MEMBERS SALON

ブレゲ/タイプXX Part.3(1/3)

タイプⅩⅩⅡのガンギ車とアンクル。興味深いことに、爪石は従来に同じく、人工ルビーである。とはいえ、現時点でのパフォーマンスはほぼ問題ない。
広田雅将:取材・文 吉江正倫、奥山栄一:写真
[連載第16回/クロノス日本版 2013年7月号初出]

シリコン・モデルノロジー
生産と信頼性をめぐる最新知見

タイプ20の第6世代機にあたる「タイプXXII」は、7万2000振動/時という超高振動によって、圧倒的な高精度を実現した。
それを支えたのが、効率に優れるシリコン脱進機である。
いかにしてシリコンは実用化され、量産化の道を拓いたのだろうか。
そのプロセスを改めて振り返ることにしたい。


 脱進機にシリコン素材を採用するメリットは何か。一般的には注油の必要がないことと考えられている。しかしより重要なのは、脱進機部品の軽量化によって、輪列のトルクロスが減少する点にある。つまりアンクルやガンギ車を鋼からシリコンに置き換えるだけで、ゼンマイのトルクを増やすことなく、より高い振動数か、より長いパワーリザーブを与えられるようになる。そのメリットは決して小さなものではないだろう。

 シリコン脱進機のメリットに、最初に気付いたのはユリス・ナルダンであった。同社は重いデュアル・ダイレクト脱進機を改善するためシリコンの研究に着手。脱進機部品をシリコンに置き換えることで、この新しい脱進機は、ようやく実用性を得た。

 対して、シリコン素材でスイスレバー脱進機を改善しようと考えたのは、スウォッチ グループ、パテック フィリップ、そしてロレックスの3社であった。ユリス・ナルダンと異なり、これら3社は開発当初からシリコン素材を量産機に載せることを目指していた。3社はヌーシャテルのラボラトリー「CSEM」にシリコンの研究を依頼。パテック フィリップは2005年、ブレゲは06年に、シリコン製のスイスレバー脱進機を備えたモデルを発表した。

 両社は表向き、シリコン脱進機のメリットとして、注油の必要がないことを挙げてきた。しかし、本当の狙いはいささか異なるようだ。効率改善をパワーリザーブの延長に向けたのはパテックである。対してブレゲは、効率の改善を振動数の向上に充てようとしている。好例は、2011年のタイプXXIIだろう。

 ブレゲが所有するラボラトリーの責任者は、シリコンパーツのメリットを次のように挙げる。「精密であること、軽いこと、磁力に強いこと、そして摩耗しないこと」。彼は、ここ数年でブレゲの精度が向上した理由は、シリコン脱進機のおかげだとさえ明言する。

  1 2 3  
前の記事

ブレゲ/タイプXX Part.2

次の記事

ブルガリ/ブルガリ・ブルガリ Part.1

おすすめ記事

時計ランキング

時計ランキング

その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。

スペックテスト

スペックテスト

クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!

基礎からの時計用語辞典

基礎からの時計用語辞典

時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。

PAGE TOP