オメガ/シーマスター300 Part.2

FEATUREアイコニックピースの肖像
2018.08.23

 しかしシーマスターの設計と商業的な成功は他社を刺激した。53年、ブランパンとゾディアックがダイバーズウォッチをリリース。その1年後にはロレックスが「サブマリーナ」を発表して追随した。ちなみに水中でも読み取り可能な回転ベゼルで特許を取得したのはブランパン、正しくは当時CEOを務めていたジャン-ジャック・フィッシェである(スイス特許番号515460、55年9月14日公開)。これもラバー製のOリングに依存した防水システムを持っていた。

 各社に張り合うべく、オメガはダイバーのゴードン・マクリーンにシーマスターを帯同させて62.5mの潜水記録を樹立。しかしロレックスを含むライバル他社に及ばず、オメガは防水性能を3倍以上に高めた初の本格的ダイバーズウォッチ「シーマスター300」の開発に踏み切ることになる。

1st Model [1957〜]Ref.CK2913
1957年初出のファーストモデル。オメガ初の全回転ローター自動巻き、Ca.500/501を搭載していた。アメリカ市場向けは17石のCal.500、それ以外の市場には19石のCal.501を搭載。後にリファレンスがST147.552に改められた。初期シーマスターのケースはユグナン・フレール製。

1st Model [1957〜] Ref.ST147.552
第1世代にはCK2913-1〜3までのサブタイプが存在したが、6桁リファレンスへの改編を受けST147.552に統一される。このモデルはストレート秒針。第3世代まで、針やベゼルにさまざまな形状が存在するのは、当時のオメガが複数のサプライヤーを使い分けていたため。

 

 この時計に加えられた工夫は、かなり興味深い。ひとつは水圧がかかるとリュウズに内蔵したパッキンがつぶれて防水性を確保する「ナイアス高耐圧リュウズ」だ。構造は53年初出のゾディアック「シーウルフ」に似ているが、「オイスター」の特許を避けるなら他の選択肢はなかっただろう。そしてもうひとつが、変形しにくい強化ガラス(アーマードガラス)の採用である。プラスティック製風防の変形を防止するため、オメガはシーマスターのファーストモデルにスティール製のテンションリングを採用した。防水性を強化するため、シーマスター300はプラスティック製風防の厚みを3倍に増加。開口部にスティール製のテンションリングを取り付け、それをケースにねじ込むことで十分な防水性を確保したのである。

2nd Model[1960〜] Ref.ST165.014
1960年に発表された第2世代機。ムーブメントがスムーステンプを持つCal.550系に変更された。アメリカ市場向けは17石のCal.550(ST165.014)、他は19石のCal.552(ST164.064)。ベゼルの表記や針の形状など、さまざまなバリエーションが存在する。

3rd Model[1965〜] Ref.ST165.024
防水システムが一新された第3世代機(1962~69年)。リファレンスはデイト表示なしがST165.024(Cal.552搭載)、デイト表示付きがST166.024(Cal.565搭載)である。しかしアメリカ市場向けには石数の少ないCal.550やCal.563が搭載されたといわれる。


 オメガは、この時計を海でも空でも使える万能時計と考えていたようだ。事実、ダイバーズウォッチ然とした外観にもかかわらず、広告には「高度3万2000mの気圧にも耐える」と記されていた。しかし数年後、オメガはこのモデルをプロ向けのダイバーズウォッチとして進化させるようになった。

 以降のシーマスター300を、便宜的に4世代に分類してみよう。57年に発表された初作が第1世代。そのムーブメントを変更した60年の第2世代。複雑な防水システムを一新し、近代的なダイバーズウォッチに進化した62年(61年説もある)の第3世代。そして69年発表の第4世代は、第3世代のデザインを手直ししたモデルであった。