IWC/アクアタイマー Part.2

FEATUREアイコニックピースの肖像
2019.10.17
広田雅将:取材・文 吉江正倫:写真
[連載第53回/クロノス日本版 2019年9月号初出]

Part.1 から見る
https://www.webchronos.net/iconic/34934/

軍用として華開いたチタン切削技術の集大成

OCEAN 2000 BUND
オーシャン2000 BUND

オーシャン2000 BUND[1983]
ドイツ連邦海軍向けのダイバーズウォッチ。その民生用がオーシャン2000。これは標準的な耐磁性能を持つRef.3509。自動巻き(Cal.375、ETA2892ベース)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。Ti(直径42 mm)。最低300m防水。個人蔵。

 1967年に発表された初代アクアタイマー(Ref.812AD/1812)は、ケースに内蔵した回転ベゼルと、ねじ込み式のリュウズではないCAT防水システムを持つ、ユニークなダイバーズウォッチだった。しかし、初代〜第2世代アクアタイマーと現行モデルに、設計上の共通点はほぼない。むしろアクアタイマーの在り方を決定づけたのは、82年に発表されたポルシェデザインとのコラボレーションモデル「オーシャン2000」だった。

 1980年春、ドイツ連邦海軍は「新しいダイバーズウォッチ」の仕様書を、取引のあるすべての会社に送付した。その一社に、VOD傘下のディール・アビオニクス社があった。同社のギュンター・ブリュームラインは、この仕様書を持ってIWCに参画。すでにコラボレーションをしていたフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェをデザイナーに、テクニカル・ディレクターのユルゲン・キングを設計者に起用し、プロジェクトを進めることとなった。

 課題となったのは耐磁性だった。ドイツ連邦海軍は新しいダイバーズウォッチのユーザーのひとつに、磁気機雷を除去するダイバーを想定していた。そのため、時計には完全に磁気帯びしないことと、高い耐水性能と視認性、そして操作性が求められた。対してIWCは、ETA2892の脱進機を非磁性の素材に置き換えたほか、ケース素材も軽くて磁気を帯びにくいチタンに変更。完全な防水性能を与えるべくケースからヘリウムエスケープバルブが省かれ、誤操作を防ぐため、押して回す新しい回転ベゼルが採用された。

 このモデルの民生版であるオーシャン2000は大ヒットを遂げたのみならず、以降のIWC製ダイバーズウォッチの設計を、根本から変えることとなる。

民生用とBUNDの違いはベゼルと風防。BUNDは硬化処理が施されたほか、視認性を向上させるためフラットな風防を採用する。

民民生用と同じダイアル。DIN 67510の基準に従いインデックスには夜光塗料が埋められている。分針は視認性を高めるためオレンジとなった。

ケースサイド。民生用は2000mに耐えられる防水性能を持つが、BUNDに求められた防水性能は最低300mである。ケースの密封度を高めるため、あえてヘリウムエスケープバルブは廃された。

裏蓋にはドイツ連邦海軍を意味するBUNDと、Ref.3509固有の登録番号である6645-12-197-9681が刻まれる。

多くのプロフェッショナルダイバーズ同様、リュウズは4時位置に設けられた。また、IWCのダイバーズウォッチとしては初めて、リュウズがねじ込み式に変更されている。