A.ランゲ&ゾーネ、時計愛好家垂涎の“ルーメン”シリーズ第5弾「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」登場!

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2021.10.24

定番モデルの魅力をさらに高める “ルーメン”がかける光の魔法

 そして3つ目のポイントが、第1作以来の「ツァイトヴェルク」の“ルーメン”であるという点である。ただし、2010年に発表された第1作のモデル名は「ツァイトヴェルク “ルミナス”」である。現在、“ルーメン”と呼ばれるこのシリーズだが、第1作のみ“ルミナス”という名が与えられていたのだ。とはいえ、名称こそ異なるが、今に受け継がれる紫外線を透過する半透明ダイアルコーティングは、初作から採用されてきた技術的アドバンテージであったことは言うまでもない。

歴代の“ルーメン”シリーズ。左から、2016年に発表されたシリーズ第3作目の「グランド・ランゲ1・ムーンフェイズ “ルーメン”」(世界限定200本)、2010年発表の初作「ツァイトヴェルク “ルミナス”」(世界限定100本)、初めて蓄光アウトサイズデイトを採用した2013年の第2作「グランド・ランゲ1 “ルーメン”」(世界限定200本)。いずれもプラチナ製ケース。

2018年10月24日に発表された“ルーメン”シリーズ第4作目の「ダトグラフ・アップ/ダウン “ルーメン”」(世界限定200本)。過去3作と同様プラチナ製ケース(左)。12時位置のアウトサイズデイトと時分針に加え、ブルースティール針を配したスモールセコンドと30分積算、センターのクロノグラフ秒針全体、さらに文字盤外周リングに刻まれた5分の1秒単位に分割された目盛りと、その外側のタキメータースケール、6時位置に置かれた三角形のパワーリザーブ針にも蓄光塗料が塗布され、歴代のどのモデルよりも暗所で明るいグリーンの光を放つ(右)。


“ルーメン”初作が時計業界に与えたふたつの衝撃

 この記念すべき“ルーメン”シリーズ第1作となる「ツァイトヴェルク “ルミナス”」は当時、ふたつの意味で時計業界関係者の注目を集めた。ひとつは、その前年に発表されたばかりのまったく新しいコレクションである「ツァイトヴェルク」をベースとしていたこと。そして、もうひとつが、前述した通り、暗闇での視認性を確保するための独自の手法による蓄光塗料の光らせ方である。

 まず前者であるが、発表当時、「ツァイトヴェルク」の存在自体が、A.ランゲ&ゾーネ愛好家はもちろん、多くの時計関係者にとって衝撃的であった。「時」を表示するアワーディスク、「分」の10の位と1の位を表示する2枚のミニッツディスクの合計3枚の巨大なディスクによって時刻をデジタル表示する2009年発表の“新作”は、それまでの同ブランドのイメージからは想像もできない奇想天外な意匠と機構で当初、ディストリビューターやプレスをはじめ、多くの時計関係者をためらわせたのは事実だ。だが、目の肥えた愛好家たちは、すぐにこの「時の機構」という名を持つA.ランゲ&ゾーネの新たなアイコンの真価に気づき、やがてその人気に火が付くことになる。

 その衝撃も冷めやらぬ翌2010年に発表されたのが、“ルーメン”シリーズ第1作の「ツァイトヴェルク “ルミナス”」なのだから、限定モデルとはいえ、A.ランゲ&ゾーネの矢継ぎ早な“進取の気象”の本領発揮に、時計愛好家ならずとも、唸らずにはいられない。


「ツァイトヴェルク」の進化を先取りした“ルーメン”最新作

最新の「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」のケースサイド4時位置には、現行「ツァイトヴェルク」には存在しないプッシュボタンが追加されている。これはアワーディスク、すなわち時表示を単独で早送りするためのボタンである。2019年に発表された「ツァイトヴェルク・デイト」が搭載するムーブメントCal.L043.8が備えていたもので、そのCal.L043.8から日付表示と日付早送りボタンを取り除いたのが、「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」が搭載するCal.L043.9である。

 さて、初作以来の「ツァイトヴェルク」の“ルーメン”となる第5作目の「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」であるが、初作(もしくは「ツァイトヴェルク」のレギュラーモデル)と今作を見比べた時、ある明確な違いにお気づきだろうか? そう、今作には通常の時計で言うところの4時位置のケースサイドにプッシュボタンが追加されているのだ。これはアワーディスクの早送り用のプッシュボタンである。すなわち、最新の「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」は時表示を単独で進めることができ、このことからも分かるように、搭載するムーブメントも最新仕様に進化を遂げているのだ。

