現代の著名な独立時計師のひとり、フィリップ・デュフォーの半生を振り返る

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2024.01.11

著名な独立時計師のひとりであるフィリップ・デュフォー。ジュウ渓谷に生まれ育った彼は、昔ながらの時計づくりを継承するだけでなく、先端技術も取り入れながら、複雑で洗練された腕時計を作り上げてきた。この伝説的な現代の時計師の半生を振り返ってみよう。

フィリップ・デュフォー

著名な独立時計師のひとり、フィリップ・デュフォー。
Originally published on Montres De Luxe
[2024年1月11日公開記事]


現代の著名な独立時計師のひとり、フィリップ・デュフォー

 生ける伝説とされ、独立時計師の中でも最も尊敬される者のうちのひとりであるフィリップ・デュフォーの哲学は、「妥協も限界もなく」である。これが、彼の独立時計師としての約45年のキャリアを導いてきた。

 実際、フィリップ・デュフォーがこの哲学に身を捧げ、腕時計の製作を天職としてきたこと、そしてこの仕事に人生をかけてきたことが、高精度の時計作りと技術の進歩に計り知れない貢献をしてきたのである。

 スイス・ジュウ渓谷のソリア村にある彼の工房では、最高レベルの職人技を駆使し、伝統的な工具を使いながら、ひとつひとつの時計をすべて手作業で作りあげている。

 時計はすべて顧客からの直接受注であり、受注リストは長く、納期も長い。フィリップ・デュフォーの時計は、真のラグジュアリーを具現化する傑作であることにも言及しておこう。

グランドソヌリの製作で名声を得る

 1948年、スイスに生まれたフィリップ・デュフォーは、ジュウ渓谷にある時計学校を1967年に卒業し、同年ジャガー・ルクルトに入社している。

 しかしながら彼の時計師としての道のりは、ジョージ・ダニエルズやフランソワ-ポール・ジュルヌなどといった現代時計界の天才たち同様に、古い時計の修理と修復をから始まった。

 彼の素晴らしい評判は、1982年にオーデマ ピゲの依頼で、5つのグランドソヌリのムーブメントを作成したことにも表れている。

 グランドソヌリというコンプリケーションを完成させたことで、フィリップ・デュフォーは時計師としての才能を認められ、自身の名を冠したブランドを立ち上げるに至った。

 この腕時計は、時計師にとって最も難しい複雑機構のひとつであるグランドソヌリとプチソヌリを搭載したミニッツリピーターのムーブメントを、腕時計のケースという限られたスペースに搭載したモデルである。

グラン プチ ソヌリ

1989年から92年の間にかけて製作された「グラン プチ ソヌリ」。1980年代に製作した懐中時計用ムーブメントを腕時計に載せた力作だ。

 今までになかったものを作りたいという気持ちから生まれたこの「グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーター」は、2年半の開発期間を経て、1992年のバーゼルワールドで発表されている。

ダブルエスケープメントを搭載した腕時計を開発

 グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターの世界的な成功を受けて、フィリップ・デュフォーは他の作品も開発している。1996年に発表された「デュアリティ」は、ダブルエスケープメントを搭載した世界初の腕時計である。

デュアリティ

ふたつの脱進調速機構を持つ「デュアリティ」。製作された本数はわずか9本しかない。

 このムーブメントは、中央のディファレンシャルによって補正し合うふたつのテンプを擁し、ふたつの脱進機の誤差を平均化することにより、発生する誤差を半減させるというものであった。デュアリティは、わずか9本のみが製作されている。

 2000年のバーゼルワールドでフィリップ・デュフォーは、おそらくコレクターの中でも最も知られている「シンプリシティ」を発表した。フィリップ・デュフォーのあくなき探究心を反映したこのモデルは、日本からの強い要望に応じて作られたもので、現在生産されている唯一のモデルとなる。

 シンプリシティは現在までに約200本がゴールドやプラチナで作られ、これ以上の注文は受けられないほどの需要がある。

シンプリシティ

フィリップ・デュフォーの代表作「シンプリシティ」。日本からの要望によって製作された、現在も生産されているモデルだ。

「GPHG 2013」で特別賞を受賞

 優れた時計職人になるために必要な基本的資質について、かつてインタビューで問われたフィリップ・デュフォーは「まず少しおかしいこと。だが非常に忍耐強く、自己犠牲的でなければなりません。自らの語彙から『週末、休暇、引退』という語句を消し去らねばなりません」と答えている。

 そして「好奇心旺盛でなければなりません。時計職人というのは、おもちゃを分解したことのある子どもであることが多い。そう、私たちの職業には好奇心が必要なのです」と付け加えている。

 フィリップ・デュフォーは、2013年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリにおいて、満場一致で特別賞を受賞した。この栄誉を受けて、同時計賞の審査員に選出されている。


フィリップ・デュフォーが生み出した腕時計

 長いキャリアの中で、フィリップ・デュフォーが製作した腕時計はわずか230本程である。いくつかの個人発注のものを除けば、グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーター、デュアリティ、シンプリシティという3つのキーモデルのいずれかに属している。

 どのモデルも工房のアシスタントの限られた協力だけで、ほとんどが彼自身によりデザインされ、製作されている。

 フィリップ・デュフォーの腕時計の重要性と需要の高さは、グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターが最も高額で販売された独立時計師の時計だという事実が物語っている。

グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーター

 フィリップ・デュフォーの名のもとに製作された最初の腕時計がグラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターであり、彼の最高傑作のひとつとして知られている。

 1992年のバーゼルワールドで発表されたこのモデルは、3種のゴールドとプラチナの各色1本ずつ、計4本が発表された。グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターは、フィリップ・デュフォーを瞬く間に独立時計製造の最前線へと押し上げた。

 1999年、この非常に複雑な腕時計のために、デュフォーはさらに2本をデザインした。その文字盤は透明なサファイアクリスタルで、ソヌリ機構の複雑さを際立たせている。

グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーター

グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターのムーブメント。卓越した仕上げもさることながら、鳴り物機構を集めながらこのサイズに収めた点も特筆すべきポイントだ。

 この時計は使い勝手の良さが特徴だ。サイレントモードまたはソヌリは12時位置のスライダーで操作し、6時位置のスライダーはグランまたはプチソヌリのモード選択を行う。

 グランソヌリモードでは、アワーとクォーターが正時と15分ごとに打刻され、プチソヌリモードでは、15分ごととなっている。

デュアリティ

 デュアリティは、ひとつの輪列がディファレンシャルギアを介して、ふたつの脱進機に動力を伝達するというダブル脱進機を内蔵した腕時計である。

デュアリティ

ふたつの脱進調速機構が左右対称に配されたデュアリティのムーブメント。2017年のフィリップスオークションでは1億円を超える価格で落札されている。

 デュアリティが目指したのは、非常に洗練されたムーブメントを搭載しながら、驚くほどシンプルなビジュアルの時計を作ることだった。それは目新しさのためではなく、時計の計時性能に直接影響を与える高精度のムーブメントを作るためであった。デュアリティはわずか9本のみが製作されている。

シンプリシティ

 ピュアでミニマルなデザインのシンプリシティは、デュアリティを踏襲したモデルだ。オート・オルロジュリー仕上げの力作であるシンプリシティは、もともと日本市場向けにデザインされた。フィリップ・デュフォーの腕時計の中で唯一、現在も製造が続けられているが、受注リストはいっぱいだ。

シンプリシティ

その名の通り、シンプリズムを追求したシンプリシティ。しかし、ムーブメントの仕上げはやはりデュフォーらしく卓越したものだ。


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