ミドリフグさんのブログ
(一般に公開)
- デッキウォッチの魅力 その32026年03月14日13:05
-
皆様ごきげんよう。
イギリス海軍のデッキウォッチシリーズも気付けば第三弾であります(笑)
今回はダイヤルの前期型と後期型を比較してみたいと思います。
ということで早速本題に参りましょう。
<ダイヤルの仕様変更>
これまでZenithのデッキウォッチをご紹介してきましたが、当然ながらデッキウォッチはZenithの独壇場でもなんでもなく、複数のメーカーが軍に供給しておりました。仕様に制約はあるものの、ある程度はメーカーの裁量に委ねられていたそうで、当時の各メーカーのデッキウォッチを見比べてみると、各社、いかに見やすくするかの試行錯誤の跡が見て取れます。ローマ数字 vs アラビア数字、スペード針 vs ブレゲ針、バーインデックス vs レイルウェイインデックス vs 幾何学インデックス(菱形+三角など)、0.2秒刻み vs 0.5秒刻み vs 1秒刻み、センターセコンド vs スモールセコンドなどなど…メーカー間の差異はもちろん、同じメーカーでも途中で仕様変更がされるなど、多種多様なデッキウォッチが世に放たれました。
Zenithも例外ではなく、読み取り誤差を減らすための研究に基づき複数のタイプの文字盤が製造されました。
<初期型VS後期型ダイヤル① ~おさらい~>
前後期で記事を分割してご紹介しましたため、「そもそも前期型と後期型って何が違うんだっけ?」と思われる方も多いかと思います。ということで並べた写真を見ながら、改めて相違点を列挙してみましょう(写真1)。右が前期型、左が後期型ダイヤルとなります。今回で新たに各針の長さも測定してみました。
【数字】
前期型:曲線的で細身の優美なアラビア数字
後期型:直線的で太い実用的なアラビア数字
【インデックス】
前期型:長いインデックス
後期型:短いインデックス
【時針】
前期型:短く先端が細い(12.9mm)
後期型:長く先端が太い(14.3mm)
【分針】
前期型:先端が細い(19.8mm)
後期型:先端が太い(19.6mm)
【秒針】
前期型:長い針(19.8mm)
後期型:短い針(19.2mm)
こうして比較してみると、針について少し面白い事が判明して、
・前期型:分針=秒針>時針
・後期型:分針>秒針>時針
といった具合に長さについても差別化を図っていたようで、針の役割がより明確に分離されています。
<初期型VS後期型ダイヤル② ~実用性の差~>
では前後期での違いがわかったところで実際にこれらの仕様変更がどう判読性に影響をもたらしたか実践してみましょう。あくまでも主観ベースであることに留意くださいませ(笑)。
【分針の読み取り】
前期型の分針は長さがインデックスの外周円とツライチになる長さで設計され、また、先端が非常に細く仕上げられており、インデックスと針が重なる時刻の時、針がインデックスと綺麗に一体化するほどです(写真2右)。
対して後期型の分針はインデックスの外周円から少しはみ出る長さで設計され、針の先端は太く仕上げられています。これにより外側まで突き抜けた太い針がインデックスを完全に覆う形となります(写真2左)。
【秒針の読み取り】
前期型の秒針は分針と長さは一緒ですが、高差があるため、見かけ上はインデックスの外周を僅かに飛び出るように映ります(写真2右)。が、肉眼で見た場合ほぼツライチにしか見えません(笑)。
対して後期型の秒針は短く設計されており、インデックスの外周円に僅かに届かないように映ります(写真2左)。こちらも僅かな差でしかないのですが、不思議とこちらは肉眼でもハッキリとそれを認識できます。
【で、結局どっちが読みやすいんだよ】
結論から言うと、これは後期型ですね。一つずつ理由を上げていきたいと思います。
まず、針の太さについて、前期型は分針の先端が本当に細く、インデックスが重なる時は完全一体化、重ならない時はインデックスがもう一本増えたような錯覚となり、どの「線」が針なのか識別するのに一瞬だけ脳が処理落ちするのですよね(笑)。
