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ゼンマイオヤジさんのブログ
(一般に公開)
- 『信州聖地探訪❿ 水運儀象台編』 ~2019年05月21日20:44
-
(目次)
1.水運儀象台とは
2.復元への情熱
3.その構造と特徴
4.水運儀象台の未来について
***
1.水運儀象台とは:
信州聖地訪問の大取を飾るに相応しいネタを。
松本城も素晴らしいが、今回の旅の最大の目的がコレだ。
長年、夢にまで見た場所である。
水運儀象台とは何か。
一言でいえば、『長年の歴史を重ねて中世で花咲かせた中国の科学技術の結晶の一つ』、
そんな傑作品がここ、ニッポンの下諏訪にあると言う不思議と感動。
この奇跡の邂逅を喜ばずして何であろう。
水運儀象台の機能や云々を語る前に、この大きな『不思議さ』こそを理解できないと
水運儀象台を創り上げた方々に対して失礼である。
この機会にクロノスメンバーにも少しでも興味を持って頂ければと思う。
2.復元への情熱:
羅針盤、火薬、紙、印刷の4つは古代中国の4大発明と呼ばれている。
近代の科学技術は全て西洋が発祥の地と思われるかも知れないが、
そうした時代はこの数世紀に過ぎない。
この水運儀象台が作られた11世紀頃は中国とイスラム世界が科学技術の
最先端国であったのだ。
特に、天文学、医学、農業は中国の御家芸とも言える。
その天文学が花咲いたのが宋の時代であり、
時の宰相であり科学者でもあった蘇頌(そしょう)こそが、この水運儀象台を完成させたのだ。
その時期は1088~1092年頃と推測される。
そして、蘇頌は水運儀象台の『設計図』とも言える『新儀象法要』を時の宋皇帝に献上、
その『設計図』の解読を山田慶児京大名誉教授率いる精鋭7名の専門家でスタートしたのだ。
1988年2月に水運儀象台復刻プロジェクトがスタートし、1997年3月に『竣工式』を迎えた。
この間約10年、総予算約4億円とも言われる巨大プロジェクトは寄付金等もあったにせよ、
下諏訪市予算から相当分が捻出されたものと推察する。
以下は蘇頌が残した水運儀象台のイラストである(出典:Wikipedia)
3.その構造と特徴:
水運儀象台には大きく3つの機能がある:
① 渾儀(こんぎ)= 自動で星を追尾するレンズの無い円筒形の筒を備える『望遠鏡』
② 渾象(こんしょう)= プラネタリウムを宇宙から見たような星座観測機(天球儀)
③ 昼夜機輪(ちゅうやきりん)= 時刻を表示する5階建ての木塔
そして、
それらの動力となっているのが『水車』である。
(詳細略)
元来、水車へ水を汲み上げることも手動であったが、ここではポンプを使っている。
『漏刻』の原理を応用した水力動力は脱進機による制御システムと合わせて
一日の誤差は約2分程度と高精度である。
場所柄、冬場の水道凍結対策も大変であるそうだ。
※ 限られた紙面では語り尽せないので、これ以上はまたの機会に。
4.水運儀象台の未来について:
儀象堂の方のお話をお聞きする内に、色々と問題もあぶりだされて来た。
例えば、
① 最上階に相当する『渾儀』は雨ざらしとなっているので、
昨年のような強烈な台風やゲリラ豪雨に直面すると、どうしても雨漏りが生じる。
その雨漏りが、水運儀象台の内部機構や装飾さえも蝕んでいくのだ。
たとえば透明アクリル板などで最低限のカバーを作り、少しでも風雨を凌ぐ工夫も
今後は必要ではないかと考える。
② メンテナンスの問題。
例えば人形の製作や服飾の製作など、出来る人がいなくなってきている。
人間の後継者不足、資金不足、と言った維持するマンパワーや財政難も
いずれ深刻な問題になりそうだ。
③ 宋の時代のオリジナルは完成後、30年間して侵略者により破壊された。
この儀象堂の水運儀象台はあと10年間でオリジナルの記録に並ぶことになる。
②の問題と密接に関係するが、今後、このような人類の遺産を社会・企業ぐるみで
正面から向き合っていかないと、存続さえも危うい。
老舗旅館や中小企業が直面するのと全く同じ問題が、ここでも懸念される・・・
***
復元された儀象台は中国に4台あるが、『星を示す機器の精度は
中国の儀象台の方が上だが、ほかの部分は下諏訪がいまだに世界一だ』、
とは中国から来日した蘇頌研究家のコメントである。
来年は蘇頌の生誕1000年にもあたり、中国では盛大に記念行事が行われるそうだ。
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