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『Camperの嘘、TIMEXの謎(前編)』 ❺ ~2018年05月19日07:35
(↑上写真:1980年代に発売された”Original Camper”の『初代手巻きモデル』。
  色々調べると秒針が赤や黄色、ウェーブマーク下にWATER RESISTENTの印刷があるモデルも)

目次
1.オリジナル・キャンパーを巡る世間の無知と故意の広告
2.ベトナム戦争の時代とは
3.Camperの嘘、TIMEXの謎


1.オリジナル・キャンパーを巡る世間の無知と故意の広告:


  TIMEX Original Camper
  この名前は誰でも知っているだろう。
  今回はCamper にまつわる『嘘と謎』にメスを入れる。

  ***

  まずは、TIMEXご本家によるOriginal Camper(復刻モデル)についての説明を引用する:



  『ベトナム戦争時に開発された、戦地での使用に耐えうる耐久性を備えながら
   修理や電池交換などを必要としない手巻き式のディスポーサブル・ウォッチ(使い捨て時計) 
   は、視認性や堅牢性の高さなど実用性に優れたものでした。戦後は民間でもこれらの時計に
   必要な機能を兼ね備えたものとして市販品の需要が高まり、TIMEXは1980年代にこの
   米軍仕様のミリタリーウォッチ「Camper」の販売を始めます。

  今回の復刻版は1980年代に発売された「Camper」をオリジナルとしたもので、
  当時の手巻き式ムーブメントが現在は製造できないことからクォーツムーブメントを
  採用しているものの、ドーム型のプラスチック風防、文字盤やケースなどの外装は
  3Dプリンタなど現代の技術を駆使し、当時の時計を忠実に再現しています。 』



  上記の説明に偽りはない。しかし、冒頭部分について、読み手がある『先入観』を
  持っていると、この意味が若干捻じ曲げられて理解されるだろう。
  その典型的な例として、別会社による以下のネット上の広告を引用する:



  『TIMEX(タイメックス)の名品と呼べるCamper(キャンパー)がベトナム戦争時に
   アメリカ軍に供給されていた当時の姿を忠実に再現したモデルTW2P88400として
   2016年に復刻しました
。ミリタリーウォッチの先駆けとしてはもちろん現代の実用時計
   としての基礎とも言えます。

  キャンパー自体はモデルチェンジを繰り返しながらデザインも変更され今日まで
  作り続けられていますが、初期モデルのデザインはやはり秀逸です。』



  お分かりだろうか。上記の広告は前半部分(=赤字部分)が真っ赤な嘘である。
  そして多くのユーザーがこの間違った理解をしているところに、
  売り手側の誇大広告による販売戦略と、
  それ以前に故意か無知かTIMEX歴史に対する稚拙な理解を垣間見るのである。
  ネット上の情報が如何に脆くて危ういものかも分かろう。


2.ベトナム戦争の時代とは:


  そもそもベトナム戦争とは何時のことか。
  この期間には幾つかの定義・諸説あるのだが、狭義の観点では一般的に
  アメリカが北爆を開始した1965年から1975年のサイゴン陥落までの10年間を指す。

  そしてこの10年間に多くの米軍兵士が戦場に送り込まれた為に大量の腕時計が
  必要になった。
  それがDisposable Watch、即ち、
  大量に安価で供給された使い捨ての『プラスチック時計』(※注)である。
  (※注: 実際のMIL-SPECでは金属製ケースもある)

  プラスチック=チープ・ウォッチ、のイメージが大きいのだが、
  そこは米軍MIL-SPECに準拠された内容ゆえに、
  強靭、とは到底言えぬが最低ラインの品質を確保していた。
  この時代の時計は勿論、全て手巻き式、ハック付き(一部例外あり)である。
  そして、この後のブログでもキーワードとなるMIL-SPEC番号『MIL-W-46374』が
  今回のミリタリーシリーズでも重要な役割と影響を及ぼす。


3.Camperの嘘、TIMEXの謎:


  閑話休題。話をTIMEX Camperに戻す。

  世間にはTIMEX、及びOriginal Camperに対して大きな『誤認』がある。
  TIMEXの腕時計は上記のベトナム時代の10年間には米軍に正式採用されていないのだ。

  第二次大戦前や個人が戦場に持ち込んだ時計、時限装置用時計等は例外として、
  ベトナム戦争で兵士が軍から支給された腕時計にTIMEXは存在しない。
  つまり、MIL-SPEC準拠の時計のイメージを巧みに利用して、
  広告宣伝に投影されたのがOriginal Camperの『真の素性』である。

  そもそもOriginal Camperが市販されたのは1980年代。ベトナム戦争終結後の話だ。
  ベトナム戦争とCamper登場は全く時代が異なる。
  それがどうして『ミリタリーウォッチの先駆け』、『現代の実用時計としての基礎』、
  とまで言えるのか。
  ベトナム戦争中にCamperが使われた等と言う表現は最早、論外の嘘としか言いようがない。

  ***

  巷の嘘の一つ目が、Original Camperがベトナム戦争で使われた、とする誤認である。
  嘘の二つ目は、TIMEX製腕時計がベトナム戦争で米軍に供給された、とする誤認。

  その『嘘』の背景にあるTIMEXの『謎』については後編で詳述したい。
  調べれば調べるほど、『TIMEXの闇』との格闘になるのだが・・・




※加筆・修正等は予告なく適宜行っています。
※検索用: ミリタリー、TIMEX、Original Camper、46374、46374
  • 気になる時計
  • ミリタリー

コメント

1番~5番を表示

2018年
05月19日
07:50

WEBクロノスが登場する前の2005年に、
弊HPで『デカ厚ブームの嘘、パネライの真実』、を発表した。
今回のお題はその続編に相当する内容であり、一連のミリタリーシリーズの中核に当たる。

予告を述べれば、
TIMEXとHAMILTONが『46374』という稀代のMIL-SPECでリンクした訳だ。
自分で言うのが何だが、久々にワクワクするお題であるが、
此処は『ブログ』の場所なので、簡潔に記すことを心掛けている。

2018年
05月19日
10:52

楽しみです。 ワクワク!

2018年
05月19日
13:25

3: LEM

インガソル ウォーターベリー クロック カンパニー の頃に第二次世界大戦用の時計を生産していたとのことで、てっきりベトナムでも軍に納品していたのだろうと思っていました。
ということは、キャンパーはベトナムでの軍規格に沿ったミリタリーウォッチのオマージュと考えた方がいいのですね。実はワールドフォトプレスのウォッチアゴーゴーにもベトナムで支給されたと一文がありました。多くの趣味人(僕も含めて)勘違いしていると思います。
なんか僕もワクワクします。ありがとうございます。^ - ^

2018年
05月19日
16:49

ジェジェさん、

どうなることやら。兎に角、続編は準備中です。

2018年
05月19日
17:00

LEMさん、コメントを有難う御座います。

本件を活字にすることには勇気が要りましたが、独自調査の上での決断です。
しかし、遂に解き明かせない事実も・・・
後編で具体的にご披露致します。
恐らくこのネタに興味ある御仁は片手以下だと思いますが、
DEEPにやると言ったご期待に沿えていれば嬉しいです。

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