時計専門誌『クロノス日本版』編集部がおすすめする! “大人”のクォーツ腕時計8選

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2023.12.17

便利なクォーツウォッチは日常生活の心強い味方だ。しかし、安価なモデルも多く出回っており、30代、40代以上の“大人”の選択肢としては、二の足を踏んでしまうかもしれない。そこで今回は、時計専門誌『クロノス日本版』編集長の広田雅将、副編集長の鈴木幸也、編集の細田雄人、そして新人の鶴岡智恵子が、30代、40代以上の“大人”におすすめしたいクォーツウォッチをそれぞれ2本ずつ選んで紹介する。


『クロノス日本版』編集部おすすめのクォーツ腕時計

 時間が正確で、磁気や衝撃、あるいは振動に強いクォーツウォッチ。薄くて軽いため、長く着けていて疲れないという利点もある。一方でマーケットシェアが大きいがゆえに価格帯が幅広く、プラスティック製の安価なモデルが数多く出回っていることから、機械式腕時計に比べて「使い捨て」「一生モノではない」などといったイメージを持つ人もいるだろう。このイメージから、“大人の高級腕時計”として、選択肢から外してしまってはもったいない。

 機械式腕時計と比べると抑えられた価格で購入できるというのは確かだ。しかし、高価格帯のクォーツウォッチもまた、豊富にラインナップされている。上質な外装を与えることはもちろん、トルクが弱いクォーツウォッチの課題を克服し、太く力強い針を実現しているメーカーも存在する。また、こういった高価格帯のクォーツウォッチは、機械式腕時計と同じようにオーバーホールすれば末長く使えるモデルがほとんどだ。

 30代、40代以上の大人へ、日常を彩る「良い時計」として『クロノス日本版』編集部が提案したい、クォーツウォッチを8本紹介しよう。なお、今回おすすめを選定するに当たって、定価10万円以上の現行モデルという条件を設けている。金額は、高級腕時計の購入を検討している大人の読者を想定したためである。


編集長・広田雅将おすすめのクォーツ腕時計


おすすめ①ブライトリング「エアロスペース エヴォ」

 個人的にはアナデジの組み合わせはかなり好きだ。視認性を悪化させることなく、さまざまな機能を盛り込めるのもいい。このジャンルで群を抜くのはシチズンとカシオだが、ブライトリングも傑作を作り続けている。

 最新作のエアロスペースはETA E10.451.5を搭載した定番中の定番。見やすく、使いやすく、そして整備性も高い。

ブライトリング エアロスペース エヴォ

ブライトリング「エアロスペース エヴォ」
1985年、アナデジウォッチとして誕生したエアロスペース。その現行モデルが、2013年に誕生したエアロスペース エヴォだ。1/100秒クロノグラフ、カウントダウンタイマー、 第2タイムゾーン、アラーム、ミニッツリピーター、カレンダーなどの多機能を、リュウズひとつで操作できる。
クォーツ(Cal.ブライトリング79)。Tiケース(直径43mm、厚さ10.8mm)。10気圧防水。61万500円(税込み)。


おすすめ②シチズン「カンパノラ コスモサイン」AO1030-09L

 クォーツウォッチで面白い表現に挑み続けているのがシチズンの「カンパノラ」コレクションだ。他のモデルも良いが、個人的な推しは、「コスモサイン」だ。

 直径39mmの本作は日本人でも使えるモデル。4.0等星以上の恒星452個をはじめ、アンドロメダ銀河やオリオン大星雲などの星雲・星団を119個レイアウトした文字盤は圧巻だ。

シチズン「カンパノラ コスモサイン」AO1030-09L
“宇宙を小さな時計の中に閉じこめる”をコンセプトとしたコスモサイン。北緯35°の全天星座を星座盤に表示しており、時分針と逆まわりに回転することで、リアルタイムの星座を表示する。
クォーツ(Cal.4394)。月差±20秒。SSケース(直径39mm、厚さ12.5mm)。日常生活防水。29万7000円(税込み)。


