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パルミジャーニ・フルリエ/トリック Part.2(1/3)

ミシェル・パルミジャーニの黄金律
ブランドに通底するデザイン感覚

デザインに興味を示す時計師は少なくないが、時代を超えた方法論を提示できた人物は希だ。
数少ない例外はミシェル・パルミジャーニだろう。抽象的なデザイン論を好む彼だが、そのアプローチは実に堅実だ。
自然の中にある黄金律と揺らぎを愛する彼が、デザインの方法論を説き明かす。

吉江正倫、三田村優:写真
広田雅将(本誌):取材・文
[連載第42回/クロノス日本版 2017年11月号初出]

 1975年以降、時計師というよりも修復師としてのキャリアを重ねてきたミシェル・パルミジャーニ。ブレゲの「シンパティック・クロック」やファベルジェ・エッグといった大作を手掛けた彼は、96年に完成品の製造ブランドとして、パルミジャーニ・フルリエを創業する。この時点で、比類ない名声を得ていたパルミジャーニだが、実のところ、彼が目指していた職業は建築家であって、興味の対象はデザインにおける黄金律だった。もし彼がスイスのフルリエ地方に育っていなかったら、私たちは彼の名を、建築や数学の教科書で見ることになったかもしれない。少なくとも、デザインに対する情熱が、彼を時計作りに駆り立てた一因となったのは、紛れもない事実である。

 「私の時計のデザインは、調和と黄金律という特徴を持っています。69年に、私は図書館で黄金律に関する本を読みました。フィボナッチ、ル・カッチオーリなどですね。いずれも黄金律、神のプロポーションを備えたものです。黄金率は哲学的であり、数学的です。数学は実に美的です。そして人には黄金律、つまり神のプロポーションを理解できる能力が備わっているのです」

マレーシアで拾った貝殻の絵をスケッチするミシェル・パルミジャーニ。スケッチが示す通り、彼はこの模様を、ベゼルのモルタージュ装飾に転用した。「縦方向の刻み模様がドーリア建築やイオニア式の柱に、ゴドロンがその台座に見えるでしょう。これが円環(トリック)という名前を付けた理由です」。


 独立時計師の中には、デザインに興味を持つ人物も少なくない。しかし彼らの多くが時計そのものにインスピレーションの源をよっているのに対して、パルミジャーニはそれを自然に見いだそうとした。彼は自然の中に見られる、幾何学的な美や黄金律を、デザインのモチーフとしたのである。

 「90年にバケーションでマレーシアに出掛けました。その際、浜辺で貝殻を拾いました。完全なプロポーションを持ち、立体的なのに、45度ほど傾けると平たく見える。この貝殻の造形をケースに転用すれば、時計を薄く見せられるのではないか、と考えました。つまり、視覚的なまやかしを作ることができる」

モルタージュ装飾に使われる手回し旋盤。ベゼルを旋盤に当てて、何度か回転させて正確に模様を刻んでいく。「旋盤を使えばどんな模様も施せます。葉の模様や丸い模様でさえもね。ただし現在では、旋盤職人の数が少なくなりました。熟練した職人がいれば、さまざまなバリエーションを作りたいのですが……」(ミシェル・パルミジャーニ)。
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