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オーデマピゲ/ロイヤル オーク オフショア Part.2(1/2)

ジェンタの最高傑作にメスを入れた
新進デザイナーの苦悩と功績

ロイヤル オーク20周年モデルとしてリリースされる予定だった「ロイヤル オーク オフショア」。
そのデザイナーとして抜擢されたのは、1986年に入社したエマニュエル・ギュエだった。
弱冠22歳の彼は、ジェラルド・ジェンタの傑作をリファインし、現代に残るアイコンに仕立て直すことに成功した。
しかしその過程は、決して平坦なものではなかったのである。

吉江正倫:写真
広田雅将(本誌):取材・文
[連載第37回/クロノス日本版 2017年1月号初出]

 「ジェラルド・ジェンタがブースに怒鳴り込んできたとき、私はまだ若かったのでかなり傷ついたし、彼は気むずかしい男だと思ったよ。それから20年以上が経った今ならば、その時の彼のリアクションも本当に理解できるよ」

 筆者にそう語ったのは、「ロイヤル オーク オフショア」のデザインを手掛けたエマニュエル・ギュエである。1993年にバーゼル・フェア(現バーゼルワールド)で発表されたオフショアは、関係者たちの賛否両論を呼んだ。成功を確信していたのは、当時のCEOステファン・ウルクハートとギュエのみ。オーデマ ピゲの関係者たちでさえ、直径42㎜のクロノグラフは大き過ぎて売れないと述べ、ファーストモデルをデザインしたジェラルド・ジェンタに至っては怒り心頭だった。彼はオーデマ ピゲのブースに怒鳴り込み、私のモデルをめちゃくちゃにしたと文句を述べた。しかしデザイナーのギュエ本人は、オフショアの成功を確信していた。20年前のジェラルド・ジェンタと同様に、である。

初代オフショアのケース構造。基本的にはロイヤル オークの3ピースケースを踏襲しているが、ムーブメント全体が軟鉄製の耐磁ケースで囲われている。またベゼルのビスも太くなった。

 オフショアの計画が始まったのは89年のこと。ロイヤル オークを若年層向けにリデザインするというアイデアを出したのはウルクハートであり、デザイン担当に抜擢されたのは弱冠22歳のギュエだった。86年にオーデマ ピゲに入社した彼にとって、事実上これは初の作品となった。

 「デザインに関して言えば、オフショアに3次元なラインを与えることは難しくなかった。というのも、ロイヤル オークのすべてのディテールをただ単に拡大しただけだからだ」

 とは言うもののギュエは、注意深くオフショアのデザインを進めた。その手法は、先達のジェンタを思わせるものだ。「ケースを大きくするとムーブメントとの間に余白ができる。そこで(ムーブメントの周りを覆う)耐磁ケースを加えた」。ジェラルド・ジェンタが「デザインにあたっては常にムーブメントを考える」と語っていたように、ギュエもムーブメントとケースの適正化に気を配ったのである。彼の手腕を感じさせるのが、幅広い見返しだ。直径の小さな2125系を載せた結果、どうしても文字盤が間延びしてしまう。対して彼は、ベゼルとダイアルとの間にある見返しを拡大し、余白を埋めた。問題はデザインではなく、むしろ社内にあったと彼は語る。

 「このプロジェクトで最も難しかったことは、いかにして経営陣の承認を取るかだった。当時の時計のトレンドは薄型、または男性用のボーイズサイズだった」。後に彼が、半年に一度はオフショア・プロジェクトの中止を求められた、と漏らしたはずである。

 エマニュエル・ギュエがスケッチを完成させたのは、91年9月19日のこと。そのスケッチには3本のモデルが描かれている。ベゼルが18KYG製、18KPG製、そして黒いものである。後にオーデマ ピゲが「エンドオブデイズ」モデルでPVDコーティングを採用したことを考えれば、おそらくそれはPVD処理を施したスティール製だろう。

ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ[1st Model]
Ref.25721ST。1993年、正しくは92年末に製造されたファーストモデル。最初の100本はバックケースに「offshore」の刻印がない。93年に発表された直径42mmの大ぶりなクロノグラフは、世界的なヒット作となった。自動巻き(Cal.2226/2840)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS。100m防水。参考商品。

 

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