初代ブレゲに私淑した「伝統」という名の名機

FEATURE本誌記事
2020.10.02

〝+α〟を研ぎ澄ます「トラディション」ファミリー

2005年から始まった「トラディション」は、豊富な歴史的遺産の中から名作を選び、現代の技術で再現する復刻モデルを単に意図したわけではない。時刻表示のダイアルと、通常ならケースバックから見えるムーブメントの姿が時計の表側で同時に見える異例のデザインを生かし、オープンフェイスの特異な空間ゆえに可能な「プラスα」を追求して、他にはない個性の創出を目指す新世代の時計なのである。トゥールビヨン、クロノグラフ、デュアルタイム、レトログラード……。すべてのモデルに伝統を革新へと変えるブレゲの挑戦と技術が息づいているのだ。

トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047

トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047
2007年に「トラディション」初の複雑時計として発表されたのが、トゥールビヨンや円錐滑車と鎖引きによるコンスタントフォースといったブレゲの古典的な機構と、シリコン素材の巻き上げヒゲゼンマイという先端技術を併せ持つ「7047」。2012年にはこのローズゴールド製モデルも仲間入りした。手巻き(Cal.569)。43石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRG(直径41mm)。3気圧防水。1901万円。
トラディション インディペンデント クロノグラフ 7077

トラディション インディペンデント クロノグラフ 7077
2007年に「トラディション」初の複雑時計として発表されたのが、トゥールビヨンや円錐滑車と鎖引きによるコンスタントフォースといったブレゲの古典的な機構と、シリコン素材の巻き上げヒゲゼンマイという先端技術を併せ持つ「7047」。2012年にはこのローズゴールド製モデルも仲間入りした。手巻き(Cal.569)。43石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRG(直径41mm)。3気圧防水。1901万円。

 時計作りは2000年前後に大きな転換期を迎えた。1990年代に本格化した機械式の復活に勢いを得て各社が次に目指したのは、21世紀スタイルの新たな機械式時計の開発だ。そこで注目を浴びたのは、未来を予見させるモダンなデザインや今までにない複雑機構、他分野で用いられるハイテク素材の導入などである。2005年に初めて発表された「トラディション」は、そうした21世紀スタイルの機械式時計を象徴する先駆的なモデルに位置づけられる。

 ブレゲがこの「トラディション」で目指したのは、貴重な歴史遺産の再解釈と未来志向という、相反するようなふたつの要素をひとつの時計で表現することにあった。「スースクリプション」ムーブメントをオープンフェイスのデザインに翻案した現代の「トラディション」は、ブレゲの伝統を表現した時計とはいえ、腕時計としてのデザインや機構は極めてアバンギャルドなものだった。

「トラディション」の可能性を広げることになったのは、実験的ともいえる手法で加えられた複雑機構だ。その先陣を切ったのが2007年の「トゥールビヨン・フュゼ 7047」である。この複雑時計では、オフセンターダイアル、ブレゲの代名詞と呼べるトゥールビヨン、香箱と鎖引き装置で連結した円錐滑車の4つのエレメントが「スースクリプション」ムーブメントに由来するシンメトリーの配置を保持しながらレイアウトが見事に工夫されている。ちなみに鎖引き装置で動力を一定に制御する古典的なトゥールビヨンという仕組みの点では、このモデルは19世紀初頭の有名な懐中時計「No1188」に通じるものがある。

 2010年には初代「トラディション7027」の直径37㎜からより現代的なサイズ感の直径40㎜へとアップした新型ケースを採用する「7057」が登場し、さらに翌年には、ブラックのオフセンターダイアルとアンスラサイトカラーに仕上げたムーブメントとを組み合わせ、一段とモダンでスタイリッシュな表情を演出したモデルも仲間入りした。

トラディション 7057

トラディション 7057
2005年に誕生した初代モデルの「7027」をリフレッシュした2011年発表の「7057」は40mmのケース、ブラックダイアル、アンスラサイト仕上げのムーブメントを特徴とし、モダンでスタイリッシュな味わいを醸す。手巻き(Cal.507DR)。34石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRG(直径40mm)。3気圧防水。299万円。

 続いて2012年には、デュアルタイム表示へと機能を向上させたGMTウォッチ「トラディション 7067」が登場する。テンプとシンメトリーに配置されたホームタイム表示用のオープンワークが施されたブラックのスモールダイアルは、12時位置のクラシカルなローカルタイム用のシルバーダイアルと対称的で、新たな美的表現を感じさせる。

トラディション 7067

トラディション 7067
10時位置のプッシュボタンで12時位置のオフセンターダイアルのタイムゾーンを瞬時に変更、ローカルタイムの修正が可能。ホームタイムは8時位置のブラックダイアルで示し、10時位置にデイナイト表示も装備。手巻き(Cal.507DRF)。40石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。RG(直径40mm)。3気圧防水。424万円。

 そして誕生10周年にあたる2015年に発表された新作は、いずれも「トラディション」の特性を生かし、魅力を新たにする野心作だ。まず、完全に新しいシステムで作動する「トラディション インディペンデント クロノグラフ 7077」。その名の通り、独立した別系統の機構で作動するクロノグラフは、時計用テンプとシンメトリーに配置された同サイズの専用テンプを持ち、リセット操作の際に板バネのブレードスプリングに蓄えられるエネルギーで作動するという、特許を取得した革新的な仕組みだ。「トラディション オートマティック レトログラード セコンド 7097」は、これまでなかった秒表示機能をレトログラード方式で追加。また、初代ブレゲが発明した初期の自動巻き機構から着想したローターも装備して伝統色を強調した。

トラディション オートマティック レトログラード セコンド 7097

トラディション オートマティック レトログラード セコンド 7097
10時位置にレトログラード式の秒表示を配した自動巻きモデルは初期の自動巻き懐中時計から着想したゴールド製ローターを搭載。2020年には美しいブルーダイアルのブティック限定モデルも登場。自動巻き(Cal.505SR1)。38石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KWG(直径40mm)。3気圧防水。391万円。

 一貫したスタイルを保ちながら新作ごとに可能性を開拓するブレゲの妙技はますます冴えている。



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