副編集長・鈴木幸也おすすめのクォーツ腕時計


おすすめ①グランドセイコー「ヘリテージコレクション SBGN013」

 30~40代以上の“大人”が長く使えるクォーツウォッチとして、真っ先に頭に浮かんだのがグランドセイコーの9Fクォーツムーブメント搭載モデルだ。グランドセイコーのみが搭載を許される年差±10秒という高精度な年差クォーツムーブメントは都度都度、時刻を合わせなくても1年を通して±10秒以内の正確な時刻を提供してくれるから、安心なうえに手間がかからない。

 その中でも今回おすすめするGMT機能を追加したCal.9F86搭載機は、自分の本拠地の時刻をホームタイムとしてGMT針によって24時間制で表示し、移動した先の時差のある地域の時刻(ローカルタイム)を時分針で表示できるため、仕事での海外出張はもちろん、引退後の楽しみのひとつである海外旅行でも大いに役立つ、文字通り「一生もの」と言って良い人生の相棒だ! しかも、時針・分針・秒針・GMT針の4本の針が互いに干渉することなく独立して回転する「4軸独立ガイド構造」を採用しているため、時差のある地域の時刻に合わせる際に、時計を止めることなく時針のみを単独で修正できるので、年差±10秒という高い精度を決して犠牲にすることがない。

 これこそ、まさに年差クォーツムーブメントにふさわしい付加機能搭載モデルなのだ。

グランドセイコー「ヘリテージコレクション SBGN013」
2018年、「キャリバー9F」誕生25周年の節目に登場したCal.9F86搭載モデル。「4軸独立ガイド構造」が新たに追加された。
クォーツ(Cal.9F86)。年差±10秒。SSケース(直径40mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。38万5000円(税込み)。


おすすめ②ザ・シチズン「AQ4091-56M」

 グランドセイコーの9Fクォーツ以上に、高精度を“売り”にしているのが、シチズンのフラッグシップである「ザ・シチズン」の年差クォーツウォッチだ。その最高峰は何と言っても、年差±1秒の超高精度を誇るキャリバー0100搭載モデルだが、こちらは最も安くても税込み77万円~のため、より購入しやすい年差±5秒の年差クォーツウォッチである「AQ4091-56M」をおすすめしたい。

 1年でわずか±5秒の誤差しか生じないという驚くほどの正確さに加え、シチズン独自の光発電エコ・ドライブを搭載しているため、太陽光や室内のわずかな光で発電し、一度フル充電すれば、光のないところでも約1年半(パワーセーブ作動時)にわたって動き続ける。そのため、定期的な電池交換も必要ないというすこぶる便利なモデルなのだ。

 特に、ここで紹介する「AQ4091-56M」の文字盤は、1000年以上の歴史を持つ土佐和紙に、日本伝統の染色技法「藍染」を施した日本の要素を凝縮した独自の審美性をも兼ね備える。“ニッポンの大人”が一生ものの腕時計として所有するのに、これほど粋なモデルはない。

ザ・シチズン「AQ4091-56M」
2022年にコレクションに加わった藍染和紙文字盤モデル。ちなみにザ・シチズンは「シチズン オーナーズクラブ」に登録することで、最長10年のメーカー保証が受けられる。
光発電クォーツ(Cal.A060)。年差±5秒。Ti+デュラテクトプラチナケース(直径40mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。44万円(税込み)。


細田雄人おすすめのクォーツ腕時計


おすすめ①ユンハンス「マックス ビル メガソーラー」

 ソーラー発電や電波による時刻の自動調整、そしてスマートフォンとの同期といった、クォーツウォッチならではの便利機能。これらを我々は高性能な“メイド・イン・ジャパン”ウォッチの専売特許だと思いがちだし、実際、同ジャンルでの国産メーカーのプレゼンスは非常に高い。しかし、そんな日本メーカー一強の中で、実は奮闘しているドイツウォッチが在ることを忘れてはいけない。それがユンハンスの「マックス ビル メガソーラー」だ。

