ミドリフグさんのブログ

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デッキウォッチの魅力 番外編2026年04月15日02:11
皆様ごきげんよう。
前回の次回予告で触れましたデッキウォッチが無事届きました。
実際はもうちょっと早く届いたのですが、もういい加減パンク状態の棚の置き場所確保に時間がかかったのと、また仕事が激化してですね…(笑)
5月末までは職場と自宅を行き来する日々が続きそうですね(白目)

さぁ言い訳タイムはここまでにして早速本題に参りましょう。
実を言うと今回ご紹介する時計はデッキウォッチではないのですよね(笑)
なのでタイトルも番外編といたしました。
ではこの時計は一体何なのでしょう。順を追ってご説明させていただきます。


<インフラと広告>
こちらは厳密な名称が定義づけられている訳ではありませんが、「店頭用ウォッチ」と呼ばれるもので、店のショーケースなどに置かれていた広告用の時計となります。
では、これらは一体どのような役割を果たしていたのでしょうか。
今でこそ我々は、スマートフォン一つで正確な時間を簡単に確認することができますが、100年前はそうもいきません。当時の人々にとって、正確な時間を知る手段は限られており、その一つがこの店頭用ウォッチによる時刻合わせだったのです。

また、現代の時計メーカーは自社の時計に対して、あらゆる観点から付加価値を付けておりますが、当時は時計の価値=精度の高さと言わんばかりに、各社が精度を追求した時代でもありました(無論実態はそれだけではありませんが)。
このような時代背景から、腕自慢の時計メーカーが高精度時計を「インフラ」として各地に設置し、蓋裏にブランドの広告看板を貼る事で「時刻合わせサービス」と同時にブランドの宣伝も兼ねた販売戦略をとっていたわけですね(写真1)。メーカーとしては会社の知名度向上と精度の高さの実演を同時にできて一石二鳥だったわけです。
ちなみにこういった店頭用ウォッチ、Zenithの他にはオメガやロンジンなどが有名です。さすがの顔ぶれですね~。


<民間から軍用へ>
そんな店頭用ウォッチですが、WW2の時代にその役割を大きく変えることとなります。
この時代、ドイツでは深刻な物資不足に陥っていました。
当時、国家戦略において高精度時計の担う役割はとても重要で、極論これがなければ外洋への進出ができなくなるといっても過言ではなく、デッキウォッチの魅力その2で触れました「イギリス軍のクロノメーターの配給体制」からも当時いかに重要な装備であったかを伺うことができます(よろしければ読んでやってください)。
こうした背景から物資が不足したドイツでは、基準をクリアした民間時計も「徴兵」の対象となりました。腕自慢の時計メーカーによる、高精度を売りにしていた店頭用ウォッチも当然ながらその槍玉に上がります。こうして本来「精度の象徴」であった時計は、本来の役割を離れ、「デッキウォッチ」として戦場へと駆り出されていったのです。

ではこの個体がそうなのか?というと実はそんなことはなく、これらは平和にその役割を終えることのできたと思われる個体となります(笑)
資料によれば、これと同モデルの店頭ウォッチが「徴兵」された記録はあるものの、戦場に出た個体は軍による管理番号と鷲の紋章が振られますので、それらが見当たらないこれらは恐らく戦場には出ることがなかったのではないかと考えております。
せっかく同一モデルが手に入ったのでデッキウォッチと絡めてご紹介したかったのです…


<脱線:この個体との出会い① ~大胆な出品~>
この個体について見ていく前に、少し脱線して、この時計の入手エピソードについて話させてください。
まず前提として、eBayの出品形態の一つに「時計の同時大量放出」があります。これは一度に複数個の時計を動品・不動品ゴチャ混ぜで数万円という格安価格で放出するというもので、懐中時計ではよく見る出品形態です。
さてこの時計、前回までのデッキウォッチのブログを書いていたとある日、彗星の如くeBayに出品された品物なのですが、なんと上記の形態の出品で、4つセットでの販売というものでした。こういった「そこそこレアな時計」の同時大量放出は初めて目の当たりにしたので最初は度肝を抜かれました(笑)
『古い時計工房買ったら、これらが倉庫の隅に眠っていて自分には不要だから放出する』とのことでした。
いうて懐中時計と比べたら当然値は張りますが、4つセットということを考えると破格すぎたので、これは千載一遇のチャンスとばかりに気合い入れて無事落札したものがこちらとなります。これはもう時計の神に感謝ですね…


