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ルイ・ヴィトン/タンブール Part.3(1/3)

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マニュファクチュール化を経て深化を重ねる最新タンブール事情

2002年に生産部門の「アトリエ オルロジュリー ルイ・ヴィトン」を創設したルイ・ヴィトン。
しかし内製化をいっそう推し進めるため、同社はラ ファブリク デュ タンを買収し、かつての生産部門と文字盤工房のレマン・カドランをそこに統合した。その帰結が最新作の「タンブール ムーン」である。

吉江正倫、三田村優:写真
広田雅将(本誌):取材・文
[連載第40回/クロノス日本版 2017年7月号初出]
タンブール ムーン トゥールビヨン ジュネーブシールの図面とケース構造。シンプルに見えるケースだが、構造はかなり複雑だ。内側にはムーブメントと風防を支える巨大なリングを収め、ベルトを留めるラグをケースにネジ留めし、それをバックケースで覆っている。


 2010年、ルイ・ヴィトン時計部門の責任者となったハムディ・シャティは「時計業界で重要な位置を占めるために、私たちは競争力を高めねばならない」と語った。長年時計業界に従事し、マイクロエンジニアリングと時計学(複雑時計部門)の修士号を持つ彼は、そのためには、まず質を上げることが重要だと理解していた。鍵となったのが、ジュネーブにあるラ ファブリク デュ タン(現ラ ファブリク デュ タン ルイ・ヴィトン/LFTLV)の買収だった。

 同社は、旧BNBコンセプトのミッシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニが創業した、複雑時計専門の工房である。2000年以降、コンプリケーションに特化した工房が多く設立されたが、同社のスタンスは他と大きく異なっていた。他社はできるだけパーツを内製するが、ラ ファブリク デュ タンはそのほとんどを外注したのである。「今の時計メーカーは自分たちでパーツを作りたがる。しかし製造を専門家に任せたほうが質は良くなる」(ナバス)というポリシーがあるからだ。部品の外注を可能にしたのが、ナバスとバルバシーニの長いキャリアである。1980年代初期から複雑時計の設計・製造に携わってきた彼らは、スイスの主立った部品メーカーと強いコネクションを持っている。そのためスイスでも最良の部品を手に入れることができた。

 創業以来同社が行ってきたのは、時計の設計とケーシング、複雑時計の組み立てと文字盤の自製のみ。しかしできることのみに特化した同社の技術力は、スイスでも屈指だった。事実、かつての顧客リストにはルイ・ヴィトンを筆頭に、ジラール・ペルゴ、ローラン フェリエといった一流メーカーが名を連ねていたのである。ルイ・ヴィトンが同社を買収したというニュースを聞いて、悔しがるメーカーは少なくなかったと聞く。

ミッシェル・ナバス Michel Navas
1962年スペイン生まれ。ブザンソンで時計技術を習得後、ジェラルド・ジェンタ、オーデマ ピゲ、パテック フィリップなどを経て2004年にBNBコンセプトを創業。2007年にバルバシーニとラ ファブリク デュ タンを設立し、11年よりルイ・ヴィトンに移籍。

エンリコ・バルバシーニ EnricoBarbasini
1958年スイス生まれ。79年、創業間もないジェラルド・ジェンタに入社。複雑時計の設計・製造を行う。後にパテック フィリップなどを経て、BNBコンセプトの創設に携わる。2007年にラ ファブリク デュ タンを設立。11年よりルイ・ヴィトンに移籍。
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