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オメガ/シーマスター300 Part.3(1/4)

新たなオメガスタンダードとなる
超耐磁=マスター コーアクシャル

新しいシーマスター300に非凡な性能をもたらしたのが、1万5000ガウス以上という耐磁性能を誇る“マスター コーアクシャル”ムーブメントである。ベースとなったのは、コーアクシャル専用機として開発されたCal.8500系。
オメガは非耐磁の素材を用いることで、この基幹キャリバーにかつてない耐磁性能を与えることに成功した。

腕時計のムーブメントに耐磁性能をもたらす手法はふたつある。ひとつは軟鉄製のファラデーケージでムーブメントを囲む手法(図右上)。オメガの「レイルマスター」などで採用されたものだ。そしてもうひとつが、ムーブメント自体を非耐磁にする手法(図左上)。初出はIWC「オーシャン2000」の西ドイツ海軍向けモデルである。オメガに成功をもたらしたのはSi14(シリコン)製のヒゲゼンマイと、一般的な鋼材に代えて用いられた新素材「ニヴァガウス」製の部品であった。
広田雅将:取材・文 吉江正倫:写真
[連載第32回/クロノス日本版 2016年3月号初出]

 新しいシーマスター300は、外観こそレトロ調だが、その中身は最新鋭である。とりわけ1万5000ガウス以上もの耐磁性能を持つ〝マスターコーアクシャル〟を備えたキャリバー8400は、このダイバーズウォッチに卓越した実用性をもたらした。

 1999年、オメガはコーアクシャル脱進機を載せた自動巻きのキャリバー2500を発表した。ガンギ車の油切れが起きにくく、等時性に優れるコーアクシャル脱進機。これはデテントとスイスレバーの〝良いとこ取り〟をした、理想的な脱進機のひとつであった。

 しかし開発当初、この脱進機には問題があった。まずは脱進機の重さに対して、主ゼンマイのトルクが足りなかった点。そのためガンギ車とアンクルの追随性が良くなかった。加えて開発者のジョージ・ダニエルズが振動数を1万9800振動/時以上にしないよう助言したにもかかわらず、携帯精度改善のため、オメガは2500系の振動数を2万8800振動/時にまで高めた。重い脱進機と高い振動数は振り角を落とす原因となり、2500系の携帯精度を悪化させてしまったのだ。

 もちろんオメガも手をこまねいていたわけではない。同社は毎年のようにキャリバー2500系を改良。数年後には起動性や等時性、低い振り角といった問題を解決していった。

 キャリバー2500系の反省を踏まえて新規設計された〝コーアクシャル専用機〟がキャリバー8500系である。シーマスター300が搭載するキャリバー8400は、これからデイト表示をオミットしたものだ。オメガはキャリバー8500のパフォーマンスを証明すべく、発表時にはロレックスの名機、キャリバー3100系を引き合いに出した。

 キャリバー8500の使用可能なエネルギーは69ジュール。これはキャリバー3100より35%も高い。重いコーアクシャル脱進機は、スイスレバー脱進機に比べてエネルギーのロスが大きい。しかしエネルギーを増やした結果、8500のテンプのQ値は310μWと3100より4%も大きくなった。これを可能にしたのが、強いトルクを持つダブルバレルと、2万5200振動/時というロービートであった。2500系での反省点を盛り込んだ新しいコーアクシャル専用機が、素晴らしい携帯精度を誇ったのは当然だろう。

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