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パテック フィリップ/カラトラバ Part.3(1/4)

(上)Ref.5196のプロファイル。初出は2004年。狭義のカラトラバらしい、ラグとミドルケースを一体化させたケースに特徴がある。しかし薄さを強調したモデルらしく、ラグの造形はスレンダーだ。なお、ケースの造形自体は、後年のモデルほど複雑ではない。
(下)Ref.5116のプロファイル。初出は2009年。ケースの形状は1980年代の3919に同じだが、ベゼルのトップが高く成形され、時計としての立体感が増した。筆者の印象を言うと、2000年代の後半から、カラトラバの造形はいっそう立体的なものとなった。
広田雅将:取材・文 吉江正倫:写真
[連載第20回/クロノス日本版 2014年3月号初出]

カラトラバ考現学
多様化するフォルムに内包された美

あくまで筆者の私見だが、カラトラバが大きく変わったのは、2004年のRef.5196からだろう。
新しいカラトラバと称されたRef.5000にさえ、保守的なケースを与えたパテック フィリップは、
以降その造形でさまざまな試みを行うようになる。
ここでは現在を代表する新しいカラトラバの造形から、その多様性を見ていくことにしたい。


 結局のところカラトラバとは何なのか。1980年代にカラトラバ・コレクションを拡充したフィリップ・スターンはこう定義する。

 「カラトラバとはバウハウスの精神を受け継いだコレクションといえるでしょう。つまりシンプルなデザインながら、視認性に優れている」

 バウハウスうんぬんは額面通りに受け取れないが、育ての親であるスターンが、カラトラバの条件に視認性の高さを挙げたのは大変に興味深い。

 この視認性の高さに加えて、筆者は故ギュンター・ブリュームラインが喝破したラグの造形(ラグとミドルケースの有機的な結合)を、カラトラバの定義に加えたいと思う。

 少し脱線したい。Ref.96が登場した1932年当時、ほとんどの腕時計がケースサイズに比して細いストラップを備えていた。これは懐中時計にストラップを付けて腕時計に仕立てる手法の残滓であり、それを支えるラグも小ぶりで細いもので済んだ。好例は20年代のロレックス オイスターが採用したワイヤーラグだろう。これは加工が容易な半面、太いストラップはサポートしにくい。

 対してRef.96は、直径30㎜のケースに対して、ストラップの幅が18㎜もあった。これは現在の水準から見ても、明らかに太い。18㎜のストラップに対してならば、35㎜以上のケース径が望ましいだろう。筆者の知る限り、この時代に意図的にストラップを太くした例には、先にカルティエの一連の「タンク」と、ロレックスの「オイスター パーペチュアル」が存在する程度だ。おそらくパテック フィリップは、カルティエやロレックスに同じく、Ref.96に腕時計ならではのデザインを与えたかったのではないか。そう考えると、狭義のカラトラバが〝あの造形のラグ〟を持った理由も容易に想像できる。

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