ミドリフグさんのブログ
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- Zenith 出撃状況管理クロック【外装修復:フレーム編】2025年08月04日23:11
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皆様ごきげんよう。
前回に引き続き外装の修復(フレーム編)となります。
ピースを収めるフレームの修復を行います。
<外装の現状(写真1)>
まずは状況確認からいきましょう。こちらのフレームは鉄にクロームメッキを施してあるのですが、この通りクロームメッキが剥離し、下地の銅層が露出してしまっております…軍用時代に磨き倒されたのでしょうか…?
しかしまぁこれは頭抱えますね…理由は次の項目から順次説明いたします。
ちなみにですが、写真は中性洗剤と柔らかいブラシで根気よく汚れを落とした後のものです。コンパウンドは薄いクロム層を削ってしまうので、今回はどうしようもなく頑固な汚れ以外には使用しませんでした。
<そもそもクロームメッキとは>
専門家ではないので詳しく語れはしないのですがご説明いたしますと、クロームメッキとは実は銅→ニッケル→クロムの三層構造となっております。
銅は素材表面の凹凸を埋め次のメッキの密着性を補助する役割、ニッケルは耐食性と金属光沢による装飾性の役割、クロムは耐摩耗性の役割となります。なお、クロム層は基本的に極薄でほぼ透明のコーティングに近いです。このクロム層の薄さで反射する波長が決まり、これが特定の膜厚となることで下地のニッケルの金属光沢が合わさりあの美しい白銀の輝きが得られるわけです。
長くなりましたが要は、単純に見えて実はクッッソ複雑かつ繊細な技術の賜物なのです。
<修復にあたって>
クロームメッキは上記からわかる通り、複雑な手順と熟練の職人技が要求される代物であるため個人では非常に困難な手法であり、また、部分的に再メッキすることもできません。こうなってしまっては業者に頼んでメッキを一度すべて剥がし、再メッキしてもらうしか手はないのですが…
いやぁ~流石にそれはちょっとやりたくない…
剥離箇所以外はまだ健全といえる状態なのにこれを全部再メッキするのはちょっとなぁ…ビッカビカな新品同然の鏡面仕上げにはなりますがね(笑)
しばらく頭を抱えましたが、「銅の上にニッケルなら再メッキできるし、生きてるクロームメッキも傷だらけで本来の輝きを失っているこの状態ならニッケルメッキだけでも雰囲気近くなるんじゃ…」とふと思い立ちました。このまま銅むき出しでいるよりはまぁマシでしょう…
<再メッキと完了後の姿>
ということで棚から「めっき工房(写真2)」を引っ張り出し、祈るような気分でニッケルメッキを施してみました。これについてはただ説明書通りにメッキを施すだけなので細かい手順は割愛します。大事なのはとにもかくにも脱脂です。
作業中に写真を取り忘れるという失態を犯してしまい、組み立てた後の写真になってしまうのですが、写真3が施工後になります。8~10時の辺りがもともと剥離してしまっていた場所です。
…いかがでしょう?
あからさまに「銅メッキでござい」な状態(写真1)と比べると随分マシにはなったと思いたいです…ニッケル自体はやや黄味がかった銀色なので、手にとって間近で見たり、強いライトを当てると、流石に違いがわかってしまいます。
とはいえ棚に飾って自然光で眺める分にはあまり気になりません(笑)
<次回予告>
…前回に引き続きもはや時計の記事であることを忘れてしまいそうです(ごめんなさい)。
そんなですが次回も懲りずにケースの修復を行っていきたいと思います。外装はこれが最後です。
- ゼニス