして12時位置に縦長の逆三角形を配すデザインは、サブマリーナーが1953年に発表されたときから採用されている。サイクロップレンズはロレックスのデザインに強く結びついた要素であり、視認性向上に貢献している。最初のGMTマスターに採用される1955年より前からデザイン要素として既に組み込まれていた。

 こういった要素によって、ロレックスはプロフェッショナル向けの時計メーカーとして人々に認識されている。その一例がダイバーズウォッチだろう。さまざまな特徴がひとつとなって調和し、すべてがひとつの目的を目指している。それが視認性の向上だ。そのためサブマリーナーやGMTマスターIIは「ツールウォッチ」のプロトタイプと呼ばれる。頑強で機能的であることを目指してデザインされたということが明確なのである。品質と価格は、ここ数年で着実に上がっている。プロフェッショナルなダイバーたちの厳しい要求に応えるため、ロレックスはヘリウムバルブ搭載のシードゥエラーを発表、その後3900メートルへの潜水を可能としたディープシーを世に送り出している。これらの高い防水性を持つモデルはがっしりとした外観を持ち、それによってよりプロフェッショナルな印象を与える。ロレックスの歴史による信頼性と、その判別しやすいデザイン要素によってダイビングや飛行用(GMTマスターII)、航海(ヨットマスター)、探検(エクスプローラーII)などさまざまな用途の時計を生み出すことに成功してきた。これらのモデルを見分けるとしたら、それは主に文字盤とベゼルのカラーリングに頼ることになるだろう。これはセンシティブな点になるが、多くのアイコニックなモデルを自社のコレクションに持つブランドは、そのモデルの販売は好調であっても、それを更に拡大していくことはほとんどせず、ダイバーズウォッチはダイバーズウォッチのまま、パイロットウォッチはパイロットウォッチのままで終わるのである。しかしロレックスは自社の明確なデザイン要素を多くの異なるモデルに採用することによって、ブランドにとっての認知度を幅広く獲得するに至っている。

さまざまなバリエーションを持つロレックスのエントリーレベルモデル、オイスター パーペチュアル。
「オイスター パーペチュアル 39」。Ref.114300。自動巻き(Cal.3132)。パワーリザーブ約48時間。SS(直径39mm)。100m防水。SSストラップ。54万円(税別)。

 ロレックスの創業者、ハンス・ウイルスドルフのデザインへの貢献度は高いものがあった。ウイルスドルフは結婚はしたが、子どもがいなかったため遺言で会社を財団へと遺贈したのだ。上場して株式が売買される会社と違い、ロレックスにとっては短期間での利益追求はあまり意味のないものであったため、常に長期的な視野で目標を置いてきた。徐々に進化したデザインが、その価値を維持するのに良い効果をもたらしたのである。例えばサブマリーナー自体に変化はないが、その販売価格は常に上昇し続けている。時計愛好家の中でサブマリーナーを売ろうと思った人がいれば、数年前に購入した時と同じ価格で購入してくれる人を探すのは容易であろう。これがロレックス成功の、もうひとつの秘密である。保守的な戦略によって、わずかな変更が多くの人の注意を引き付ける結果となっている。例えばヨットマスターのローズゴールドモデルが、2015年に初めてラバーストラップのを採用した際には、熱狂的な反応を引き起こした。

(続く)


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