次にインデックスの長さについて、精密な時刻読み取りを行う際、視線は針の先端に意識が集中します。そのためインデックスが長いと、長い線なのか、短い線なのか判別しづらくなるのです。対して、後期型はかなり短く再設計されたため、針の先端に意識を集中してもインデックスの長短が一瞬で判別がつきます。
…前期型を散々こき下ろしましたが、この段階ではまだ、両者致命的なほどに差があるというほどでもありませんでした(前期型だって1971年まで現役だったわけですものね)。しかし、分針と秒針がニアミスする時刻の読み取り(写真3)。ここで前後期の明暗がハッキリ別れたという感じです。
前期型で分針と秒針がニアミスした時、
・針が細すぎてインデックスがもう一本増えた錯覚に陥る(分針・秒針)
・針の先端を意識していると、インデックスの長短の区別が一瞬遅れる(分針・秒針)
・どちらも先端が細すぎ&長さがほぼ同じのため分針と秒針の区別が一瞬付かなくなる
といったことが同時に脳を襲います(笑) (写真3右)。
対して後期型は、
・分針:インデックスを覆うほどに太い
・秒針:インデックスと同じ太さだが短いため判別しやすい
ということに加え、先程ご紹介しましたように各針の長さが分針>秒針であるため、2つの針がニアミスしても針の長さから一瞬で各針の区別が付きます(写真3左)。
と言った具合で最終的な実用性は後期型に軍配が上がりました。
……これ書いてて思ったのですが、判別のしやすさは文字盤のインデックスよりも針によるファクターの方がデカいのでは…?
正直、この1mmにも満たない長さ・太さの調整がここまで判読性に効いてくるとは思ってもいませんでした。
しかしながら、実用性は後期型に軍配が上がったものの、デザインは断然前期型ですね(笑)。
<もう一つの後期型ダイヤル>
さて突然ですが、実は後期型にはもう一つのパターンが存在するのはご存知でしょうか。この記事を読んでいる方の大半は別の機会で見ているはずです。
そう、クロノス3月号第123号の「時計愛好家の生活」コラムに掲載されていたZenithのデッキウォッチ、あれこそがもう一つのパターンの後期型なのです。
前期型→後期型に移り変わる時期に存在していたと思われる文字盤で、今までの個体を見てきた限りだと、シリアル6000番台のあたりで2パターンが混在しているのではと考えております。デッキウォッチの記事書いている最中の出来事だったのでビックリしました(笑)。あれ探しているのですが全然市場に出ないのですよね…羨ましいですね〜。
<10進法ダイヤル>
さらに戦後、一部のデッキウォッチは軍による改修によって「10進法ダイヤル」が導入されました。文字盤の外周部に10進法のインデックスが設けられた、独特な文字盤となります。Zenithのデッキウォッチも例外ではなく、一部が10進法ダイヤルへアップデートされ、少数ながら市場に出回っております。これもいつか手に入れて記事にしたいですね~。
<次回予告?>
ここまで読んでいただいた方は、「これでデッキウォッチの記事も終わりだな。もうネタ切れだろ」と思われる方も多いかと思います。
実はこれらの一連の記事書いている途中にもう4つデッキウォッチ落札してしまいして…(笑)
まぁうち3つは部品取り用のジャンクなのですが…とまぁそんな事情でもう少しだけこのシリーズ続きます(笑)
突然の出会いと落札だったので正直まだ構成も何も考えていないのですが、「民間向けのデッキウォッチ」について書いていきたいと思います。もう少しだけお付き合いくださいませ…(笑)
とはいえまだ届くまで時間かかりそうなので、もしかしたらその間に別の時計をご紹介させていただくかもしれません。ちょっと大物が手元に来ましたので、こちらもぜひご紹介したいのですよね(笑)
ではまた次も読んでいただけたらと思います。
- zenith




