ロレックス デイトナ、60年近くにわたる歴史を追跡(後編)

FEATUREWatchTime
2020.02.05

ロレックスのアイコニックなクロノグラフ、コスモグラフ デイトナ。前編では1963年に誕生したファーストモデルから、ポール・ニューマンダイアルのコスモグラフ デイトナの特徴、現在のオークション人気などを述べた。引き続き、後編をお届けする。

●「ロレックス デイトナ、60年近くにわたる歴史を追跡(前編)」
https://www.webchronos.net/features/41023/

Ref.6264

1970年のコスモグラフ デイトナRef.6264。ベゼルはアクリル製に回帰している。
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ロレックス デイトナ、進化の系譜

 あなたがもしポール・ニューマンダイアルのコスモグラフ デイトナを入手したいと考えているならば、注意を要する。犯罪者の手にかかれば普通のデイトナを"ポール・ニューマン"に改造するのは比較的簡単であるようだ。専門家によると、ポール・ニューマンダイアルモデル文字盤の偽物は、本物より多く出回っているということである。また、一見オリジナルのように見えても、実際にはさまざまなパーツを組み合わせて作り上げられているものもあるようだ。

 初期に作られた手巻きのデイトナには、バルジュー社製のムーブメントをベースとするキャリバー72系が搭載されている。ロレックスはこのキャリバーを全体的に手直しし、ブランド独自の衝撃吸収機構などを組み込んだ。だが、このキャリバー自体が大量生産されたものであるため、贋作も多い。贋作を作ろうとする者は、数百ドルほどで購入できる無名のクロノグラフの中に搭載されている、このムーブメントを市場で見つけてくるのである(大量生産されたムーブメントには、スペアパーツも見つけやすいという利点もある)。ムーブメントのバリエーションの違いは、綿密に精査して初めてそれがどういうものか明らかになる。そのため、デイトナと称するモデルは、定評あるオークションハウスやディーラーから入手すべきである。また、専門家に真正品か模造品かの鑑定を依頼する方法もある。

Ref.6265

ロレックス デイトナRef.6265は手巻きムーブメントを使用した最後のシリーズとなった。

 ロレックスは1965年のRef.6240のデビューと共に、ねじ込み式のプッシュボタンへと移行した。これによって、時計のケースをストップウォッチ機能のないオイスターモデルと同じくらい密閉性を持たせることができたのである。Ref.6240のベゼルはアクリルを採用したブラックだ。1960年代半ばから1970年頃にごく少量が生産されたRef.6262は非常に希少性が高く、ここでロレックスは、メタルベゼルと非ねじ込み式のプッシュボタンへと回帰。ムーブメントも変更され、ロレックスはバルジュー製ムーブメントの振動数を毎時1万8000振動から2万1600振動へと引き上げた。

キャリバー4030

デイトナはゼニスのエル・プリメロの改良版、キャリバー4030を搭載した時から自動巻きの時計となった。

 このムーブメントは、1970年から1972年にかけてRef.6264にも採用されている。Ref.6262と異なり、Ref.6264はアクリル製のベゼルとねじ込み式プッシュボタンを備えている。1976年に発表されたRef.6263とRef.6265を最後に、ロレックスは手巻きクロノグラフの生産を終了している。このシリーズの初期のモデルは特に希少価値が高い。オークションハウスのクリスティーズでは、そのうちのひとつが2013年に100万スイスフラン近くで落札され、当時の最高落札額を更新している。

 1980年代、クォーツ技術に取って代わられた機械式時計は、過ぎ去った時代の趣のある遺品といった様相を呈していた。1988年、ロレックスは自動巻きのコスモグラフ デイトナを投入した。1969年に発表されたゼニスが開発したエル・プリメロのムーブメントを採用し、振動数を毎時3万6000振動から毎時2万8800振動に下げるなど、いくつかの変更を加えた。これによってより長いパワーリザーブ確保とメンテナンス間隔を開けることに成功した。そしてこのムーブメントはCal.4030と呼ばれることとなる。

Cal.4130

ロレックスはCal.4030を自社製Cal.4130へと置き換え、これによってロレックスのムーブメントはすべて自社製となった。

 この後、スポーティーなクロノグラフウォッチへの需要が高まりを見せ、デイトナ購入を希望する人にとって、3年以上の納品待ちは普通であった。ロレックスはステンレススティール製モデルとイエローゴールド製モデルを展開し続け、後にステンレススティールとゴールドのコンビネーション、ホワイトゴールドとローズゴールドのバリエーションを追加した。なお、現在の中古市場において1980年代後半以降のステンレススティールとゴールドのコンビモデルの価格は抑えめだ。状態の良いステンレススティールモデルはそれより高値が付いている。そして、ここでも注意が必要だ。書類が揃い、オリジナルボックスに入っているものは価値を上げる要因だが、それが真正品であるという保証にはならない。これらの付属品もまた、巧みに捏造されている場合もあるからだ。

 2000年にロレックスは、自社製ムーブメントを搭載した最初のデイトナを発表した。現行モデルにも搭載されているCal.4130は、44石、約72時間のパワーリザーブ、天真の耐震軸受けであるキフ・ウルトラフレックスを備えている。垂直クラッチ方式により滑らかなクロノグラフ秒針のスタートを担保すると共に、この新ムーブメントはその先代であるエル・プリメロ同様にコラムホイール機構によって作動する。

Cal.4130

Cal.4130には自社製のパラクロム・ヘアスプリングを採用。パワーリザーブは約72時間を保持している。

 自社製ムーブメントへの変更は文字盤に見て取れる。スモールセコンドは9時位置から6時位置へ移動し、30分積算計と12時間積算計は文字盤の赤道よりわずかに北へ寄った位置に配されている。

コスモグラフ デイトナ 50周年

ブラウンセラミックスのベゼルを備えたプラチナバージョンは、2013年にコスモグラフ デイトナ誕生50周年を迎えた年に発表された。

 最新型のCal.4130はヘアスプリングにブルー パラクロムを採用している。ロレックスは2013年にブラウンのセラミックベゼルを備えたプラチナバージョンをラインナップに追加。2016年には、自社開発のハイテク素材セラクロム製ベゼルのバージョンの展開をスタートしている。デイトナの色あせぬ歴史は、その進化の系譜を証明している。

デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ

1959年以降、ロレックスはデイトナ・インターナショナル・スピードウェイのオフィシャル・タイムキーパーを務めている。

(2017年初出)