<脱線:この個体との出会い② ~おしゃべりドイツ人~>
通常、eBayでは出品者とのやり取りは無く、あったとしても一言二言程度のドライな関係なのですが、今回はとにかくお喋りしたくてしょうがないといった出品者で、『ヤッホー、今梱包終わったよ~』など逐一配送の進捗報告メッセージが届きます(笑)
そして進捗報告の文末に添えるメッセージが本題と言わんばかりに『あなたは時計師か何かなの?』、『どこのブランド好き?』等々色々尋ねてきます。最初は「律儀な出品者だなぁ」と思っていましたが、途中から「おまえ実はただ雑談したいだけだろ!」と心の中でツッコミを入れながらやりとりしておりました(笑)
最後は『今度日本いきたいなぁ』といったよくある社交辞令だったので、「日本来てくれたら寿司奢りますよ」と返しておきました(笑)
こうして一連のやり取りでしょうもないドイツ語スラングをいくつか覚えてしまったのであります。


<これらの個体について① ~広告~>
ついつい時計に関係ない話をしてしまいましたが本題に戻りましょう。
写真1の通り、蓋の裏には金属製や紙製の広告が収められております。これらは様々な言語で書かれており、写真の個体はドイツ語・フランス語・スウェーデン語(!)となっております。これらから当時のZenithの販路を伺うことができますね。
広告の内容は各国共通仕様で、上半分で「正確な時間」といった意味合いの宣伝文句、下半分で「クロノメーター ZENITH GRAND PRIX PARIS 1900」といった、パリ万博におけるグランプリ受賞をアピールする構成となっております。余談ですが下半分の宣伝文句はアンティークのZenithでよく見るおなじみの広告となっております(本っ当によく見ます)。
ちなみに広告上半分の謳い文句ですが、正確には…

 ・ドイツ語:GENAUE ZEIT.(正確な時間)
 ・フランス語:L’HEURE À LA SECONDE(秒単位の時刻)
 ・スウェーデン語:RÄTT TID(正しい時間)

となっております。
シンプル・イズ・ベスト。至って堅実な内容です(笑)


<これらの個体について② ~ムーブメント~>
ムーブメントはΦ42mmなのでCal.19系のムーブメントとなります。
写真2の左端の個体はムーブメントが外されており、テンプとコハゼが消失しておりました。『直して使うか部品取りに使ってね』とのこと。
右から2番目の個体はコハゼのバネが折れていたためゼンマイが巻けない状態です。まぁこれはすぐに直せるでしょう。問題はこのタイプのコハゼ積んでるリファレンスは生産数が少なく、部品取りでもそこそこなお値段がするのですが…(汗)
残り2つは動作するようでした。

シリアルは左から1954093、1671331、1953999、2067709であり、推定製造年は順に1915年、1913年、1915年、1915年となりますが、ぶっちゃけこのあたりの製造番号は結構あやふやなので目安となります。
ちなみに一番右の個体はニッケルメッキ、それ以外の3つは金メッキが施されております(写真3)。ニッケルメッキの個体は「3 ADJ」の刻印があることから3姿勢での調整がなされている事がわかります。また、当然ながらバイメタル切りテンプ・ブレゲ巻き上げヒゲを搭載しており、「この時代のZenithの標準的な仕様」となっております。


<一区切りと次回予告>
さて、これで手持ちのデッキウォッチについては今度こそネタ切れとなります。
とはいえまだ手持ちじゃないもので紹介したいデッキウォッチや、デッキウォッチにまつわる知識はまだありますので、次の個体を入手するまでお預けですね…気長にeBay に張り付いてまいります(笑)
当然ながら今回ご紹介した個体達も修理が必要なのでそれについてもいつか記事にしたいですね~。

次回ですが、去年の11月に到着して未だにご紹介できていないあの時計をいい加減記事にしないと、私のZenith愛が疑われかねないのでそちらをご紹介したいと思います(笑)
いやまぁ言い訳させていただくと、届いてから早速色々とトラブルに見舞われたり、有名すぎるがゆえに下手なこと書けないプレッシャーがあったりですね…(笑)
とそんな時計のご紹介となります…!ではお楽しみに~
  • zenith

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写真1
写真2
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