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セイコー/セイコーダイバー Part.2(1/3)

高度な世界標準の礎となるべく、外装技術を研ぎ澄ませた
国産ダイバー、半世紀の軌跡

1965年に始まったダイバーズウォッチの開発は、たったひとことの苦言から、その方向性を大きく変えていった。
実際の潜水作業に従事するダイバー曰く、「350メートル防水でも使えない」。
以降セイコーは、プロフェッショナルの使用に耐える、本物のダイバーズウォッチとは何かを追究してゆくことになる。

1965

国産ダイバーの始祖となった150m空気潜水仕様 [62MAS-010]
セイコー初の飽和潜水対応ダイバーズウォッチ。世界で初めて量産ダイバーズウォッチのケースに、チタンを用いたことでも知られる。性能を高めるため、23もの特許が盛り込まれた。
自動巻き(Cal.6159)。25石。3万6000振動/時。Ti×セラミックコーティングチタン。600m防水。発売時の価格は8万9000円。

広田雅将:取材・文 吉江正倫:写真
[連載第30回/クロノス日本版 2015年11月号初出]

 1960年代を通じて、諏訪精工舎(現セイコーエプソン)は外装に関する技術を飛躍的に高めていった。一例が、セイコーファイブスポーツ(68年)に採用された「Oリングを使用した回転パッキン」である。機構自体は他社にも見られるものだが、これは素材が従来とは大きく異なっていた。具体的には従来のニトリルブタジエンラバーに代えて、自己潤滑性のあるジオクチルパケートを使用。ベゼルに安定した回転トルクと、高い起動トルク、そして回転時の低トルクという、相反する要素の両立に成功した。後にこの技術は、セイコーダイバーの特徴である「回転トルクコントロールベゼル」に発展する。

 新技術への積極的な取り組みを考えれば、同社が高度な外装技術を前提とするダイバーズウォッチに挑んだのも理解できる。65年に諏訪精工舎は、初のダイバーズウォッチとなる通称〝150mダイバー〟をリリース。67年にはワンピースケースとバヨネット式のガラス固定構造、そしてツインシールド式のねじリュウズを持つ〝300mダイバー〟へ進化した。翌年、このモデルには特別チューンが施されたキャリバー6159が搭載され、これでダイバーズウォッチの進化は一段落するはずだった。

 しかし68年(筆者は73年ではないかと想像する)、海洋開発を行う会社のダイバーが、一通の手紙を服部時計店(現セイコーウオッチ)に送った。「私は潜水カプセルを使って350mの深海で作業をするダイバーです。(中略)海底での作業は厳しく、貴社の300m仕様の潜水時計ではとても保たない」。

 セイコーにとって、ハイビートムーブメントを載せた300mダイバーは、いわば渾身のダイバーズウォッチであった。スイスでも珍しいワンピースケースに、滑らかな動きの回転ベゼル、そして頑強なハードレックス製の風防。しかしその300mダイバーも、深海作業を行うプロフェッショナルの使用には耐えられなかったのである。

 手紙を受け取った服部時計店は、ヒアリングのため、開発リーダー兼デザイナーだった田中太郎氏と、諏訪精工舎の外装設計課より赤羽達郎氏を派遣した。ここでセイコーは、実際の潜水作業には飽和潜水なるものが存在し、そのためにドライスーツや減圧カプセルが必要であることを初めて知ったのである。

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