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フランク ミュラー/カサブランカ Part.2(1/2)

カサブランカ誕生前夜

〝富裕層向けデイリーウォッチ〟を仕掛けた4人
フランク ミュラー躍進の立役者となったカサブランカ。
天才時計師の作品を、手の届きやすい価格で提供するというアイデアは、ある4人のアイデアから生まれたものだった。
彼らの間で何が話し合われたかを、当事者たちは決して語ろうとしない。
しかしその顔ぶれから、ブレインストーミングの内容を推察してみる価値は大いにあるはずだ。

吉江正倫:写真
広田雅将(本誌):取材・文
[連載第35回/クロノス日本版 2016年9月号初出]

Roberto CARLOTTI[ロベルト・カルロッティ]
フランク・ミュラーを世に出した盟友。イタリア代理店の経営者として同ブランドの普及に努めた。2001年にヨーロピアン・カンパニー・ウォッチを創業。2004年没。

Franck MULLER[フランク・ミュラー]
1991年に、ヴァルタン・シルマケスと共同でテクノウォッチ社を創業。96年から資本参加したシルマケスと不仲となり、2000年代に入ってグループを離れるが、数年後に和解。

 

Carlos DIAS[カルロス・ディアス]
1990年当時は、テクノウォッチのデザイン責任者として活躍。ミュラーとシルマケスのビジネスモデルを学んだ彼は、95年にロジェ・デュブイを創業することになる。

Vartan SIRMAKES[ヴァルタン・シルマケス]
現フランク ミュラーグループCEO。96年から資本参加し、2003年以降グループの全権を握った。シルマケス無くして、トノウ・カーベックスケースの量産は不可能だった。

 

 1990年代初頭のある日、4人の時計関係者が円卓を囲んでいたと考えていただきたい。その顔ぶれはフランク・ミュラー、ヴァルタン・シルマケス、カルロス・ディアス、そして故ロベルト・カルロッティ。彼らはフランク ミュラー銘でまったく新しい腕時計を作る、という話題に熱中していたに違いない。

 天才時計師として華々しく現れたミュラーは、早くから事業の拡大を考えていた。しかし彼は、ムーブメントは作れるが、外装は自製できない。ケースを量産でき、しかも他メーカーの圧力を受けないメーカーを探していたミュラーは、やがてヴァルタン・シルマケスに出会った。気鋭のケースメーカー、テクノケース社の創業者であるシルマケスは、88年以降、ダニエル・ロート向けに複雑なダブル・オーバルケースを製造。やがて、一層ハイエンドなウォッチメイキングに関心を持つようになっていた。

 優れた時計師と野心的なケースメーカーの邂逅。両者はたちまち意気投合し、91年にはテクノウォッチ社(後のフランク ミュラー ウォッチランド社)を創業した。翌年彼らは、フランク ミュラーの時計をS.I.H.H.に初出展。汎用ムーブメントやオールドムーブメントを載せた時計を少量生産することで、ビジネスを軌道に乗せようとしていたのだ。

 会議に集まった顔ぶれは非常に興味深い。まずは後にヨーロピアン・カンパニー・ウォッチの創業者となるロベルト・カルロッティ。彼は80年代からミュラーの盟友であり、当時はマハラとフランク ミュラーのイタリア代理店を経営していた。そしてカルロス・ディアス。当時のディアスは、テクノウォッチ社でデザイン責任者の立場にあった。彼らが議題に上らせたのは、より広い層にリーチできる時計、つまりはステンレスケースを持つシンプルなコレクションについてであった。

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