オメガ「シーマスター アクアテラ」サマーブルーは、夏をもろに連想させる“ラグジュアリー・カジュアル”ウォッチ!

FEATUREインプレッション
2024.04.20

オメガの「シーマスター アクアテラ 150M」のバリエーションのひとつである、サマーブルーモデルを着用レビューする。本作は文字盤の軽快な色使いによって、“ラグジュアリーのカジュアル化”を、良い意味で果たしている。

オメガ シーマスター アクアテラ サマーブルー

Photograph by Shigeru Sugawara
レコード棚からTHE BEACH BOYS「SURFIN'U.S.A.(1963) 」を取り出して自撮りの背景に。自分のライフスタイルは豪華ヨットからは程遠く、軽快なノリで楽しむサーフィンのほうが合っている気がした。
菅原茂:文
Text by Shigeru Sugawara
[2024年4月20日公開記事]


「シーマスター アクアテラ 150M」の“サマーブルー”を着用レビュー

 今回は「シーマスター」だ。オリジナルは1948年にさかのぼる。1957年には本格ダイバーズ仕様の「シーマスター300」が登場し、同年のクロノグラフ「スピードマスター」や耐磁時計「レイルマスター」と並んでプロフェッショナル・ツールウォッチの「3大マスター」を成し、歴史において重要な役割を演じてきた名作である。時計のネーミングは非常に重要。覚えやすく、作り手のコンセプトや実際の用途までもが明確な言葉を選んだオメガのセンスは秀逸といえる。そういえば、昔も今もそうだが、モデルやカテゴリーに的確な名前を付与し、記号論的に差別化と体系化を実践してきた点でも優れたブランドだと思う。

 ところで、ひとくちに「シーマスター」といっても、現在のコレクションは4つのラインでモデルが豊富にそろい、タウンユースから本格ダイバーズまでをカバーする大家族だ。その中から試着したのは、2022年にアップデートを図った「シーマスター アクアテラ 150M」。これまた豊富なバリエーションの中から「サマーブルー」が印象的な41mmモデルだ。

オメガ シーマスター アクアテラ サマーブルー

オメガ「シーマスター アクアテラ 41mm」Ref.220.12.41.21.03.008
自動巻き(Cal.8900)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.2mm)。15気圧防水。99万円(税込み)。

 オメガはサマーブルーを「シーマスター」のいくつかのモデルで展開している。同コレクションには多彩なカラーダイアルがあるが、爽快なサマーブルーは特に好み。夏をもろに連想させ、夏=海=青というシンプルなメッセージが気分を刺激し、心弾ませてくれるからだ。デザイナーの意図は知らないけれど、一見カジュアルなファッションウォッチのように見えるこの軽快な色使いにこそラグジュアリーのカジュアル化、つまり若々しいファッション感覚を打ち出している気がした。さらにメンズとレディースの別なく見えるのも、このサマーブルーの効果なのではないだろうか。


光源によって変幻自在なブルーの表情

オメガ シーマスター アクアテラ サマーブルー

シーマスター アクアテラ 150Mコレクションの文字盤に見られる、「チークコンセプト」の意匠が本作にも与えられている。

 さて、メタリックなブルーダイアル。横に走るストライプ模様は単なるラインなのではなく、オメガによれば豪華ヨットのウッドデッキをイメージさせる「チークコンセプト」なのだそう。そして美しいダイアルをさらに引き立てるのがサンブラッシュ仕上げとPVD加工によるグラデーションだ。

 実際に室内照明のもとでも、外の自然光のもとでも、見る角度によってブルーの表情は淡くも濃くも変幻自在で、ちょっとマジックにかけられた気分になる。不思議で見飽きないイリュージョン、なんだろうこの目を楽しませる仕掛けは。カラーダイアル全盛の昨今でも、オメガが独自と主張するように、単なる彩色を超える発明といえる。

 加えてカラースキームにも注目した。針やインデックスのスーパールミノバや6時位置の日付、そしてラバーストラップのそれぞれ微妙なライトブルーを用い、各部の差異と統一感にデザイナーの計算が行き届いているのが分かる。


ラバーストラップやバックルにも要注目

 時計は合計5回着用した。ダイアルのデザインに加えて良好な印象を得たのは、ラバーストラップだ。ファッションカラーでいうとサックスブルーに近いパステルトーンの落ち着いた色は、スポーツカジュアルが主体の日常的なワークスタイルによく合う。一見センターラグに見せかけた金属パーツが洒落たアクセントを演じるラバーストラップは、ソフトな感触が肌に良くなじむ一方で、裏面に連続する波模様のような凹凸のおかげなのか、ジャストサイズに調整しても過度に密着せず、かといって腕を動かしてもズレない。これを着けて出掛けた横浜の某公園で試しに軽くランニングを試みたが、装着感の良さは抜群だった!

オメガ シーマスター アクアテラ サマーブルー

Photograph by Takeshi Hoshi (estrellas)
通気性に配慮しつつ、しっかりと手首をホールドするよう設計されたラバーストラップの裏側。

 個人的に絶賛したいのは、オメガのデプロワイヤントバックル(フォールディングクラスプ)である。バックルを畳んだ際に金属ブレードではなく、ストラップの裏面が直接肌に接触する仕組みになっていて、肌触りの違和感、外した時に跡が残るといった金属ブレードにまつわる難点がないのだ。実際にいくつかのタイプのデプロワイヤントバックルを使ってきた経験からいえば、これがベストソリューションだと思う。また、金属アレルギー対策にもなりそうだ。同モデルにはメタルブレスレットのタイプもあるが、やはり好みではラバーストラップ+デプロワイヤントバックルに軍配が上がる。


高性能ムーブメントは、ローターの振動や音などもなし!

Photograph by Takeshi Hoshi (estrellas)
通常モデルのシーマスター アクアテラ 150Mのケースバックはトランスパレント式だが、サマーブルーコレクションではソリッド式となっており、海の神ポセイドンとふたつのシーホースがCNCマシンで彫り込まれている。

 時計としての高性能はいわずもがな。搭載する自動巻きムーブメントは、METAS(スイス連邦計量・認定局)認定の最高水準を誇るオメガ コーアクシャル マスター クロノメーター Cal.8900。時計に詳しい愛好者ならご存知のように、高精度や耐磁において群を抜く存在だ。したがって、わざわざ歩度をチェックするまでもないが、パワーリザーブについては観察してみた。手巻きで巻き上げ(ねじ込み式リュウズの形状も良好)、あとは触れずに放置してみたら、スペック通り約60時間動いたのでひと安心。ちなみに自動巻きについては、着用時にローターの振動や巻き上げ音は皆無という感じだった。


実力あるブランドの「ラグジュアリーのカジュアル化」

 今回の試着を通じて思い出したのは、以前オメガ本社の最新工場設備を見学して、システマティックな量産体制と最高品質とを両立させる画期的で、未来を先取するような時計作りに感銘を受けたこと。今やスイス最強メーカーのひとつであるのは間違いないが、その一方でここ最近の「シーマスター」コレクションでは、デザインセンスがぐんぐん向上してきたのは見逃せない。「オシャレになりましたね」と言ったら、オメガの方々はどう受け取るだろうか。今や時計は実用的ツールよりも、自分らしいライフスタイルを演出するアイテムのひとつになってきた。先に述べたように、実力ブランドにおける良い意味でのラグジュアリーのカジュアル化や多様性の見事な実例だと思うのだが。


Contact info: オメガ Tel.0570-000-087


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