MEMBERS SALON

鳴り物時計第4回「ミニッツリピーター Part.2」(1/3)

A.ランゲ&ゾーネ「ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター」
ディスクを巧妙に用いた瞬転数字式のデジタル時刻表示に、1時間・10分・1分単位による10進法ミニッツリピーター機構を組み合わせる。聞き取ったゴングを打つ回数が、ダイアルから読み取れる1時間・10分・1分単位を表示する各数字と同じなのが最大の特色。通常の円環とは異なる形状のゴングや、左右対称に配置された2本のハンマーも独特だ。2015年発表。手巻き(Cal.L043.5)。93石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約36時間。PT(直径44.2mm)。価格問い合わせ。㉄A.ランゲ&ゾーネ ℡03-4461-8080
奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

 ミニッツリピーターは、永久カレンダーやトゥールビヨンと並んで機械式時計における古典的な3大複雑機構に数えられる。この中で最も古くからあり、伝統的なスタイルを今なお守っているのがミニッツリピーターと言える。前回紹介したように、時刻を音に変換するためのカムの仕組み、ハンマーとゴングによるチャイム音、時間・15分・1分の組み合わせによる時刻表示など、基本的な作動原理と機能は懐中時計の頃とほとんど変わりない。伝統的な機械式時計が現代の先端技術によって進化し続ける中で、ミニッツリピーターだけがそのような潮流の外にあって、悠然と我が道を歩んでいるかのように見える。しかし、最近になって興味深い革新が続々と登場してきて、にわかに活気づいてきた。これからいくつか紹介しよう。

 まずひとつが音響科学的なアプローチである。筆頭は2016年にオーデマ ピゲが発表した「ロイヤル オーク コンセプト スーパーソヌリ」だ。トゥールビヨンとクロノグラフにミニッツリピーターを組み合わせたこのモデルは、「スーパー」と名乗るだけあって、発する音が従来品より格段に大きいのが特色。鐘に相当するワイヤー状のゴングをムーブメントに固定するのではなく、時計部分から独立させ、特殊なハーモニーテーブル(音響盤)に取り付けて反響音を増幅させるという仕組みだ。バイオリンやギターのように、弦の振動がサウンドボード(表板)を伝ってボディの鳴りを生むのと同原理である。

 ショパール マニュファクチュール20周年を記念して2016年に発表された、同ブランド初のミニッツリピーター「L.U.C フル ストライク」は、サファイアクリスタルでまさに透明感のあるクリスタルサウンドを実現する、これまたユニークな設計である。一般的なスティール製ゴングに代わり、このモデルではサファイアクリスタルで作られたリング状のゴングが用いられ、さらにこのゴングと時計の風防が一体構造で、ひとつのサファイアクリスタルの塊から加工したという斬新な設計だ。また、ケース横にリピーター作動用のスライドボタンを持たず、モノプッシャー・クロノグラフのように、リュウズ同軸にそれを格納している点をはじめ、時間の数取りやガバナー、安全装置などにもさまざまな工夫が凝らされている。見た目はクラシカルなミニッツリピーターだが、技術的にはハイテクを駆使してリファインした極めて現代的な作品である。

 ユニークさにおいては、A.ランゲ&ゾーネの「ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター」(2015年)も見逃せない超大作。「ツァイトヴェルク」特有の大型デジタル表示にミニッツリピーター機構を加えたものだが、音による時刻表示が時間・10分・1分単位になっている点が古典的なミニッツリピーターと大きく異なる。従来のように時間数と1桁の分数の間に15分単位のクォーターが置かれていると、分数を知るには、例えば(15×1)+3=18とか、(15×3)+7=52と計算しなくてはならないが、このモデルのように10分単位ならより直観的に把握しやすい。ダイアル面に配されたハンマーとゴングのデザインも唯一無二の個性を演出している。

  1 2 3  
前の記事

鳴り物時計第3回「ミニッツリピーター Part.1」

おすすめ記事

正規時計販売店

正規時計販売店

高級時計を取り扱う全国の正規時計販売店をご紹介。各店が行うフェア情報やニュースもお届けします!

時計ランキング

時計ランキング

その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。

スペックテスト

スペックテスト

クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!

基礎からの時計用語辞典

基礎からの時計用語辞典

時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。

PAGE TOP