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ピアジェ/ピアジェ アルティプラノ Part.2(1/4)

汎用性と薄型化の限界へ
〝エボーシュメーカー・ピアジェ〟の軌跡と矜持

1950年代以降、薄型ムーブメントの開発で他社に先んじてきたピアジェ。
しかし同社のムーブメントには、薄さ以外にも大きな特徴がある。
汎用性と堅牢さである。こういった個性は、初の薄型から最新のムーブメントまで、何ひとつ変わっていない。
ピアジェがなぜ堅牢なムーブメントを作れたのか。その歴史から追っていくことにしよう。

広田雅将:取材・文 吉江正倫、三田村優:写真
[連載第22回/クロノス日本版 2014年7月号初出]

1957 Cal.9P

1957年初出。ピアジェ初の薄型ムーブメント。厚さを2mmに留めただけでなく、強固な一体型ブリッジと、オフセットした輪列を加えることで、薄型とは思えない頑強さを盛り込むことに成功した。また小径というハンディキャップを克服するため、すでに1万9800振動/時というハイビートを採用している。なお1980年には、厚さを0.15mm増して生産性を向上させたCal.9P2に進化した(写真はCal.9P2)。直径20.5mm、厚さ2mm(Cal.9P)、2.15mm(Cal.9P2)。手巻き。1万9800振動/時。18石。パワーリザーブ約36時間。部品数89点。

1960 Cal.12P

ピアジェ初の薄型自動巻き。設計は1958年のユニバーサル215に酷似するが、厚さは5.15mmに対して、わずか2.3mmに留められている。また自動巻き機構もいっそう洗練され、巻き上げ効率を向上させるため24K製ローターを採用。現在はマイクロローター=薄型と考えられているが、それは12Pの登場以降である。基礎設計はジャン・ラサール(設計時点では厚さ2.08mm)。開発はヴァランタン・ピアジェと子会社のコンプリカシオンSAで、56年8月に最初の図面が完成している。直径28.1mm、厚さ2.3mm。自動巻き。1万9800振動/時。30石。パワーリザーブ約36時間。部品数236点。


 ヌーシャテル湖西端部のイヴェルドンから、フランス方面に北上すると、オルゴールで著名なサントクロアに出る。そこから脇道に入ると急峻に突き当たるが、登りきると高台に出る。標高1041メートル、ジュラ山脈に点在する高級時計の生産地でも、とりわけ隔絶された土地が、ピアジェ発祥の地、ラ・コート・オ・フェである。

 スイスにはさまざまな時計メーカーがあるが、ピアジェほど地勢的な条件がプロダクトに影響を及ぼしたブランドは希だろう。つまりピアジェのムーブメントを見るにあたっては、その歴史をひもとく必要がある。

 ラ・コート・オ・フェという土地は、ピアジェをどうあらしめたのか。ジャーナリストのルシアン・F・トリュープはこう記している。「かつての人々はピアジェの工房についてこう語った。教会のような、つまり神聖で、その中に入るときには畏敬の念で震えるような場所である」。「ピアジェの若い従業員たちが工房にラジオを入れてくれと頼んだ。対して年配の職人はそんな〝インモラル〟なものは導入できないと拒絶した」。

 この地が初めて歴史に現れるのは、13世紀の後半とされる。しかし村として成立するのは、ピアジェ家を含む新教徒たちがフランスから亡命して以降らしい。ラ・コート・オ・フェのあるヌーシャテル州は、1530年以降、プロテスタントの支配下にあった。そのため多くのプロテスタントがフランスから亡命したが、彼らの一部は政治的な混乱と新教・旧教の対立を嫌って、さらに奥地に隠れた。そのひとつがフルリエである。しかしピアジェ家を含む新教徒たちは、さらに山奥に隠れた。選んだのは、フランスと国境を接してはいるが、フランスへの道を持たないラ・コート・オ・フェであった。急峻に遮られたこの高台は、身を隠すにはうってつけだったのだろう。

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