タフで軽量な万能スポーツウォッチ、タグ・ホイヤーの新作「アクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフ」をレビュー

FEATUREインプレッション
2023.03.21

あらゆる環境下でも抜群の視認性を発揮するダイアル

 サンレイ仕上げのダイアルには、先述の通り水平方向のパターンが施されている。本作が搭載する光発電クォーツは便利な反面、デザインに大きな制約を課す。二次電池を充電するために、光の透過するダイアルが必要となるのだ。

 本作でも、ダイアルに対し部分的に透明な素材を用いているとのことだが、そのことは子細に見ても全く分からなかった。これは、サンレイ仕上げの光沢に加え、水平方向のパターンが陰影を生み、質感の違いを目立たせないようにしているためではないだろうか。

 インデックスは、デイト表示のある3時も含め12カ所全てに配されている。その形状はいずれも基本的に同じだが、12時を大きく、6時と9時を少し大きくすることで、判読性を高めている。

 ペンシル型の時分針は、その長さに明確な差が設けられており、読み違えることはないだろう。加えて、本作の武骨な雰囲気を僅かに和らげているのが、秒針と5分ごとのミニッツマーカーに用いられたポーラーブルーだ。その名の通り、この色は北極圏の夜を照らすオーロラに着想を得ている。

 明るい場所での視認性に優れていることは言うまでもないが、暗所であっても、その使いやすさは変わらない。12個のインデックスと3本の針は、そのすべてにスーパールミノバが塗布されている。そればかりか、分針と秒針はブルーに発光し、インデックスと時針はグリーンに発光するため、時分針の違いが一目瞭然となっている。

アクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフ

暗所では、分針と秒針のみブルーに発光する。インデックスと時針はグリーンに発光するため、時針と分針の読み違えを防ぐことができる。

 一方で、デイト表示は少し見にくい。数字自体も小さいのだが、恐らくダイアルとソーラーパネルの下にデイトリングが配される構造であるため、デイト表示そのものが奥まっていることが原因だろう。12時位置のブランドロゴも、あまり見やすくはない。メタルの縁取りで作られているため、光が反射してしまい、輪郭を捉えにくいのである。

 ただし、これをどう捉えるかは人によって好みが分かれるだろう。筆者としては、ひと目でブランドロゴが分からない匿名感と本作の武骨な雰囲気がマッチしていて好印象に感じた。


スポーツウォッチとしてのスペックを十分に満たす、薄型ケース

 ケースは、サンドブラスト特有の少しざらついた質感を持つ。その仕上げによって程よく丸められたエッジは、はっきりとした輪郭を持つステンレススティールケースのモデルとは異なる印象をもたらしている。

 特徴的な12角形のベゼルには、直接スケールが彫り込まれている。インサートが無いため、見た目にも凝縮感がある。本作がどうなるかは不明だが、このタイプのベゼルは、長年使用することによってスケールに入ったインクが抜けてしまう可能性があることを考慮しておきたい。

 もちろん、例えそうなったとしてもレタッチすれば問題はない。一方で、ベゼル上にはスーパールミノバが塗布されておらず、ベゼルとスケールのコントラストも高くないため、ダイビング時に経過時間を確認しやすいのかは疑問である。

 ケースの厚さは、実測で約10mmであった。200m防水を備えながらも比較的薄く仕上がっているのは、クォーツムーブメントを採用したことによる恩恵だろう。

 ケースバックには、羅針盤のモチーフがケースに対して真っすぐに刻まれている。その外周にはオープナーをあてがう窪みはない。

アクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフ

ケースバックには、羅針盤のマークが刻まれている。ダイバーズウォッチながらスクリューバックではなく、ケース内側からネジ留めする構造を持つ。これにより、ケースに対してマークが真っすぐに配される。

 現行のアクアレーサーでは、スクリューバックではなく、ミドルケース上面からケースバックをネジ留めする構造を採用しているのだ。これによって、羅針盤のマークは個体差なく真っすぐにセットされる。裏蓋自体が比較的薄いのも、この構造によるものだろう。

 ブレスレットは、剛性感を持ちながらもコマの可動域が十分に取られている。クラスプは、プッシュボタンによって開くことができる三つ折れ式を採用しており、容易に着脱することが可能だ。

 クラスプにはエクステンション機構が備わっており、工具不要で約8mm程度延長することができる。夏場の汗をかく時期やむくんだ時などに有効だろう。

 クラスプのサイドには3つの穴が開けられており、爪楊枝等の細いものがあれば、ブレスレットの長さを微調整することができる。高級感を重視してか、今は本作のようにサイドに穴の開いたタイプは少なくなったが、調整の手軽さは魅力だ。

