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ブライトリング /エアロスペース Part.3(1/2)

エアロスペースが切り拓いた派生機/特殊機の可能性

機械式クロノグラフの分野で大きな成功を収めたブライトリング。
しかし同社は以降も、デジアナ仕様の多機能時計というジャンルを深掘りし続けた。
緊急救難信号を発信する「エマージェンシー」や、ツープッシャー付きクロノグラフに進化した「B1」など……。
さらに新しく加わったのが、多機能をスマートフォンで管理/設定するという特殊時計「エクゾスペース B55」だ。

広田雅将:取材・文 吉江正倫、三田村優:写真
[連載第33回/クロノス日本版 2016年5月号初出]

エマージェンシー[Ref.E56121]
世界で唯一、国際航空救難信号を発信できるシリーズ。ダッソー・エレクトロニクス社と共同開発した超小型発信器を内蔵する。11時位置の補助アンテナと6時位置のアンテナから最大48時間発信を行える。クォーツ(Cal.76)。7石。Ti(直径43mm)。100m防水。参考商品。

エマージェンシーⅡ[Ref.E76325]
2013年にエマージェンシーは第2世代に進化を遂げた。既存の121.5Hzに加え、国際的な捜索救助システムの衛星が受診する406Hzの周波数が発信可能。また、-20℃から+50℃までの温度下で、18時間発信が可能だ。直径51mm。日本未発売。

 

 エアロスペースが搭載するETA988(現E10)系。企画を推し進めたアーネスト・シュナイダーは、このデジアナムーブメントを、現代の〝スマートウォッチのようなもの〟にしたかったと聞く。多機能、多彩な表示、そして優れた操作性。それを示すのが特許資料だ。

 ETA988(正しくはアナログ表示とデジタル表示を持つ時計)の開発に伴い、ETAはいくつかの特許を得た。ひとつはアメリカ特許4413915。スイスでは最新だったTN液晶を使った、デジアナウォッチに関する特許である。〝複数の機能を表示〟と記してあるが、このムーブメントで〝何ができるか〟までは書かれていない。アイデア段階では、どんな機能を載せるかは決まっていなかったのだろう。結局ETA988.332は、クロノグラフ、アラーム、カウントダウンタイマー、マルチタイムゾーンといった、実用的だが一般的な機能を載せるに留まった。製品化には正しい決断だが、自動巻きムーブメントを交流発電機に見立てるほどアイデアに富んだ電子工学者は果たしてこれに満足しただろうか。

コックピット B50[Ref.EB5010]
パイロットユースを念頭に置いた多機能クロノグラフ。エアロスペースの機能に加えて、離陸・着陸時刻、日付を記憶させるクロノフライト機能などを追加した。バッテリーは充電式。クォーツ(Cal.B50)。Ti(直径46mm)。100m防水。82万円。

 かつてシュナイダーが追い求めた、独創的なクォーツウォッチ。いかにも彼らしい時計のひとつが、エアロスペースをベースにした「エマージェンシー」であった。その特徴は、世界で初めて国際航空救難信号の発信器を時計に内蔵したこと。シュナイダーはエマージェンシーの開発コンセプトを86年に発表。しかし性能チェックや各国での許認可を得るのに時間がかかり、実際のリリースは95年にずれこんだ。

 先述の山田龍雄氏が、エマージェンシー開発の経緯をアーネスト・シュナイダーにインタビューしている。

 「ヨットレーサーであるエリック・タバリーがエマージェンシーを開発するようにアドバイスをしたことで、ついに決心がついたのです。緊急時に人命を救うことができるサバイバルツールを絶対に開発する必要があるとね」(『インフォ・ブライトリング』2006年1月号)。シュナイダーは小型発信器を購入し、スイスの山奥でテストを繰り返した。彼はその結果を持って、フランスの航空機メーカーであるダッソーと交渉。腕時計に収まる超小型発信器の共同開発契約を結んだ。

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