巻き上げ機構 第6回「パワーリザーブ Part.2」

FEATURE時計機構論
2017.03.24

パルミジャーニ・フルリエ
1998年に発表されたパルミジャーニ・フルリエ初の完全自社製造ムーブメント、Cal.PF110は、独創的な設計の名機。ケースに合わせたトノー型の形状に2個の香箱を収め、手巻きで約8日間というロングパワーリザーブを実現。これを搭載する「カルパ XL エブドマデール」は、ブランドの代表作になった。12時位置に1〜8日を示すハンド式のパワーリザーブ表示をレイアウト。
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

 ここまでパワーリザーブの例に40時間を使ってきたが、それは、従来の腕時計の大半がこの40時間近辺に集中しているからである。ブランドを問わず大量に使われてきた汎用ムーブメントのスペックがほぼ40時間台にあるのもその理由。実際のパワーリザーブは、主ゼンマイ、歯車を組み合わせた輪列、脱進機、調速機、あるいは調整やパーツの素材、さらにはユーザーの使い方など、さまざまな要素が複雑に絡み合って決まるから、スタンダードなムーブメントとしてはそのあたりが落ち着きどころになっている。

 これに対して標準を超えるロングパワーリザーブをもった、独自色を打ち出した自社ムーブメントの開発も1990年代に進んでいた。手法としては、香箱(バレル)の数を増やしてパワーを増強する方法だ。A.ランゲ&ゾーネのCal.901.0=2バレル手巻き約72時間、ショパールのL.U.C 1.96=2バレル マイクロローター自動巻き約65時間、同じくショパールのL.U.C 1.98=4バレル手巻き約8日間、パルミジャーニ・フルリエのPF110=2バレル手巻き約8日間などが有名だ。

 2000年代に入ると、ロングパワーリザーブモデルは格段に増える。皮切りは、香箱1個に長尺のゼンマイを収め、ペラトン式自動巻きで約7日間のパワーリザーブを実現したIWCのCal.5000(2000年)。5000系は同社のパイロットウォッチや永久カレンダーなどに使われ、その後のIWCの自社ムーブメント開発にとって重要は礎となった。