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パテック フィリップ/ 年次カレンダー Part.2(1/3)

歯車のみの専用輪列がもたらす
拡張性と実用性

1996年の発表以来、パテック フィリップは年次カレンダーのバリエーションを大きく広げた。
それを可能にした理由は、カムとレバーではなく、小さな歯車のみでカレンダーを構成したため。
ここでは、その多彩なバリエーションの一部を見ることにしたい。

吉江正倫:写真
広田雅将(本誌):取材・文
[連載第48回/クロノス日本版 2018年11月号初出]
ディスク表示式 [Cal.324 S QA LU 24H/303]
2006年初出。曜日とムーンディスクの駆動は同じ輪列で行っていたが、重いディスクを回すために切り分けられた。その結果、12時位置のパワーリザーブ表示が廃されたが、6時位置には筒車で駆動される24時間針が復活した。基本スペックは右に同じ。


 カムと大きなレバーを使い、自動的に日付を早送りする「非連続型」の永久カレンダー。かなり大げさな仕組みだったが、3月1日に2日ないし3日間の自動調整を実現するには、テコの原理を強く効かせられる、この仕組みを選ぶ他はなかった。この200年間に、永久カレンダーの設計が、基本的に変わらなかった理由である。しかし、永久カレンダーから3月1日の自動調整を省いてしまえば、自動日送りは1日だけで済み、設計はかなりシンプルになるだろう。

 1991年、パテック フィリップは、ジュネーブの技術学校と共同で、クォーツでは実現できない、新しい複雑機構の開発に取り組んだ。そこで生まれたのが、カムとレバーではなく、ほぼ歯車だけで構成される新しいコンプリケーション、年次カレンダーだった。基本的な骨子を考えたのは同校の学生で、完成させたのは、設計者のフィリップ・バラ(現同社設計部長)である。

 カムとレバーを使った非連続型の永久カレンダーは、両者の接触が正確でないと、カレンダーが確実に切り替わらなかった。そのため部品の調整はかなり難しかった。永久カレンダーが高くついた一因である。またテコの原理を効かせる大きなレバーはしばしば誤作動を起こし、ショックにも弱かった。

 対して、歯車だけでカレンダーを構成する連続型の年次カレンダーは、大がかりな調整が不要なうえ、誤作動も起こしにくく、ショックにも強かった。さらに価格も、永久カレンダーに比べてぐんと抑えられた。2月末の日送りを自動ではなく手動で行うデメリットはあったが、それを補うほど、新しい年次カレンダーは実用的だったのである。もちろん、連続型の年次カレンダーにも弱点はあった。歯車を精密に作らないとカレンダーの抵抗が増え、テンプの振り角は落ちてしまうのである。しかし、パテック フィリップの場合、それは問題でさえなかった。

指針表示式 [Cal.324 S IRM QA LU/399]
2004年初出。ベースをCal.315からCal.324に改めたほか、12時位置にはパワーリザーブ表示、6時位置にはムーンフェイズが備わる。代わりに24時間表示は廃された。自動巻き。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。スピロマックスヒゲゼンマイ。
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