ミドリフグさんのブログ

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Zenith 出撃状況管理クロック【ムーブメント修復:再起動編】2025年10月06日05:01
皆様ごきげんよう。
今回も引き続きムーブメントの修復を行ってまいります。
前回はとりあえず目に見えて終わっていたゼンマイとテンワの交換を行いました。
ここまで来たらパパッとやってチャチャッと終わらせてしまいましょう。気付けば時計の状態よりバラバラの状態の期間のほうが長くなっていました(泣)

<アンクルの交換(写真1)
写真の通りアンクルの剣先がひん曲がっている状態です。最初はパーツ交換しない方針でやれないかと思い、曲げの矯正を試みましたが、こんな髪の毛のような部分でも思ったより硬く、アンクルの軸ごとひん曲がってしまいそうだったので断念。諦めて交換となりました。実はこれもハズレ個体であることが後に発覚し後で更に交換するハメになるのですが…(後述)

<仮組み→パーツチェック>
とりあえずあからさまに終わっている箇所は交換したのでこれで一旦組んでみましょう。
ゼンマイ巻いて…動きました!…が、ものすごく弱々しく今にも止まりそうな状態です。タイムグラファーで測定してみたところ、なんと振り角177°にビートエラー2.9ms(写真2)…これでは「時計の形をした文鎮」「時計っぽい文鎮」にランクアップしただけですね…
一度バラしてパーツを一つ一つ顕微鏡で見てみると(最初からやれ)、ホゾ穴に筆+超音波では落ちなかったネットリ油が…どれくらいネットリかというと、歯車を指で回そうとしても抵抗を感じるほどにネットリです。よくぞこれで動いたものですね…数十年熟成の油分恐るべし…!

他の部品を見ていきましょう。
1~4番車は特に問題は無いようでした。が、しかし、先程交換したアンクルを見たところ、爪石の先端が欠けておりました(写真3-①)。更にガンギ車を見てみたところ、歯車の先端が削れてバリのようなものができておりました(写真3-②)
こうした小さな不良の積み重ねが、動力の伝達を妨げる「トルクロス(摩擦や力のロス)」を引き起こしていたのでしょう。原因がわかればやるべきことは…

・ホゾ穴の徹底洗浄
・アンクル、ガンギ車の交換

となります。

<結果>
掃除木を使ってホゾ穴の徹底洗浄、アンクル・ガンギ車を状態の良いものに交換し、再度組み付けます。もう組んでいる途中から歯車の動きが全然違うのがわかります。これは期待大ですね。
ゼンマイ巻いてみましたが、見るからに動きが違います。ワクワクしながらタイムグラファーに乗っけてみたところ、平置きで振り角320°、ビートエラー1.6msまで改善されておりました。振り角はともかくビートエラーまでもがここまで改善されるとは(2.9ms→1.6ms)。爪石バッキバキでしたもんね…(写真3-①)
後はヒゲゼンマイの取り付け角を調整することでビートエラーを改善するのですが、こういった古い時計はブリッジにヒゲ持ちという便利機能が搭載されておりません。したがって天真に固定されているヒゲ玉を直接動かす方法しかないのですが…

これは素人には無理だ…

<次回予告>
ド素人の時計屋さんごっこはここまでやればもう上出来だろうと思い、ビートエラー1.6msには目をつぶって、1週間ムーブメントの様子を観察して問題なかったらそのまま仕上げてしまおうと思っていたのですが、やっぱり気になって夜も眠れない日々が続きます…
気付けば、ヒゲ持ちの無いタイプのビートエラー調整方法を寝る間も惜しんで調べておりました。
次回は最終回、地獄の精度調整編です。果たしてド素人がどこまで精度を詰めることができるのでしょうか…
  • zenith

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写真1
写真2
写真3
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