 クラスプのプレートは、勘合部のみ別体のパーツが取り付けられているように見える。その一部のみ、周囲のチタンよりも少し白っぽい。

 あくまでも推測だが、恐らくこの部分にはステンレススティールを使用しているのではないだろうか。チタンよりも硬いステンレススティールを採用することで、脱着を繰り返すことによる磨耗を軽減させていると考えられる。

 リュウズガードから張り出した大型のリュウズは、見た目通り優れた操作性を発揮している。ねじ込みを解除し、1段引きで日付変更、2段引きで時刻調整が可能だ。時刻調整の感触は良好であり、針がふらつくこともなく正確に時間を合わせることができる。

アクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフ

プッシュボタンで解除するシングルロックタイプのクラスプ。外から細い棒で突くことでブレスレットの長さを微調整できる、3つの穴が見える。少々高級感には欠けるが、便利な仕様だ。


軽量快適な着用感

 腕に通した印象は、非常に軽やかだ。これは、外装へのチタンの採用と、軽量なクォーツムーブメントの搭載が寄与しているだろう。ブレスレットの内側にはサテン仕上げが施されており、肌触りも滑らかだ。薄型のケースは、サンドブラスト仕上げによってエッジが落とされ、衣服の袖にも引っ掛かりにくい。

 ノンストレスな着用感だが、机に手をついた際に、リュウズが手の甲に刺さる点のみ気になった。クォーツウォッチは時刻や日付の調整をする機会が少ないため、もう少しリュウズを小さくしても良いのではないだろうか。

アクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフ

プレートはしっかりとした肉厚を持ち、剛性感がある。勘合部は、一部色合いが異なる。脱着を繰り返すことによる磨耗への対策だろうか。だとすれば、長年の使用を見据えた好ましい配慮だ。

 屋内外問わず、あらゆる光源下において視認性は非常に高い。機械式時計のように、日に何秒もズレることなく正確に動くため、高い信頼性を持って実用できる。

 アクアレーサーを象徴するベゼルは、一般的な円形のベゼルよりも操作性に優れている。12角形であるため、回転させようと指で摘まむと、指とベゼルは面で接することとなる。そのため、点で接する円形のベゼルに比べ、さほど力を入れずともスムーズに回すことができるのだ。

 1周60クリックであり、1クリックごとに板バネのテンションが指先にダイレクトに伝わる。あまり精密感は感じられないが、小気味良い感触だ。


高い汎用性が魅力のツールウォッチ

 冒頭で本作の第一印象を“武骨”と表現したが、実はそれよりも先に思い浮かんだ言葉がある。“ツールウォッチ”だ。ただ、この言葉は定義が曖昧で、人によって捉え方も異なるマジックワードだ。

 そのため、最初からツールウォッチという言葉を使うのは、いささか乱暴だと思い、武骨という言葉で代替した。一通り本作の魅力に触れた今、今回のレビューの締めくくりとして、改めて筆者の思うツールウォッチの概念と照らし、本作の位置づけを考えていきたい。

 あくまでも筆者の私見として、ツールウォッチの意味合いを、“幅広い環境下で活動する際に、そこに付帯する作業としての時刻確認に適した時計”としたい。幅広い環境下とは、パーティやビジネスといったドレスコードのことではなく、明るさや温度、湿度、天候等のことを表す。

 ここでのツールウォッチを構成する要素としては、視認性、判読性、防水性、耐衝撃性を備え、一定の精度で稼働し、かつ使用が想定されるすべての環境下で必要十分レベルで取り回しが良く、無駄がないことである。

 視認性や判読性、防水性があることは先述した通りだ。クォーツウォッチのため、機械式に比べて耐衝撃性も精度も優れる。本作はダイバーズウォッチであるが、ベゼルにルミナスポイントがない上に、クラスプはシングルロックだ。他のダイバーズウォッチと比較すると、正直若干心許ないように思える。

 ただし、着用シーンのメインを陸上として考えれば話は別だ。ルミナスポイントは使い込むことによって欠落することがあるが、無ければそもそも欠落しようがない。煩わしいダブルロッククラスプよりも簡単に着脱可能なシングルロッククラスプは、厚みも抑えることができる。

 ダイバーズウォッチだからと、水中での使用に主眼を置くと、日常生活ではオーバースペックとなる。スペックを控えめとすることで得られる汎用性の高さこそ、本作の魅力であり、筆者がツールウォッチと感じた理由なのだろう。



Contact info: LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054


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