注目のクロノグラフ5選。2024年新作から特筆すべきモデルを紹介

FEATURE2024年新作時計
2024.04.15

ウォッチズ&ワンダーズジュネーブ 2024を経て、各社から多彩な新作時計が出そろっている。この新作時計のうち、〝クロノグラフ〞に絞って、特筆すべきモデルをピックアップして紹介する。

佐藤しんいち:文
Text by Shin-ichi Sato
[2024年4月15日公開記事]


2024年に発表された、特筆すべきクロノグラフを取り上げる

 2024年、続々と発表されている魅力的な新作を、ジャンル別にブランド横断で俯瞰する企画として「クロノグラフ」を取り上げる。本年は、ブランドのバックボーンと深く結びついたモデルや、エレガントでドレッシーなモデル、ブランドを代表するコアモデル、モダンでスポーティーなモデルなど、多彩な新作ラインナップが並んだ。では、注目すべきクロノグラフモデルの新作を見ていこう。


カルティエ「プリヴェ トーチェ モノプッシャー クロノグラフ」

カルティエ トーチュ・クロノグラフ

 カルティエの長い歴史の中で数多く存在するヘリテージを基とした「カルティエ プリヴェ」コレクションも、今回で8作目となる。今年は本コレクションから、1912年に登場した「トーチュ」を現代的に再解釈したモデルが登場した。

 今般"注目のクロノグラフ"として取り上げるのは、「プリヴェ トーチュ モノプッシャー クロノグラフ」である。トーチュのモノプッシャークロノグラフモデルは、1998年に「コレクション プリヴェ カルティエ パリ」として発表された経緯がある。本作は、98年のモデルのデザインを踏襲しつつ、クラシカルなデザインにまとめられている。

 バリエーションは2種類である。プラチナケースモデルはシルバーオパーリンダイアルが組み合わされる。18Kイエローゴールドケースモデルはグレイン仕上げとゴールド仕上げによるダイアルが組み合わされる。同様のデザインでありながら、前者はややモダンで、後者はよりクラシカルな印象を受ける点が興味深い。いずれも手巻きクロノグラフムーブメントのCal.1928MCを搭載し、世界限定各200本となる。

カルティエ プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ

カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」
手巻き(Cal.1928MC)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。Ptケース(縦43.7×横34.8mm、厚さ10.2mm)。日常生活防水。世界限定200本。897万6000円(税込み)。2024年10月発売予定。

カルティエ プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ

カルティエ「プリヴェ トーチュ モノプッシャークロノグラフ」
手巻き(Cal.1928MC)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。18KYGケース(縦43.7×横34.8mm、厚さ10.2mm)。日常生活防水。世界限定200本。778万8000円(税込み)。2024年10月発売予定。


「タグ・ホイヤー モナコ・スプリットセコンド・クロノグラフ」

タグ・ホイヤー 2024年新作 モナコ

 2024年は「モナコ」が誕生した1969年から55周年にあたり、これを記念する「タグ・ホイヤー モナコ・スプリットセコンド・クロノグラフ」が発表された。

 1969年とはつまり、自動巻きクロノグラフムーブメントの量産化が果たされた年を意味する。ラウンドケースの「カレラ」や「オータヴィア」とともに発表された角型ケースのモナコは、モデル名がF1のモナコグランプリにちなんでいることや、レースを題材にした映画「栄光のル・マン」で主演のスティーブ・マックイーンがレーシングスーツとともに着用したこと、タグ・ホイヤーがモータースポーツの発展とともにあったことから、モータースポーツとのつながりが深いモデルである。

タグ・ホイヤー モナコ・スプリットセコンド・クロノグラフ

タグ・ホイヤー「モナコ・スプリットセコンド・クロノグラフ」(左)Ref. CBW2181.FC8322、(右)Ref. CBW2182.FC8339
自動巻き(Cal.TH81-00)。3万6000振動/時。パワーリザーブ約65時間。Tiケース(直径41mm、厚さ15.2mm)。30m防水。予価1672万円(税込み)。2024年6月発売予定。

 今般発表されたタグ・ホイヤー モナコ・スプリットセコンド・クロノグラフは、モータースポーツで必要とされる機能をさらに高めたモデルだ。ラップタイム計測を行う際に有用なスプリットセコンドクロノグラフを搭載した点がトピックスで、さらに、レーシングカーにも多用されるグレード5チタン製ケースを採用して、より軽量に仕立てられている。搭載するムーブメントはCal.TH81-00で、これはヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエとのコラボレーションによって誕生したムーブメントだ。ダイアルはこのムーブメントを鑑賞可能とするサファイアクリスタル製となっている。


オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」

スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル

 オメガの代表作のひとつであり、プロフェッショナル向けクロノグラフの代名詞のひとつである「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」にホワイトダイアルモデルが追加された。

 本作の着想元は、1969年に製作された「アラスカプロジェクト」のプロトタイプモデルである。アラスカプロジェクトの特徴は、ホワイトダイアルを採用し、過酷な温度変化に対応するための取り外し可能な赤い保護ケースを備えていたこと、そして赤い”Speedmaster”のロゴと、それと呼応する赤いクロノグラフ秒針の先端である。本作に、赤い保護ケースこそ付属しないが、それ以外のカラーコーディネートを踏襲しつつ、ホワイトカラーをラッカーによって仕上げ、アプライド仕様のインデックスが組み合わされた。ホワイトダイアルとブラックの各スケールのコントラストがツールウォッチのストイックさを生み出しつつ、ラッカー仕上げとアプライドインデックスで現代的なエレガンスが加えられている。

