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天文表示第3回「ムーンフェイズ機構 Part.3」(1/3)

A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1・ムーンフェイズ」
2017年にアップデートされた「ランゲ1・ムーンフェイズ」は、2002年に発表されたファーストモデルから受け継がれる、高精度ムーンフェイズの精蜜な機構を搭載。分針と連動して24時間休みなく動き続けるムーンフェイズ機構の表示誤差は約122.6年で1日。手巻き(Cal.121.3)。47石。2万1600振動/時。18KPG(直径38.5mm)。450万円(税別)。㉄A.ランゲ&ゾーネ☎03-4461-8080
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

ムーンフェイズ機構 Part.2の最後に述べたように、今回はムーンフェイズの表示スタイルについて様々なバリエーションを紹介していく。しかし本題に入る前に、前回説明をした122.6年間で1日分の誤差しか生じない高精度ムーンフェイズについて、その機構をA.ランゲ&ゾーネの「ランゲ1・ムーンフェイズ」を例に補足しておこう。

 59歯のディスクを1日に1歯ずつ送る最も古典的なムーンフェイズの方式では、ディスクは1日に1回切り替わる時だけ動き、それ以外は1日中静止している。これに対して「ランゲ1・ムーンフェイズ」の超高精度ムーンフェイズのディスクは、時刻表示の針と同様に24時間動き続ける、つまり“連続作動”ムーンフェイズである点が異なり、実際の月の運行をほぼ忠実に再現していると言える。

 ディスクを常時回しているのは、3枚の連続した中間車である。この歯車機構は分針を動かす歯車(筒カナ)と連動して運動エネルギーをムーンフェイズディスクに伝える。1日あたり24周、1440分も動く分針にムーンフェイズを連動させることによって、ディスクの極めて細かな連続運動を実現したところが秀逸だ。

 同社のカタログには次のような分かりやすい説明があるので以下引用する。(2005/2006年度版より)

「月の周期を29日12時間44分3秒(朔望月)と設定し、1回の朔望月につき57秒というごく微量なレベルまで表示誤差を削減することに成功しました。数学的に見ると、誤差はわずか0.002パーセントという計算になります。ムーンフェイズが正しくセットされ、その後時計が一度の中断もなく動き続けた場合、ムーンフェイズ表示は、122.6年間で1日分のずれを修正するだけで十分です」

 このムーンフェイズ機構は時刻表示と連動しているため、ユーザーがムーンフェイズ表示を例えば満月に合わせる場合、実際の月がちょうど満月になる時刻を調べ、何時何分の分単位をも考慮して調整するようになっている。高精度ムーンフェイズ機構の本領を発揮させるには、セッティングにも厳密さが求められるのだ。

現行「ランゲ1・ムーンフェイズ」が搭載するムーンフェイズ機構。ムーンディスクは、色の濃淡で昼夜を表現する天空ディスクと月相表示の2層構造に変更された。筒カナに連結された①〜③の中間車によって減速させることで、月の満ち欠けが一巡する1回の朔望月との表示誤差が約57秒という高精度ムーンフェイズを実現した。また、別系統の④〜⑤の輪列を介して天空ディスクを24時間で1回転させている。このように、月の動きと空の動きを表示する別々のディスクを同軸上に置くことで、昼夜の移り変わりと月相表示を巧みに表しているのだ。
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