 シンプルデザインを極めたような見た目とは裏腹に、ソーラー発電機能を備えた電波時計である同作。電波受信国こそ日本、ドイツ、英国、米国の4カ国(と日本のJJY60の電波が受信できる韓国の一部地域)に限られるが、時刻の自動調整は魅力だ。仮に電波を受信できない地域だとしても、スマートフォンでアプリケーションと接続すれば、世界中、どこにいても時刻を瞬時に調整できる。

 また、個人的にはリュウズで時刻設定ができることも大きな利点だ。ボタンがゴチャゴチャ付いているわけでもなく、とにかく明快な操作性は着用者を選ばない。

 そして何より、忘れてはいけないのがその見た目だ。マックス・ビルによるキッチンクロックを踏襲したデザインはいわずもがな秀逸で、長期間所有していても飽きがこないはず。毎日着用する腕時計だからこそ、デザインは最も大切な要素だ。

ユンハンス マックス・ビル

ユンハンス「マックス・ビル メガソーラー」
ミニマルな意匠の「マックス・ビル」には多彩なバリエーションが存在するが、本作はソーラー電波時計の「メガソーラー」モデル。なお、メガソーラーの中には、さらにアラビア数字インデックスを備えたモデルやゴールドPVDが施されたモデルなどがラインナップされている。
光発電クォーツ(Cal.J101.85)。Tiケース(直径38mm)。30m防水。23万4300円(税込み)。


おすすめ②アイクポッド「デュオポッド」

 マーク・ニューソンデザインで、一世を風靡したアイクポッド。のちのルイ・ヴィトン「タンブール」の誕生を予感させるかのような、近未来感を携えたデザインはとにかくオシャレで、今見ても新鮮だ。しかし、オリジナルのアイクポッドは外装にコストを掛けすぎたのか、エボーシュを載せた“オシャレ時計”とは思えない価格設定が仇となり、最終的には休眠状態に。

 そんなかつての名作(迷作?)をオシャレな見た目そのままに、安価に提供すべく復活したのが、新生アイクポッドだ。本プロジェクトにはマーク・ニューソンこそノータッチながら、さまざまな分野の名のあるデザイナーたちが手掛けた各コレクションは、それぞれが魅力的。その中でも特にイチオシなのが、オリジナルをエマニュエル・ギュエがリデザインした「デュオポッド」である。エマニュエル・ギュエは言うまでもなく、1993年発表のオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オフショア」を手掛けたデザイナーだ。

 立体感あるケースや針の形状はまさに往年のアイクポッドだ。加えてムーブメントをクォーツとしたおかげで、ヘッドが軽くなり、装着感がかなり改善されている。そしてデュオポッドをイチオシする最大の理由が、2針であることだ。ステップ運針をする秒針がないため、慣れ親しんだアイクポッドデザインがクォーツムーブメントを搭載していても、まったく違和感がない。リデザインに長けたギュエの手腕が見て取れる。

 世界的プロダクトデザイナーが生み出し、オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オフショア」やロレックス「チェリーニ」コレクションのデザイナーによって手直しされた腕時計が、わずか10万円ちょっとで手に入る。クォーツウォッチで他人と差をつけたい人は、買わない手はない。

アイクポッド デュオポッド

アイクポッド「デュオポッド」
2019年に休眠から目覚めた新生アイクポッドが打ち出したモデルの中のひとつ「デュオポッド」。
クォーツ。SSケース(直径42mm、厚さ16mm)。5気圧防水。10万7800円(税込み)。


鶴岡智恵子おすすめのクォーツ腕時計


おすすめ①カルティエ「タンク マスト」

 自分自身の話となって恐縮だが、30代も後半に差し掛かり、ドレスウォッチの必要性をとみに感じている。何もフォーマルな場に行く時だけではない。年齢相応のファッションとなるとキレイめな格好だったり、スーツスタイルだったりが求められ、ゴツいスポーツウォッチを合わせると手元だけが浮いてしまうのだ。もっとも、レディースウォッチはドレッシーな意匠を備えたモデルが多く、選択肢は豊富だ。しかしメンズに目を向けるとドレスウォッチ市場はまだまだ大きいとは言えず、手掛けるブランドは高級どころがメインだ。

