復刻モデルの純度と手法 (後編)

FEATURE本誌記事
2019.04.25

2本のオールドモチーフに見るダイアル加工の同一性

2012年のオールドモチーフで一際目を惹いたのが、ナビタイマー系の最新鋭機「コスモノート・リミテッド」とスピードマスターの「ファースト オメガ イン スペース」であった。両者に共通するのは、ガルバニック(メッキ)処理のマットダイアル。しかしそのダイアルは、従来にはないニュアンスを備えるようになった。

吉江正倫、奥山栄一:写真 Photographs by Masanori Yoshie, Eiichi Okuyama
広田雅将、鈴木裕之(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota, Hiroyuki Suzuki (Chronos-Japan)
この記事は 2012年8月発売の9月号に掲載されたものです。

OMEGA SPEEDMASTER PROFESSIONAL “FIRST OMEGA IN SPACE”

ファースト オメガ イン スペース

オメガ スピードマスター プロフェッショナル “ファースト オメガ イン スペース”
1962年モデルの忠実な復刻作。しかしディテールは大幅に進化した。手巻き(Cal.1861)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径39.7mm)。日常生活防水。46万2000円。
問 オメガお客様センター☎03-5952-4400

1962年モデルとの違いが、非常に深いレリーフ。最近流行りのエッチングではなく、鍛造によるものだ。技術の進歩が、このミリタリー風の時計を高級時計へと昇華させた。

 プロフェッショナルユースの時計を祖とする「ナビタイマー・コスモノート」と「スピードマスター プロフェッショナル 〝ファースト オメガ イン スペース〞」。両者ともブラックメッキが施された、マットダイアルに特徴がある。

 スピードマスターのオリジナルがどうだったかは不明だが、少なくともシンガ社が製造したCK2998以降のダイアルは、メッキ処理のマット文字盤を持っていた。対してナビタイマー(含むコスモノート)のダイアルは、第一作からメッキであった。敢えてペイントではなくメッキを選んだ理由は、前者はペイントの剥がれを嫌ったため。後者は印字を明確に出すためだろう。ナビタイマーの精密な印字は、プリントではなくマスキングで得られたもので、メッキ以外では不可能だ。メッキは大量生産にも向いていたし、ペイントのように剥がれる心配も少なかった。反面、下地を荒らしてマット感を強めたり、深い黒を与えることは難しかった。ミリタリー風(含むプロフェッショナルユース)の時計が、決して高級時計になり得なかった理由である。

 しかし今年の両モデルは、黒いメッキダイアルを持ちながらも、従来にはないニュアンスを備えていた。具体的には、文字盤の表面を荒らし、マットな印象を強めたのである。とりわけスピードマスターの荒らし方は見事で、CK2998の文字盤が備えていたニュアンスをかなり忠実に再現している。

 この2モデルに限らず、今後、ブラックメッキのダイアルは、いっそう多彩な表情を備えていくだろう。つまりミリタリー調の再現モデルは、高級時計となり得る可能性を秘めるのだ。 (広田雅将)


BREITLING NAVITIMER COSMONAUTE LIMITED

ナビタイマー・コスモノート・リミテッド

ナビタイマー・コスモノート・リミテッド
自社製ムーブメントを載せた新型コスモノート。インダイアルの間隔が広がり、意匠も大幅に改善された。手巻き(Cal.02)。39石。パワーリザーブ約70時間。3気圧防水。限定1962本。76万6500円。
問 ブライトリング・ジャパン☎03-3436-0011
NAVITIMER COSMONAUTE LIMITED