 ムーブメントは、コーアクシャル脱進機を備えてマスター クロノメーター認定を取得したCal.3861を搭載し、現時点ではサファイアクリスタル製風防のモデルのみがラインナップされる。また、ステンレススティールブレスレットの他、パンチングレザーストラップとラバーストラップが用意される。

オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル

オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」Ref.310.30.42.50.04.001
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。5気圧防水。125万4000円(税込み)。

オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル

オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」Ref.(左)310.32.42.50.04.001(右)310.32.42.50.04.002
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。5気圧防水。119万9000円(税込み)。


ブライトリング「クロノマット B01 42」

ブライトリング クロノマット B01 42

 2020年の刷新で「オールパーパスウォッチ」として再定義されたブライトリング「クロノマット」にチタン製外装を与えた「クロノマット B01 42」が追加された。

 現在のクロノマットの直接的な祖となるモデルは、1983年に有名なイタリアのアクロバット飛行隊とのコラボレーションモデルとして開発された「フレッチェ・トリコローリ」、あるいは翌年の84年にデビューしたクロノマットである。本コレクションが2020年に刷新されたことで、1983年あるいは84年のモデルを基にしたデザインが与えられており、ケース径は従来モデルに対してコンパクトな直径42mmに、またベゼルは細く改められ、ケースサイドからブレスレットへとラインのつながるシルエットが与えられている。また、特徴的なルーローブレスが復活した点もトピックスであった。

 今般発表された新作は、これらのデザインはそのままに、チタン製のケースおよびブレスレットが与えられたモデルだ。ダイアルは縦方向に筋目仕上げが施されたアンスラサイトグレーで、アイスブルーのクロノグラフ秒針が控えめながら指し色として効いたデザインである。

 ツールウォッチとしての機能性を備えつつ、評価の高かった着用感はチタンの採用による軽量化によってさらに高められている。また、落ち着いたカラーリングのダイアルと、ややダークなチタンの色調によってシックな印象も獲得した。そのため、コンセプトとするオールパーパス、言い換えれば「いつでも着用可能」あるいは「いつも着用していたくなる」モデルとしての魅力が高まったと言えるだろう。

ブライトリング クロノマット B01 42

ブライトリング「クロノマット B01 42」Ref.EB0134101M1E1
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径42mm)。200m防水。163万3500円(税込み)。

ブライトリング クロノマット B01 42

ブライトリング「クロノマット B01 42」Ref.EB0134101M1S1
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径42mm)。200m防水。130万3500円(税込み)。


ゼニス「クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー」

ゼニス クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー

 1969年、世界で初めて発表された自動巻きクロノグラフ「エル・プリメロ」。エル・プリメロおよび、ほぼ同時に発表された自動巻きクロノグラフは、技術的な遺産となって現在にまで大きな影響を与えている。当時、エル・プリメロとほかの自動巻きクロノグラフとの違いは、3万6000振動/時のハイビートを実現していたことと、開発当初からフルカレンダーとムーンフェイズ機能の搭載を想定し開発され、それらを搭載したCal.3019PHFが存在したことだ。

 今般発表された「クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー」は、このCal.3019PHFをトリビュートしつつ、69年発表の「A386」のデザインに落とし込んだモデルだ。本作の主役とも言える機能は、エル・プリメロの代名詞である1/10秒の計測が可能なクロノグラフ機能である。センターには10秒で1周するクロノグラフ秒針を備え、3時位置に60秒積算計、6時位置に60分積算計を備える。そしてカレンダー機能として2時位置に月表示、4時半位置に日付、10時位置に曜日表示を備える。6時位置には積算計と同軸でムーンフェイズ表示を備える。

 ケース径は38mmで、ダイアルデザインと共にA386を踏襲しており、ヴィンテージ感に溢れつつ、最新モデルらしい外装品質を備えてモダンさもある仕上がりだ。今般用意されるのは3つのカラーバリエーションで、ホワイトをベースにブラックのインダイアルの組み合わせと、グレーをベースにホワイトのインダイアル、およびグリーンをベースにホワイトのインダイアルの組み合わせである。それぞれ、ダイアルカラーに合わせたカーフレザーストラップと、ブレスレットのコーディネートを選ぶことができる。

ゼニス クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー

ゼニス「クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー」
自動巻き(Cal.エル・プリメロ3610)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ60時間。SSケース(直径38mm)。5気圧防水。183万7000円(税込み)。

ゼニス クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー

ゼニス「クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー」
自動巻き(Cal.エル・プリメロ3610)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ60時間。SSケース(直径38mm)。5気圧防水。176万円(税込み)。



開花するインハウスクロノグラフ ランキング10

https://www.webchronos.net/ranking/104591/
クロノグラフとは。メーターの種類や使い方、主なモデルを紹介

https://www.webchronos.net/features/35430/
タキメーターを備えた腕時計。クロノグラフの歴史とともに魅力に迫る

https://www.webchronos.net/features/104042/