 そんな中で、クォーツウォッチはひとつの良い選択肢になるだろう。機械式時計より手が届きやすいプライスレンジに加えて、薄型ケースを備えやすく、針やインデックスの細さもむしろドレスウォッチのスタイルを引き立てる。

 “クォーツドレスウォッチ”としておすすめしたいのが、カルティエ「タンク マスト」だ。1970年代、カルティエが「タンク」の廉価モデルとしてラインナップしていた「レ マスト ドゥ カルティエ」。この名前とスタイルを2021年によみがえらせたのが「タンク マスト」である。タンク由来のレクタンギュラーケースはフラットで、かつ角が丸められていることが特徴だ。リュウズヘッドに取り付けられたブルースピネルと相まって、「ひと目でカルティエと分かる」スタイルを有している。シンプルなデザインは没個性になることもあるが、カルティエにその心配は無用だろう。加えてクォーツモデルは2針にローマ数字インデックスと、ドレッシーなスタイルであることも、前述した“年齢相応のファッション”にマッチさせやすい。

 タンクの普遍的なスタイルはタイムレスに楽しむことができる。40代、50代、60代……。年齢を重ねてファッションが変わっていっても、ドレスウォッチとして長く愛用していけるだろう。

© Cartier
カルティエ「タンク マスト」
画像は、光発電クォーツムーブメント「ソーラービート™️」を搭載したモデル。ソーラーウォッチは通常、光を透過するポリカーボネート系の素材が文字盤に使用される。しかし本作はインデックス部分に穴を開けることで、金属製とした。そのため文字盤の質感は、他のタンクウォッチと比べて遜色がない。
光発電クォーツ(ソーラービート™️)。SSケース(縦29.5×横22mm、厚さ6mm)。日常生活防水。50万500円(税込み)。


おすすめ②シチズン「エコ・ドライブ ワン」

 次に提案したい“大人”のクォーツウォッチは、シチズン「エコ・ドライブ ワン」だ。カルティエの「タンク マスト」同様、ドレスウォッチスタイルという観点から選んだ。

 光発電式アナログクォーツウォッチとしては世界最薄のエコ・ドライブ ワン。2016年、光発電式腕時計発売40周年の節目に誕生したシリーズだ。

 驚くべきは、ムーブメントの厚さがわずか1mmということ。ケース厚はモデルにもよるが、2.98mm〜4.5mmである。ドレスウォッチのスタイルとしても秀逸だが、本作ほど薄いと、着けていることを忘れるほどの軽やかな着け心地を実現してくれる。一般的に機械式だと、これだけ薄い腕時計は衝撃や振動に弱く、磁気帯びの懸念も付きまとう。しかし本作はクォーツウォッチであるため、気軽に日常使いできるというのも大きな利点と言えよう。

 ちなみに一番のおすすめは、Ref.AQ5012だ。21年にシリーズに加わったバリエーションで、スモールセコンドを備えている。手巻きウォッチならともかく、クォーツウォッチの秒針は多くがセンターセコンドだ。しかし、クラシカルなスモールセコンドに引かれる時計愛好家は少なくない。ドレスウォッチとしての用途であれば、なおさらだ。国産ウォッチメーカーはマーケティングが下手だと言われることがある。しかしこのRef.AQ5012を見ると、巧みにファンの心をつかむブランド戦略が感じられる。

シチズン「エコ・ドライブ ワン」AQ5012-14A
2021年にラインナップに加わったスモールセコンドモデル。画像のモデルは文字盤に土佐和紙を使用しており、ひと味違ったソーラーウォッチに仕上がった。
光発電エコ・ドライブ(Cal.8845)。⽉差±15 秒。SS(直径36.6mm、厚さ4.5mm)。⽇常⽣活防⽔。35万2000円(税込み)。


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