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A.ランゲ&ゾーネ/1815 Part.2(1/4)

汎用設計ムーブメントによる
〝ベーシックの構築〟とデザインの変遷

A.ランゲ&ゾーネのベーシックモデルとしてリリースされた1815。
しかしこのモデルは、やがて複数のバリエーションを持つ一大コレクションへと変貌を遂げた。
短期間での拡張を可能にしたのが、汎用設計のムーブメントである。
優れた設計を転用するという観点から、1815の歩みを見ていくことにしよう。

ラインハルト・マイスが1995年3月2日に描いた1815のデザインスケッチ。ベルト幅のバリエーションと、丸い手巻きムーブメントに注目。1815以降、A.ランゲ&ゾーネは裏蓋をトランスパレントに改めた。なお、図版はすべてマイスの著作『A.Lange & Söhne:Great Timepieces From Saxony』(2011年)より。


広田雅将:取材・文 吉江正倫:写真
[連載第26回/クロノス日本版 2015年3月号初出]

 ギュンター・ブリュームラインの右腕として、A.ランゲ&ゾーネの復興に携わったのが、時計史家であり、プロダクトデザイナーでもあったラインハルト・マイスである。彼のスケッチを追いかけていくと、A.ランゲ&ゾーネのデザイン作業が始まったのは1991年10月、そしていわゆる「ランゲデザイン」が固まったのは、翌年秋であった。ラグとケースサイドを描いた92年9月のマイスによるスケッチは、ベゼルの形状以外、現行のデザインとほぼ同様だ。それをブリュームラインは、新生A.ランゲ&ゾーネのアイコンとして大々的に採用した。

 その一方で、マイスは搭載するべきムーブメントに関するスケッチをほとんど残していない。普通はムーブメントの開発が先にあって、後にデザインがくる。そのためムーブメントのスケッチは残っているはずだ。しかし、ごく初期の資料を読む限り、ムーブメントに関するものはほぼ見当たらない。つまりブリュームラインとマイスは、A.ランゲ&ゾーネの復興に際して、さほど中身を重視していなかったと推測できる。

 その最大の理由は、92年にジャガー・ルクルト(以下JLC)が発表した、角型手巻きのキャリバー822の設計を転用するつもりだったからではないか。おそらくブリュームラインは、A.ランゲ&ゾーネでも共用できるムーブメントの設計を、当時同じLMHグループに属していたJLCに依頼したのだろう。その証左として822は、この時代に新造されたJLCのムーブメントとしては唯一、チラネジ付きのテンプを備えていた。当時としても時代遅れであったチラネジ付きのテンプ。ただし数々の証言が示すように、ブリュームラインは、あえてチラネジ付きのテンプにこだわった。こういう逸話がある。ブリュームラインはあるインタビュアーに、パテック フィリップのジャイロマックスに対してチラネジ付きは古めかしくないか、と問われた。対して彼は「この方が古典的だからいい」と言い切ったのである。A.ランゲ&ゾーネと共用するという前提がなければ、そしてブリュームラインがチラネジを好まなければ、〝原理主義者〟であるJLCの設計者、ロジャー・ギニャールは、822に精度の出しやすいスムーステンプを採用したはずだ。

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