「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」が搭載する新型ムーブメントCal.L043.9。左は文字盤側。「時」を表示する巨大なアワーディスクの上に、「分」を2桁で表示する2枚のミニッツディスクを重ねることで大型のデジタル式時刻表示を実現している。これだけ大きなディスクを3枚も毎正時に瞬転させるため、「ツァイトヴェルク」には定力装置であるルモントワールが搭載されている。駆動輪列の間にルモントワールを組み込み、主ゼンマイの動力をルモントワールの補助ゼンマイに蓄積し、それを毎分放出することで、最大3枚のディスクを瞬転させつつも、精度を一定に保つことを可能にした。ムーブメントの裏蓋側(右)を見ると、横一直線になったブリッジの下に、そのルモントワール機構が収められているのを確認できる。なお、このブリッジが横一直線になったのは、2019年に発表された「ツァイトヴェルク・デイト」が搭載するCal.L043.8から。このことからも、Cal.L043.9が「ツァイトヴェルク・デイト」の系譜にあることが分かる。

「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」が搭載するムーブメントのキャリバー名は「L043.9」。察しの良い方はすでにお気づきだろうが、これは2019年に発表された「ツァイトヴェルク・デイト」が搭載する「L043.8」からデイト表示を取り除いた「ツァイトヴェルク」専用の新型ムーブメントと考えられる。「ツァイトヴェルク・デイト」同様、ふたつの香箱を持つため、現行「ツァイトヴェルク」の2倍となる約72時間のパワーリザーブを持つ。そして、やはり「ツァイトヴェルク・デイト」と同じように、4時位置のプッシュボタンで時表示を単独で進めることができる。このプッシュボタンは、押した時ではなく、ボタンを押して離した時にアワーディスクを回転させる。これはボタンを押した時の力の強弱に関係なく、一定の力でアワーディスクを回転させるシステムであり、メカニズムへの負荷を軽減するという利点がある。もちろん、これも「ツァイトヴェルク・デイト」譲りの進化した機構のひとつである。

 このように、進化を遂げた「ツァイトヴェルク」のムーブメントを、いち早く堪能できるのも、この特別な限定モデルを手に入れることで得られるプラスアルファのエクスクルーシブな愉悦である。

「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」のシースルーバックから鑑賞できる新型ムーブメントCal.L043.9。「ツァイトヴェルク・デイト」同様、上下に重ねられたふたつの香箱によって約72時間のパワーリザーブを持つ。今後、この新型ムーブメントがレギュラーの「ツァイトヴェルク」に搭載されることは想像に難くない。


ディテールの質の高さに見る傑作の証し

 さて、クロノス日本版編集部は、いち早く、この最新限定モデルの現物を見る機会を得た。その所感を含めて言えば、「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」は傑作である。先ほど、“ルーメン”人気の高まり故に、詳細が分からなくとも、“ルーメン”というだけで手を挙げるコレクターがいるだろうと、いささか意地悪な書き方をしたが、現行「ツァイトヴェルク」に比して進化を遂げた最新ムーブメントを搭載し、“ルーメン”初の華やかなハニーゴールド製ケースを持つ同機は、目をつぶって手を挙げても間違いのない限定モデルだ。

ダイヤモンドに次ぐモース硬度9(ビッカース硬さでHV1400~2300)という硬さを誇るサファイアクリスタル製の文字盤をこれほど精密に加工するのも、A.ランゲ&ゾーネの見識の表れだ。こうしたディテールへの妥協のなさは、パワーリザーブ表示のスケールや、サファイアクリスタル製文字盤とタイムブリッジの境界、そして蓄光塗料をプリントしたアワーディスクとミニッツディスクの仕上げを凝視すれば、よく理解できる。

 例えば、12時位置に配されたパワーリザーブ表示の円弧を描くスケールは、サファイアクリスタル製文字盤を切削して艶消し加工を施すことで十分な視認性を確保している。また、タイムブリッジと半透明コーティングが施されたサファイアクリスタル製文字盤の境目を注視すれば、非常に硬いはずのサファイアクリスタルが驚くほどの精度で加工されていることが分かる。さらに、時刻を表示するアワーディスクとミニッツディスクの数字は、黒地の上に直接、白い蓄光塗料を印字するのではなく、薄くホワイトの下地をプリントしてから、その上に蓄光塗料を重ねて印字することで、黒いディスクの上であっても蓄光塗料が透けたり、滲んだりすることなく、明瞭な輪郭と判読性を保っている。

A.ランゲ&ゾーネのコンプリケーション工房で組み立てられる「ツァイトヴェルク・ハニーゴールド “ルーメン”」。半透明コーティングが施されたサファイアクリスタル製文字盤が、いかに精密に加工されているか、この写真からもよく分かるだろう。

 ほんの数例ではあるが、これほど行き届いたディテールを持つモデルが、名機でないはずがない。


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