パネライ/ラジオミール Part.2

FEATUREアイコニックピースの肖像
2019.02.19

RADIOMIR LOGO 3DAYS-45mm [PAM00753]
新たにP.6000系を搭載したワイヤラグモデル

ラジオミール ロゴスリーデイズ アッチャイオ-45mm
ラジオミールのベーシックにして、原型をよく残したモデル。自社製ムーブメントP.6000の搭載により、理論上の等時性は改善されている。手巻き(Cal.6000)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約3日間。SS(直径45mm)。100m防水。44万円。
吉江正倫、三田村優:写真
広田雅将(本誌):取材・文
[連載第49回/クロノス日本版 2019年1月号初出]

  1997年の復活以降、パネライが注力してきたのは、自社製ムーブメントの開発と、それ以上にケースの改良だった。パネライを復活させたフランコ・コローニとアンジェロ・ボナーティは、スイスでパネライのケースを製造できるメーカーを探し、やがてジュラのブリュリューに工房を置くドンツェ・ボームを見いだした。

 今でこそ、ドンツェ・ボームといえば、リシュモングループの傘下にある、スイス屈指のケースサプライヤーだ。しかし、年代後半の同社は、冷間鍛造で中級品向けのケースを作る、凡庸な、よく言って手堅いサプライヤのひとつでしかなかった。それから年。パネライとのコラボレーションは、同社の質を劇的に改善し、それは毎年追加されるパネライの新製品に反映された。その好例が、「ラジオミールブラックシールロゴスリーデイズアッチャイオ-mm」である。本作も、前ペジのロゴに同じく、パネライのエントリーモデルだ。しかし、ケースの面からは、かつて見られた歪みがなくなり、エッジも明瞭になった。加えてリュウズのガタも抑えられ、高級機然とした仕上がりを持つようになったのである。正直、100万円の価格で、この仕上げを持つのは当たり前だ。しかし、PAM00754の価格は万円に過ぎないのである。搭載ムーブメントを含めれば、現時点で、最もお買い得な実用機だ。

 かつてのパネライは、ユニークなムーブメントを与えることで、ラジオミールを高級機に仕立てようとした。その試みは悪くなかったが、残念ながら、外装の出来は良いとは言いがたかった。対して今のラジオミールは、明らかに高級機という打ち出しを、より立体的なケースを持つ「ラジオミール1940」に譲った。にもかかわらず、ドンツェとのコラボレーションは、高級機としての体裁をラジオミールにもたらしたのである。

(右上)オリジナル同様の構成を持つ文字盤。文字盤の一部を削り、そこに蓄光塗料を流し込んでいる。文字盤は従来通りのつや消しの黒だが、下地の処理が改善された結果、強い光源下でも白濁しにくくなった。(左上)現在のパネライの実力を示すのが、ねじ込み式のリュウズである。チューブもねじ込み式で、それ自体交換可能だ。ケースの磨きが優れていることは、ケース側面へのリュウズの映り込みを見れば明らかだ。(中)ケースサイド。形状はオリジナルに同じだが、仕上がりははるかに良くなった。なお、現行のルミノールは基本的に300m防水だが、ラジオミールは100mに留まる。(右下)4時半位置から見たケース。オリジナルのラジオミールは、冷間鍛造で加工しやすく、ダイバースーツなどにも引っかかりにくい形状を持っていた。ラグが別体のワイヤ式なのは、1930年代の加工技術では、ラグを残したまま鍛造で抜くのが難しかったためである。しかし、パネライはその形状を生かして、質だけを改善した。(左下)ケースバック。古典的な12角形の裏蓋を持つ。おそらく、ロゴなどの加工はエッチングだが、深さも適当で、刻印も荒れていない。ケース本体同様、極めて良質だ。